第148話 閑話 元精霊王4

『ウギャァァ…ッ!イカヅチぃぃぃぃぃッ!てめぇ、裏切るのかぁぁぁッ!』


『おいどんは、最初から≪精霊王≫様の味方だったでごわす。おいどんは頭はわりぃけど、一つだけ間違えないことがあるでごわす。それは、”誰が”≪精霊王≫様であるかということでごわすッ!お前はもう≪精霊王≫様では無いでごわすッ!≪精霊王≫様に仇なす存在は、おいどんが許さないでごわすッ!』


…僕は、もう精霊王じゃ無い!?…


…ハハッ…そんなことあるわけないだろ、ステータスにだって…”精霊王”の称号が…えッ!!!…


…な、ないッ!!!…


…な、なんでだぁぁぁぁッ!…


”…精霊術-雷孅円球陣-…”


イカヅチが激しく太鼓を打ち鳴らすと、無数の雷が有刺鉄線のような形状でドーム状に広がった。


…雷の結界を張った!?…


『イ、イカヅチぃぃぃッ!僕を逃げられないようにする気か?このダンジョンを奪って、精霊樹と世界樹を支配すれば、僕は再び精霊王になるんだぞッ!そんなこともわからないのかぁぁぁぁぁ…ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


”…精霊術-炸苦裂飛-…”


…か、風精霊術!?一体誰が!?…


…精霊術は、僕とイカヅチしか今はもう使えないはず…


風で造られた無数の羽が背中に突き刺さると同時に、聞き覚えのある無邪気な声が響き渡った。


『よしゃぁぁぁッ!一番乗りぃぃぃぃぃッ!オッスッ!久しぶりだねぇ♪元・精霊王♪この日のために、精霊術を使えるように頑張ったんだよ♪本当は、もっと、もっと、コウスケとユニの手伝いをしたかったんだけど、いっぱい我慢したんだよぉ♪スゴいでしょ♪』


≪風の精霊≫が黒い笑顔を浮かべながら、背後に浮かんでいた。


『シ、シルフッ!?なんでここにッ!?あの時、消滅したはず…ぐぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


…ぼ、僕に最後まで逆らった忌まわしい精霊が、なぜここにぃぃぃ!?…


…あの時、イカヅチが始末したはずッ!…


…しかも、精霊術を使えるまでに力を取り戻していやがるッ!…


”…精霊術-雷龍招来-…”


イカヅチの放った雷龍が首元に噛みついてくる。


…グゥぅぅぅぅぅぅぅッ!イカヅチィィィッ!お前かぁぁぁぁッ!…


雷龍を放ったイカヅチは、シルフに向かって頭を下げていた。


…ウゼェッ!…ウゼェッ!…ウゼェッ!…


『シルフ…、おいどんは、言い訳はしねぇし、出来ねぇ。ただ…申し訳ねぇ…。』


…コイツら仕草一つ一つが癇に障るぜ…


…どいつもこいつも僕の邪魔をしやがってぇぇぇぇぇッ!…


シルフは、俯いたままイカヅチに背を向けた。


『イカヅチの性格は分かってるよ。僕があの時、消滅する一歩手前で助かったのも、イカヅチがこっそり助けてくれたのも分かってる。あの時の悲しさや苦しみはまだ消えないけど、いつかまたイカヅチと一緒に、笑い合いたい…かな…。でも、 完全にはまだ許してないかんなッ!』


…やはり、イカヅチが色々な場面で裏切っていたのかぁぁぁぁッ!…


…白々しい演技しやがってぇぇぇぇぇッ!…


シルフは、背中のトンボのような羽を高速で動かし、龍を型どった風を召喚した。


”…精霊術-風龍招来-…”


『…ありがとうでごわす。』


…チィッ!…チィッ!…チィッ!…

…ウゼェッ!…ウゼェッ!…ウゼェッ!…


イカヅチは、シルフに一礼すると、太鼓を打ち鳴らし、龍を型どった雷を再び召喚した。


”…精霊術-雷龍招来-…”


シルフとイカヅチは視線を合わせると、風龍と雷龍が重なりあった。


『『―合体精霊術-風雷龍塵砲-―』』


風龍と雷龍が合体し、一体の巨大な龍の姿になるとこちらに向け襲いかかってきた。


…精霊術を合体させた!?…


…ウゼェ真似しやがってぇぇぇぇぇッ!…


…こうなったら、出し惜しみはなしだッ!…


『くそッ!死にぞこないと裏切り者がぁぁぁぁぁぁッ!くらえぇぇッ!』


両手を前に出し、周囲に5つの属性球を発生させる。


…この技は、5つの属性を混ぜ合わせることで爆発的なエネルギーを生み出す、僕のとっておきの必殺技だ…


”…精霊秘術-パーフェクト・ノヴァ-…”


5つの属性球が混ざり合い凄まじいエネルギーを生み出すと、巨大龍を飲み込んだ。


…精霊術を何個合体しても、精霊秘術には勝てねぇんだよッ!…


『ふははは~☆貧弱な精霊術なんて僕には効かないのさ☆さぁ、次は今度こそ消滅させてあげるッ☆裏切り者もろともね☆』


さらにエネルギーを増幅させようと両手に力を込め始めるが、シルフとイカヅチから濃密が精霊力が巨大龍に流れているのを感じた。


…お、押し返されている!?…


『『まだ終わっていない(でごわす)ッ!』』


飲み込まれたはずの巨大龍は、五属性エネルギーを吸収して、こちらに向かってきた。


『なにぃぃぃぃぃッ!5つの属性を込めたパーフェクト・ノヴァがなぜッ?ただの精霊術に負けるはずがないぃぃイガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

ッ!』


気付くと身体の右半分が消滅していた。


…あ、あり得ない…


『あらあら、シルフ…。抜け駆けはいけないわよ…。フフ…。ねぇ…ウジ虫…。土壇場で手のひらを返される気持ちはどうでしたか…?』


リリスがドス黒い笑顔で、頭上から見下ろしていた。


…リリスまで…


リリスは、召喚した光輝く槍を右手に持つと投擲の構えをとった。


”…精霊術-光天使之光槍-…”


リリスの投擲した光の槍は、正確に額を貫き一瞬意識を失う。


…リ、リリス…


『リリスッ!君なのぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

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