第137話 黒い笑顔

『ウギャァァ…ッ!イカヅチぃぃぃぃぃッ!てめぇ、裏切るのかぁぁぁッ!』


『おいどんは、最初から≪精霊王≫様の味方だったでごわす。おいどんは頭はわりぃけど、一つだけ間違えないことがあるでごわす。それは、”誰が”≪精霊王≫様であるかということでごわすッ!お前はもう≪精霊王≫様では無いでごわすッ!≪精霊王≫様に仇なす存在は、おいどんが許さないでごわすッ!』


…精霊術-雷孅円球陣-…


≪雷の精霊≫が激しく太鼓を打ち鳴らすと、無数の雷が有刺鉄線のような形状でドーム状に広がった。


『イ、イカヅチぃぃぃッ!僕を逃げられないようにする気か?このダンジョンを奪って、精霊樹と世界樹を支配すれば、僕は再び精霊王になるんだぞッ!そんなこともわからないのかぁぁぁぁぁ…ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』



…み~つけた♪…


…精霊術(風)-炸苦裂飛-…


風で造られた無数の羽が、元精霊王の背中に突き刺さった。


『よしゃぁぁぁッ!一番乗りぃぃぃぃぃッ!オッスッ!久しぶりだねぇ♪元・精霊王さ・ま♪僕はね~、この日のために、精霊術を使えるように頑張ったんだよ♪本当は、もっと、もっと、コウスケとユニの手伝いをしたかったんだけど、いっぱい我慢したんだよぉ♪スゴいでしょ♪』


≪風の精霊≫が黒い笑顔を浮かべながら、元精霊王の背後に浮かんでいた。


『シ、シルフッ!?なんでここにッ!?あの時、消滅したはず…ぐぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


…精霊術(雷)-雷龍招来-…


≪雷の精霊≫の雷龍が、”元”精霊王の首元に噛みついた。


『シルフ…、おいどんは、言い訳はしねぇし、出来ねぇ。ただ…申し訳ねぇ…。』


≪風の精霊≫は、俯いたまま≪雷の精霊≫に背を向けた。


『イカヅチの性格は分かってるよ。僕があの時、消滅する一歩手前で助かったのも、イカヅチがこっそり助けてくれたのも分かってる。あの時の悲しさや苦しみはまだ消えないけど、いつかまたイカヅチと一緒に笑い合いたい…かな…。でも、 完全にはまだ許してないかんなッ!』


≪風の精霊≫は、背中のトンボのような羽を高速で動かし、龍を型どった風を召喚した。


…精霊術(風)-風龍招来-…


『…ありがとうでごわす。』


≪雷の精霊≫は、≪風の精霊≫に一礼すると、太鼓を打ち鳴らし、龍を型どった雷を再び召喚した。


…精霊術-雷龍招来-…


≪風の精霊≫と≪雷の精霊≫は視線を合わせると、風龍と雷龍が重なりあった。


『『―合体精霊術-風雷龍塵砲-』』


風龍と雷龍が合体し、一体の巨大な龍の姿になると元精霊王に襲いかかった。


『くそッ!死にぞこないと裏切り者がぁぁぁぁぁぁッ!くらえぇぇッ!』


元精霊王が両手を前に出すと、周囲に5つの属性球が現れた。


…精霊秘術-パーフェクト・ノヴァ-…


5つの属性球が合わさり、凄まじいエネルギーを生み出すと、巨大龍を飲み込んだ。


『ふははは~☆貧弱な精霊術なんて僕には効かないのさ☆さぁ、次は今度こそ消滅させてあげるッ☆裏切り者もろともね☆』


元精霊王が再び両手を前に出す。


『『まだ終わっていない(でごわす)ッ!』』


飲み込まれたはずの巨大龍は、五属性エネルギーを吸収し始めた。


五属性エネルギーを吸収した風雷龍は、元精霊王に襲いかかる。


『なにぃぃぃぃぃッ!5つの属性を込めたパーフェクト・ノヴァがなぜッ?ただの精霊術に負けるはずがないぃぃイガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

ッ!』


巨大龍を型どったエネルギーの集合体は、元精霊王の右半分が消し飛ばした。



…先を越されちゃったわね…


『あらあら、シルフ…。抜け駆けはいけないわよ…。フフ…。ねぇ…ウジ虫…。土壇場で手のひらを返される気持ちはどうでしたか…?』


≪光の精霊≫がドス黒い笑顔で元精霊の頭上で光の槍を構えていた。


…精霊術(光)-光天使之光槍-…


≪光の精霊≫は、美しい動きで渾身の力を込めて、元精霊王に向けて光の槍を投擲した。


『死に腐れやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!ダボハゼがぁぁぁぁぁぁッ!』


光の槍は、元精霊王の額を正確に貫いた。


『リリスッ!君なのぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


≪光の精霊≫は、再度槍を構えて次の精霊術の準備を始める。


『臭うので、汚い口は閉じてください…。この!糞ウジ虫がぁぁぁぁぁぁッ!』


…精霊術(光)-光槍彌流-…


≪光の精霊≫の周囲に無数の光の短槍が現れ、元精霊王の残りの部分に降り注いだ。


『ブシュゥゥゥゥゥゥ…。うぅ…リ…リ…スな…の…か…?』


元精霊王は原型のない状態になったが、物凄い勢いで再生を始めていた。



…やっと着いたゾイ…


『おいッ!みんなズルいゾイッ!ワシの分も残っているのかぁぁぁ?…おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…貴様は、まさにッ!あの時、嬉々とワシらを裏切ったクズッ!!!はぁはっはぁぁぁぁぁぁぁッ!ノコノコ現れおってッ!ワシらがどれだけ貴様に会いたかったことやら…。まぁ、昔を懐かしんでも仕方あるまい…。早速、再開を楽しむとするゾイッ!』


≪土の精霊≫は金槌を勢いよく地面に叩きつけると地面が隆起し、巨大な拳を型どった岩石が天高くそびえ立った。


精霊術(地)-天岩拳骨衝-


巨大な拳は何度も元精霊を地面に打ちつける。


『ノ、ノームまでぇぇぇぇぇッ!ギュギャッ…ギュギャッ…ギュギャッ…ギュギャッ…ギュギャッ…ギュギャッ…………


元精霊王の再生スピードがみるみる落ちていった。


『『『『『『次は俺(私)の番だ(わ)ッ!』』』』』』


≪土の精霊≫の後ろには、殺気MAXで順番待ちをしている精霊が沢山待っていた。


(…殺意高めどころじゃないな。)

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