第132話 閑話 優等生風男2

…逃げられた?…


…いや、ダンジョンマスターだから、ドッペルゲンガー系のモンスターの影武者を使われたという線もあるな…


…いずれにせよ完全に敵対したな…


…っていうか、ダンジョンの外なのに、普通にコンタクトしてくんじゃねぇよ…


…勇者とダンジョンマスターを兼ねているなんて面倒な話だぜ…


…どうする?引き返すか…


…クニコだけで大丈夫か?…


ドカッ!!!


「グホッ!!!」


突然、みぞおちに衝撃が起こった。


「おいッ!ガリ勉ッ!まさか、ここまで来ておいて、怖じ気づいて”帰る”なんて言わねぇよな?」


…チィッ!本当にムカつく奴だ…


俺は、指輪に魔力を込めて“箱庭”で創った「武技闘技場」を展開する。


「武技闘技場」は、半径10メートルの円形の魔法の使用が制限される空間だ。


…この空間なら魔法特化型のクニコは手も足も出ないだろう…


…敵地だが、ここはどっちが上か白黒ハッキリつけた方が良いな…


「ここでどっちが上かハッキリさせようじゃねぇかッ!クソビッチがぁぁぁぁぁッ!」


クニコは、「武技闘技場」の外で俺を睨み付けながら、風魔法の魔法陣を展開し始めた。


…チィッ!テリトリーに入ってこねぇッ!コイツ、「武技闘技場」の特性を理解してやがる…


…偏差値が低い分際で、考えて行動すんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉぉッ!…


…これじゃ、勝負がつかねぇじゃねえか…


…チィッ!…


「…チィッ!クソビッチッ!こんなところで争ってる場合じゃねぇッ!いくぞッ!」


「武技闘技場」を指輪に戻し、部下のもとに戻るとランクエラー目指して歩き始めた。


クニコは勝ち誇ったような表情で後ろをついてくる。


…糞がッ!いつか屈服させてやるッ!…



俺は鬱憤を晴らすため、あえて苦痛を与える方法で森のモンスターを狩りながらランクエラーを目指した。



異変が起こったのは、ダンジョンマスターからコンタクトがあった日から三日後のことだった。


<「避難所」が、何者かの干渉を受けています>


…「箱庭」からのメッセージ!?…


…干渉を受けているだとッ!?…


今までにない「箱庭」からのメッセージに困惑していると、更なるメッセージが流れる。


<「避難所」入口の扉が破壊されました>


…へっ?…


…「避難所」って完全な安全地帯じゃないのか!?…


<「避難所」の空間ごと、別の者が管理する空間に飲み込まれました>


…「避難所」の空間ごと飲み込まれただとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?…


<破壊された「避難所」の入口から何者かが侵入しました>


…し、侵入された!?誰に!?…


<侵入者が「避難所」の権限を奪おうとしています>


…う、奪う!?どうやって!?…


<侵食率30%>


…し、侵食ってなんだッ!?…


<侵食率40%>


…ど、どんどん増えてるんですけど…


<侵食率50%>


…何・何、こわい…


<侵食率60%>


…ちょ、待てよッ!…


<侵食率70%>


…落ち着け、こういう時こそ、冷静な判断が必要だ…


<侵食率80%>


…何だよッ!俺は追い詰められると実力発揮できねぇタイプなんだよッ!…


<侵食率90%>


…ハッ!こういう時こそ、クソビッチの出番じゃねえか!…


「おいッ!クソビッチッ!この状況を…ど…う…に…か…し…ろ…………


<侵食率100%>


“クソビッチって、ワタクシのことぉん?ワタクシは正真正銘の童の貞よぉん♪や~だ~♪ワタクシの童の貞を奪って、ビッチにしようって魂胆ねぇ~ん?あらまぁッ!屈強な男が10人以上いるじゃないッ!!?もうッ!ケダモノぉぉぉぉぉッ!”


野太い声が空間に響き渡ると同時に周囲が暗闇に包まれた。


そして、目線の先にスポットライトが当たり、化粧をしたゴリゴリの男が現れた。


…ば、化け物のが現れやがった…


“あらぁん♪興奮しているのねぇん♪大丈夫…ワタクシもよん♪”


…いつの間にか、俺のすぐ後ろにいるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!…


”ワタクシは大罪武器のラスト♪これから、末長くよろしくねぇ~ん♪”


…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…

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