第130話 珍しい組み合わせ
コウスケがいつものようにキッチンで料理をしていると、人化したクロンとブレイブが慌ててやって来た。
(珍しい組み合わせだな…。)
『コ、コウスケぇぇぇッ!な、なんだッ!これはぁぁぁぁぁッ!ブヨブヨして気持ち悪いなま物かと思ったが、食べてみると、鮮烈な海の香りが口の中を漂い、母なる海に抱かれた感覚に包まれるようだ。これはッ!失われし海の至宝とも言われた“カキ”ではなかろうか…まさか…復活させていたというのかッ!しかし、海の至宝と言えども貝類を生で食すなど聞いたことがない…。“カキ”は、殻が固く、熱を通さなければドラゴンの牙でも身を取り出すことは出来ぬはず…。仮に、熱を通さずに身を取り出したとしても、徹底した衛生環境で管理し、かつ、新鮮な状態でないと生では到底食すことなどできぬはずじゃぁぁぁぁぁッ!なんたることだッ!“カキ”を生で食したインテリジェンスウェポンは我が世界初じゃぁぁぁぁぁッ!単純に美味すぎるッ!生の“カキ”に、酸味の強い果実の絞り汁をかけてあるだけのシンプル。シンプルにして究極、究極にしてシンプルということか…。そして、日本酒に合うのがまた良い。“カキ”と日本酒が織り成す絶妙のマリアージュ…。マリアージュを通り越して、ミラージュ…。最高じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
(テンション上がりすぎて、意味不明だぞ…クロン…。)
『コウスケ様、それどころではありまセン。生も良いですガ、このトンカツのように揚げてある“カキ”はそれどころではありまセン。ザクザクな衣を噛み締めたあとニ、ジューシーなうま味が溢れ出して押し流されてしまう感覚に襲われてしまうほどデス。これはザクザクな衣がうま味を閉じ込めているのデスネ。高温の油で揚げることによりうま味が凝縮され、生では味わえない濃厚な味わいに変化していマス。それニ、上にかかっている黄色いソースもそれどころではありまセン。マヨネーズをベースにピクルスやゆで玉子が絶妙な加減で配合されているのデスガ、見事にマッチングして新たな境地に辿り着いていマス。クッ!これは、神話を越えてしまったのではないでしょうカ?この食べ物をめぐって戦争が起きるやもしれまセン。…ハァッ!!こうしてはいられまセンッ!きたるべき戦争に備えて訓練をしなくてハッ!アーチャーッ!ランサーッ!訓練に行くゾぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』
(いつもは黙々と食べているブレイブが珍しく、食いしん坊軍団の仲間入りしたな…。ブレイブ…、カキフライをめぐって戦争は起きないから安心しろ…。しかし、アーチャーとランサーには迷惑をかけるなぁ…。あとで、二人の好きなおはぎ持って行ってあげよう…。)
『フハハ。生が一番だというのにブレイブは、まだまだ”お子ちゃま”だのう。』
『何をおっしゃル、クロン殿。フライこそ正義。フライこそ究極にて至高。生は前菜には良いかもしれませんガ、残念ながらステーキや焼肉、トンカツ等には力強さの面で負けてしまいマス。その点、フライは力強さのある料理と十分に渡り合うことが出来るのですカラ、フライが負けるわけはありまセン。』
『フハハ。そこが“お子ちゃま”だというのだ。料理とは力強さだけではないのだ。料理は、繊細さ、素材、技術、組み合わせ…そして、一緒に合わせる酒との相性、全てが調和して成り立っておるのじゃ。短絡的・刹那的思考では、真実は見出だせん。』
『それは違いマス。酒との相性よりも白米との相性が優先されるべきです。それが本質デス。本質を忘れてはいけまセン。』
『フハハ…。お主とは腹を割って話をせねばいかぬようじゃのう…。』
『望むところデス…。』
…
(珍しい組み合わせが、議論を始めたな…。)
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