第51話 世界樹の復活
…ジュゼ王国魔法研究所 最下層…
ジュゼ王国魔法研究所の最下層に到着したコウスケ達は暫く立ち尽くしていた。
『フ…ハ…ハ…。…これは…見事に枯れているのぅ…。ジュゼ王国よッ!これはッ!≪世界樹≫を枯らすとは、大罪中の大罪じゃぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!』
『…魔王様、用が済んだのでしたら帰りましょう。』
『…う…そ…?この世界の生命の一部を支えている≪世界樹≫が…。』
(これが≪世界樹≫かぁ…。…でかいな。横幅だけでもコンビニとかの敷地面積よりも大きい。しかし、葉っぱは全部取られていて、枝とかも高さ3メートルくらいですべて切り落とされているのが痛々しいな。見た目は、完全に枯れている。“隷属魔法”で力を絞り取られ過ぎたか…。この国は本当に使い潰すことしか考えていないな。長期的に考えれば、共存共栄が効率的だってことがわかる筈なのに…。…っていうか…≪闇の精霊≫は、みんなから無視されても当たり前のようについて来るのね。今もペンダントで、めっちゃくつろいでるし…。)
「とりあえず、世界樹に直接描かれてる“隷属魔法陣”を解除してみよう。黒、見張りをお願いね。」
…マジックジャマー(闇魔法)×5…
…マジックブレイク(闇魔法)×5…
…アンチマジックフィールド(闇魔法)×5…
コウスケが魔方陣に向けて闇魔法を発動すると、≪世界樹≫に直接描かれていた魔法陣は消滅した。
(いくつかの“隷属魔法陣”が組み合わされているな。次は根元にある魔法陣だ。)
…マジックジャマー(闇魔法)×5…
…マジックブレイク(闇魔法)×5…
…アンチマジックフィールド(闇魔法)×5…
コウスケが魔方陣に向けて闇魔法を発動すると、≪世界樹≫の根元にある魔法陣は消滅した。
(次で最後かな?“隷属魔法陣”は…。)
…マジックジャマー(闇魔法)×5…
…マジックブレイク(闇魔法)×5…
…アンチマジックフィールド(闇魔法)×5…
パリンッ!
コウスケが最後の結界型隷属魔法陣に向けて闇魔法を発動すると、ガラス玉のようない石が砕け散って結界型魔法陣が消滅する。
しかし、見覚えのある魔道具が≪世界樹≫の周りにまだ設置されていた。
『また、カウンター魔法の魔道具が設置されているのぅ。』
「うん。誰かさんが”≪光の精霊≫が閉じ込められている~”って言っていた魔道具があるね。」
『…!!!ッッ!!!!…だから謝ったじゃない!“隷属眼”で従わされていたんだから仕方なかったのッ!でも、大丈夫よ!これからは、身も心も完全にあんたの味方なんだからねッ!』
『後回しにするようで気分は悪いが、さっきと同じように回収するしかないのぅ。』
「そうだね。でも、カウンター魔法を研究すれば、新しい切り札ができるかもしれないよ。」
『フハハ!我は、コウスケのその慢心せずに物事に取り組む姿勢が好ましいと思っているぞッ!』
『完全に無視するつもりなのね…。ふ~ん。仲直りのタイミングが掴めないで照れているのね。いいわ。こういうときは、時間が解決してくれるから。もう少し、待ってあ・げ・る。』
(モンタは開き直るタイプだったけど、≪闇の精霊≫は自分の良いように解釈するタイプだな。でも、悪いヤツじゃないのはわかっているんだよね。さっきの精霊魔装も最後まで抵抗して完全には力を貸してなかったから。もし、完全に力を貸していたら、無傷では倒せなかったし。今も元気なように見えるけど、結構疲れているみたいだし…。)
…時空間結界(時空間魔法)×5…
…時空間収納(時空間魔法)…
≪世界樹≫の周りに設置されている魔道具を時空間結界で包み収納した。
≪…だ…れ…?≫
≪世界樹≫から声がした。
「俺はコウスケといいます。ドリアードのドリアンからのお願いで、あなたを助けに来ました。」
『我は聖剣クロンじゃ。』
『わたしは≪闇の精霊≫よ。』
≪…そ…う…ですか。ドリアードが…。“隷属魔法”を解除していただき、ありがとうございます。でも、見ての通り、私はもう駄目です。ドリアードには、間に合わなかったと伝えてください。…それにしても…理を超えた聖剣を持つ異世界の勇者…ですか…。フフッ…最後に…あなたに出会えて良かった…。≫
コウスケは、時空間収納からダンジョンコアを取り出して、≪世界樹≫に提案した。
「あなたがこの世界からいなくなると、モンスターが強化され、動植物が弱体化してしまうと聞きました。我が儘を言って申し訳ありませんが、俺がダンジョンマスターしますので、俺のダンジョンコアになってくれませんか?」
≪『『『!!!ッ!!!』』』≫
コウスケの提案に、暫く時が止まったかのような静寂時間が流れた。
『フハハッ!我は、大・大・大賛成じゃ!かく言う我も、聖剣でありながら、ダンジョンコアも任された理を超えた存在じゃしのう。なに、ダンジョンコアになっても特段不都合は無いしのう。』
『いいんじゃないッ!きっと、ドリアンも喜ぶわよ。≪世界樹≫、コウスケはちょっと意地悪だけど、良いオトコだから安心しなさいッ!』
≪………………………………………………。フフッ。あなたの言葉を信じましょう。是非ともお願いします。≫
「ありがとうございます。ではいきます。」
………ユニークスキル「合成」を発動します………≪世界樹≫と“ダンジョンコア(人格なし)”を「合成」します………
ダンジョンコアが≪世界樹≫に吸い込まれ、激しい光を放った。
……
光が収まると≪世界樹≫の姿はなく、鱗が植物の葉の美しいミニドラゴンがあらわれた。
『フハハ!“緑色”で“ドラゴン”とは、コウスケが好きなモノづくしではないかッ!のうッ!コウスケッ!』
≪そうなのですか?コウスケ様についていくのに巨大な樹の姿では不便かと思い、木龍を模してみました。しかし、ダンジョンコアとは素晴らしいですね。新しく生まれ変わった気分です。コウスケ様との強い繋がりも感じますし…。≫
(俺が緑色とドラゴンが好きだってバレてたのね。なんか恥ずかしい…。でも、あの枯れかけの状態から元気な姿になって、本当に良かった。)
パチ!パチ!パチ!
背後から誰かの拍手が聞こえた。
「素晴らしいッ!≪世界樹≫が甦ってリーフドラゴンになるとはッ!これでまた≪世界樹≫のエネルギーが使えるようになるッ!感謝するよ≪ハズレ≫ッ!」
(はぁぁぁ…。ジュゼ王国の奴らはこういう登場が好きだな。)
コウスケは振り返らずに、時空間魔法で長距離転移のための準備を始めたが、いつの間にか正体不明の結界に閉じ込められ魔力を上手く練ることができなかった。
≪私達から奪った力でつくった強力な結界に閉じ込められたと思われます。≫
『結界に閉じ込められたせいで、アヤツらの気配に気付けなかったか。』
『魔王様、見張りを任されたにも関わらず気付けず申し訳ありません。影スキルでも即座に結界の外には行けないようです。』
コウスケは面倒そうに振り返ると、100人程の白いローブを着こんだ集団が揃っていた。
白いローブの集団の中心には、声の主である豪華な鎧を纏った男がニヤニヤしながら、こちらを品定めするような視線を向けていた。
「君達は、まんまと誘き出されて特別製の檻に閉じ込められたんだよ。早々に諦めて大人しく“隷属”されてくれたまえ。」
(パッシブスキルはもちろん、アクティブスキルも阻害されている。魔法スキルも阻害されているな。雷魔法の身体強化が効きにくい。カウンター魔法の魔道具も持っているみたいだし、完全にあっちの土俵で戦わないといけないな…。)
コウスケは阻害を受けながらも使用できるスキルを確認しながら、戦術を組み立てようとしたとき、≪闇の精霊≫が真剣な表情でコウスケに提案した。
『コウスケ。こうなったのはわたしのせいよ。お詫びに契約してあげるわ。わたしの力ならこの結界の中でもあまり影響は受けないわ。わたしの“真名”を呼びなさい。知っているでしょ。』
≪闇の精霊≫の真剣な表情をみて覚悟を決めた。
「わかった。君を信じるよ。―スピネル―」
…≪闇の精霊≫と最上位契約である魂契約を締結しました…
『これで、わたしとコウスケは一心同体よ。精霊魔装も糞男の時より物凄いのがつくれるんだから!しかも、周りの環境にほとんど影響されずに使えるから安心してよね!』
「…うん…でも…、”魂契約”ってクーリングオフできるよね…。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。