第50話 精霊の天敵

…ジュゼ王国魔法研究所…


コウスケは、ランクエラー入口からジュゼ王国のスラム街に転移してから、シャドウドラゴンの黒に影収納してもらい、影移動スキルで魔法研究所に潜入していた。


………


「黒、そこの通路を右に曲がったら階段を2階層分降りて。」



『魔王様、階段を降りました。』


「え~と、真っ直ぐ進んで突き当たりの部屋に入って。」


(やっぱり、影スキルは潜入にぴったりだな。)



『魔王様、到着しました。』


「黒、この部屋に罠が仕掛けられていないか確認しておいて。…≪闇の精霊≫…、≪光の精霊≫はどこにいるの?」


精霊樹のペンダントの中にいる≪闇の精霊≫は、研究室中央に描かれている魔法陣を指さした。


『あそこの魔法陣の中心にある魔道具の中に≪光の精霊≫が閉じ込められているの。』


(この周りの魔法陣は明らかに“隷属魔法陣”だな。それもかなり強力なヤツで、”侵入者に対する罠タイプ”…。しかも、中央の魔道具の方は、見ただけでもヤバい雰囲気出てるし…。普通、黒い靄なんか出ないだろ…。)


「クロン、強力な“隷属魔法陣”だ。念のため、隷属対策の闇魔法を合成強化して解除するよ。」


『了解した。しかし、問題はあの中央の魔道具じゃの。カウンター魔法がかけられておるぞ。この国にカウンター魔法なんて代物があるなんてのぅ。』


…マジックジャマー(闇魔法)×5…

…マジックブレイク(闇魔法)×5…

…アンチマジックフィールド(闇魔法)×5…


コウスケが魔法陣に向けて闇魔法を発動すると、魔法陣は消滅した。


(この魔道具はカウンタータイプか…。時間をかけて解除しないと、酷いカウンターをくらいそうだ。)


「とりあえず、持ち帰って拠点で解除しよう。」


『うむ。それが良いじゃろ。』


…時空間結界(時空間魔法)×5…

…時空間収納(時空間魔法)…


≪光の精霊≫が閉じ込められているといわれる魔道具を時空間結界で包み収納した。


「≪闇の精霊≫。とりあえずだけど、これで大丈夫かな?」


≪闇の精霊≫は唖然としていたが、暫くすると首を横に振った。


『う、ううん。で、出来れば、今すぐ解除してほしいのだけど。』


(やっぱりか…。)


「解除するのに少し苦労するタイプの罠が仕掛けられているから、拠点で時間をかけて解除したいんだけど、今すぐじゃないといけないの?」


コウスケの問い詰めるような口調に≪闇の精霊≫は慌て始めた。


『よ、弱っていると思うから、早く助けてあげてほしいの。』


クロンも違和感を感じ始めた。


『時空間結界を合成で重ねがけして時間の流れをかなり緩やかにしておるから大丈夫じゃ。というか、精霊のお主ならわかっていると思うがのぅ。』


クロンからも疑われ始めた雰囲気を感じとり≪闇の精霊≫は更に慌てた。


『ち、違うのよ!無事な顔を早く見たいだけなの!』


黒とアイコンタクトをして、”罠”は仕掛けられていないこと確認したコウスケは、≪世界樹≫救出に気持ちを切り替える。


(≪闇の精霊≫は何かを隠しているな。騙された時の対策はしてあるし、とりあえず、気持ちを切り替えてドリアンの依頼を成功させよう。)


「じゃあ、今すぐじゃなくて良いね。次は、≪世界樹≫の所に行こう。黒、お願い。」


『御意。』


黒がコウスケを影収納して研究室を出ようとした時に背後から声がした。


「“スピネル”失敗したね。後でお仕置きだよ。」


コウスケがゆっくり振り返ると、緑と赤のオッドアイの白衣を着た男が立っていた。


コウスケは、男に挨拶をした。


「こんにちは。隠れて出てこないのかと思ってたけど、姿を見せるなんて一体どうしたんですか。罠にかからなかったから、焦って出てきたとかですかね。」


男はぎょっとした様子で驚いたが、余裕の表情を取り戻した。


「フフッ!ここでお前を捕まえられれば、僕は更に高みに登れると考えたのだよ!少しのリスクくらい我慢しないとねッ!糧になって貰うよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!“隷属眼”&“精霊眼”ッ!!!≪闇の精霊≫“スピネル”よッ!“命令”だッ!精霊魔装ッ!」


≪闇の精霊≫は苦しみ始め、ペンダントから男のもとに転移した。


…闇の精霊魔装―真名:スピネル―…

≪ダークネスマテリアルロッド≫

≪ダークネスマテリアルローブ≫


男は、武器と防具の精霊魔装を造り出した。


(コイツがユニの精霊眼(片眼)を奪った相手か。“隷属眼”と併用することで、精霊に直接“命令”することができるのか。精霊にとってはまさに天敵だな。)


「これが”真名”で縛った本物の精霊魔装だぁぁぁッ!”病気持ち”の貧弱な精霊魔装とは、ひと味もふた味も違うのだよぉッ!…これで、そのお前の余裕ぶった表情も終わりだぁぁぁぁッ!闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」


男を中心として円形状に闇のオーラが渦巻き始めると、回りの物体を引き寄せながら、引き寄せた物体の生命力を吸収していく。


「フフッ!手も足も出まいッ!このまま闇の力で弱らせてから、じっくり“隷属”させてもらうよッ!」


(渦巻きの半径2メートルくらいに近づけばヤバイな。でも、属性魔法を使って遠距離から攻撃しても防御の精霊魔装で防がれるはずだから、遠距離魔法攻撃もあまり意味がないっぽいな。ここは、全力で正面突破するか。)


コウスケは、時空間収納から「ダンジョンカタログ」で購入した聖剣レプリカを取り出し、右手に聖剣クロン、左手に聖剣レプリカを装備した。


「聖剣ダブル解放―クロン&レプリカ―!」


聖なる風の力を纏った25本の剣が周りにあらわれた。


『フハハッ!聖剣を2本同時解放など、コウスケが世界初だろうなッ!いやはや…恐れ入ったわいッ!』


更に、両手に持っている分を含めて、27本の剣をスキルで強化していく。


…並列思考、思考加速、念動力、縮地スキル発動…

…爆裂スキル付与…

…総攻撃スキル付与…

…魔狼牙スキル付与…


そして、剣術スキルレベルMaxで取得した剣術最強の武技-流星剣-を発動する。


「合成武技―爆裂魔狼”流聖剣”―」


聖なる風の力を纏った無数の剣が高速で闇のオーラを切り裂き・飛散させながら男に迫る。


「バ、バカなッ!聖剣の二刀流だとッ!闇属性では分が悪すぎるッ!」


男は闇のオーラを増やして押し返そうとするものの、聖なる風の力が遥かに上回っていた。


「残念だけど、その精霊魔装は魔法には強いけど、聖剣には対応できていないみたいだね。あと、君、ユニよりも数段弱いよ。」


男は、27本の剣に貫かれた。


「グハッ…!闇を…打ち…消しす…聖…剣…技ッ!?聖…剣…勇…者…だと?し…か…も…2本…?な…ぜ…王国…は聖…剣…2本…の…勇…者…と敵対…な…ん…て…?」


「さようなら。」


………レベルアップしました………


……ユニークスキル「交換」を発動します。対象と「交換」したいものを1つ選択してください………


・精霊眼(片眼)封印オーブ

→使用するとユニークスキル「精霊眼」を取得できる。

・隷属眼(片眼)封印オーブ

→使用するとスキル「隷属眼」を取得できる。

・交換しない


コウスケは、精霊眼(片眼)を選択した。


(ユニに返してあげよう。)


コウスケは、黒に次の目的地を告げる。


「≪世界樹≫は最下層か…。黒、さっき降りてきた階段を最後まで降りて。」


『最下層でございますね。了解しました。』


黒は、影収納と影移動スキルを発動して研究室を出て最下層を目指す。


取り残された≪闇の精霊≫は慌ててコウスケの後を追いかける。


『ま、待ってよッ!し、仕方がなかったってわかってるわよね?ねッ?ねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!』


コウスケ達は、気にすることなく先を急ぐ。


『だ~ッ!わかったわよ!謝ればいいんでしょう!ごめんなさいってばぁあ!えッ!マ、…マジで、置いていく気!?…うぇ~ん!ごめんなさ~い。…………………………って!嘘泣きも通じねぇぇぇぇえしぃぃぃぃぃぃぃ!!』

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