第10話 小動物
「コウスケ様!ご無事でしたか!」
コウスケが落とし穴に近づくと、ユニが木から降りてきた。
「ごめん。せっかく落とし穴を掘ってもらったんだけど、そんなに強く無かったモンスターだったから、一人で倒してしまった。ところで、そっちは何か変わったことは無かった?」
ユニは、申し訳なさそうに俯いた。
「それが……、何者かが落とし穴に落ちたようなのです。しかも、人語を話す者のようででして…煩いのです。」
『…!!!早く出しやがれぇ!!!』
落とし穴から声が聞こえた…。
コウスケは、落とし穴を覗くとその声の主に問いかけた。
「あなたは誰ですか?」
『お前ぇ!人間か?オイラの森にこんなバカでかい落とし穴を堀りやがって!絶対に許さねぇ!』
落とし穴から覗くと、底に小さなモモンガのような小動物がいた。
「すみません。フォレストベア亜種という大型のモンスターに襲われてしまい、やむを得ず掘ってしまいました。もとに戻しますので、許してもらえませんか?」
『…なにぃ!あ、あの亜種のフォレストベアだとッ!?襲われたと言ったが、どうしたんだッ?』
「あのボーナスモンスターは倒しました。本当はこの落とし穴を使って倒す予定でしたが、実際に戦ったらあまり強く無かったので、この落とし穴は使わずに済んだんです。」
『…はぁあ?』
小動物は驚きの声をあげた。
『そんなバカな!あのフォレストベアは高レベルの索敵スキルと剛力スキルを持っていたんだぞ!オイラの仲間もたくさん喰われちまった。ただの人間があんな化け物倒せるはずがない!』
(あのボーナスモンスターを”化け物”って言ってるくらいだから、襲ってきても大丈夫だな。)
「ユニ、落とし穴をもとに戻せる?」
ユニは笑顔だったが、目が笑っていなかった…。
「はい。あの無礼な塵は生き埋めにします。」
「お願いだから助けてあげて…。」
ユニはしぶしぶ頷くと、土の精霊を再度召喚して、落とし穴をもとに戻した。
『っ!!!あッ…あの落とし穴を一瞬で…。…ッ!称号に…森の英雄…!?』
小動物が驚きで固まっているなか、コウスケは静かに問いかけた。
「どうですか?許してもらえますか?」
声を聞いた小動物は、コウスケに飛び掛かった。
(やはり来るか。襲ってくるのであれば、やむを得ないな。)
…小動物は、コウスケの前でキレイなジャンピング土下座を決めた…
『…謝るのはオイラだ…です。失礼な事を言ってごめんなさい。あと、森を救ってくれてありがとう…。』
(…小動物なのに、人間みたいな表情するんだな…)
「気にしないでください。それじゃ、急ぎますので失礼しますね。ユニ、行こう!」
ユニは頷くと索敵スキルを発動させた。
「コウスケ様、フォレストベアのお陰でこの辺りのモンスターは逃げてしまったようです。目的地まで直線距離で行けそうです。こちらです。」
(かなり時間をロスしたから急がないとな。)
『まっ、待って!オイラも一緒に連れていってほしいって…おいぃ~!話を聞け~!』
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