第4話 エヘッ! 4
「侍の選抜隊だって!?」
ユウは新しい出来事を聞かされる。
「そうなんだよ。魔王を倒すべく日本政府は侍を全国から募り選りすぐりの侍たちで部隊を作り魔界に攻め込むんだって。」
女将さんはお客様から聞いた情報らしい。
「よ~し! 俺も魔王討伐の選抜隊に入って魔王をぶっ飛ばしてやるぜ!」
ユウは世界の平和のために立ち上がる。
「じゃあ、まずは渋谷区予選ですね。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「渋谷区予選?」
ユウはおみっちゃんに尋ねてみた。
「渋谷区には30以上の住所があり、各住所に鎧があります。その鎧に選ばれた侍たちで戦い渋谷区代表を決めるそうですよ。エヘッ!」
離す時も可愛いエヘ幽霊。
「面白い! どんな奴が相手であろうとも、この俺が渋谷区代表になってみせるぜ! 燃えろ! 俺のサムライ・スピリット! ウオオオオオー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ユウの周りはいつも火事が多いらしい。
「その前にしっかりと湯呑とお皿を洗っておくれ。汚れが残っていたら許さないよ。」
凄みを利かせる女将さん。
「はい! 喜んで!」
お皿を念入りに擦るユウ。
「オラオラ! しっかり働いてくださいね。エヘッ!」
他人には厳しいエヘ幽霊。
「おみっちゃん。あんたも働くんだよ。給料を減らしてもいいんだね? ギラン!」
凄みをきかせておみっちゃんを睨む女将さん。
「それだけはお許しください悪代官様!」
おみっちゃんには確かに女将さんは悪代官に見えた。
「誰が悪代官だよ! 誰が! 給料は半額でいいね? おみっちゃん。」
悪く言われてキレる女将さん。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ! 美人の悪代官様が作っています!」
必死に働いている姿をアピールするおみっちゃん。
「全く困ったもんだよ。ヤレヤレだね。」
おみっちゃんの保護者は疲れる。
「やって来ました! 渋谷区代表侍決定戦! エヘッ!」
月日が流れるのは早い。
「よし! やってやるぜ! 燃えろ! 俺のサムライ・スピリット! ウオオオオオー!!!!!!!!!!!!」
ユウは闘志を燃やしている。
「だから熱いって。火事が起こったらどうするんだい?」
女将さんはユウの熱血漢の設定が暑苦しかった。
「私が消しますよ。エヘッ!」
バケツに水を汲んで準備万端のエヘ幽霊。
「そういう問題じゃないんだよ。」
呆れる女将さん。
「それでは渋谷区代表侍の選出方法を発表します!」
司会者がルールの説明を始めようとしている。
「いよいよ始まるよ。大人しくしな。」
女将さんは司会者の説明を聞く。
「は~い。」
給料を下げられたくないので大人しく従うおみっちゃん。
「1対1で戦ってもらいます。そして最後に残った1人が渋谷区の代表侍になり東京都23区代表戦に出場できます。」
正にインターハイ予選である。
「よし! やってやるぜ! 燃えろ! 俺のサムライ・スピリット! ウオオオオオー!!!!!!!!!!!!」
ユウは戦いに向けて闘志を燃やす。
「だから! いちいち燃やすんじゃないよ! 熱いだろ!」
女将さんからの苦情。
「大丈夫ですよ。かき氷を用意しました。シロップは赤い苺です。エヘッ!」
夏は私の季節ですと主張するエヘ幽霊。
「それでは第一試合を始めます! 笹塚侍さんと幡ヶ谷侍さん! どうぞ!」
こうして渋谷区選抜侍決定戦の戦いは始まった。
「おお!」
笹塚侍と幡ヶ谷侍が闘技場に上がる。
「二人はどんな侍でしょうね?」
おみっちゃんは尋ねてみた。
「幡ヶ谷は谷があるから、系統としては渋谷侍のユウと同じじゃないかね。」
谷は奈落に通じている。
「でも、一介の侍に奈落に行く術はないだろうね。」
これも奈落とお友達の女将さんとおみっちゃんの見解である。
「幡って、宗教関係の目印や装飾のこというみたいだね。宗教侍なら強いんじゃないかい? 神聖侍とか。」
女将さんは幡ヶ谷侍を警戒する。
「ああ~修学旅行のお土産のテナントみたいなものですね。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「身も蓋もない言い方だね・・・・・・。もう言葉が出ないよ。」
呆れる女将さん。
「やったー! 褒められました! エヘッ!」
大喜びのエヘ幽霊。
「誰も褒めてない。」
呆れる女将さん。
「対戦相手の笹塚侍はなんだろう? 笹の葉ってことかい? 七夕とかが連想できるのかね?」
女将さんは笹から七夕を連想した。
「違いますよ! 笹といえばパンダですよ! 白黒の可愛い奴です! エヘッ!」
パンダしか目に無いエヘ幽霊。
「後は笹団子もあるね。今度、茶店で出してみるか。ガッポリ儲かりそうだね。イヒッ!」
守銭奴の女将さん。
「パンダですよ! パンダ! 私みたいに可愛い奴ですよ! エヘッ!」
自分とパンダは同じであると主張するエヘ幽霊。
「パンダの使い手の侍なんかいないだろう。そんな奴はいないだろうよ。」
吐き捨てる女将さん。
「勝者! 笹塚侍さん!」
勝ったのは笹塚侍だった。
「パホ!」
闘技場に一匹のパンダがいたことは間違いない。
「パンダ!? マジかい!?」
女将さんは自分の目を疑った。
「ほら! だから言ったじゃないですか! パンダだって! エヘッ!」
超得意げなエヘ幽霊。
「幡の谷の侍はどうしたんだよ?」
女将さんの前評判は幡ヶ谷侍が有利だった。
「幡は神様を召喚することを試みるもレベル不足で不召喚。谷は奈落にも行ってないので修練不足で不発。全く駄目でしたね。エヘッ!」
解説の愉快なエヘ幽霊。
「なんじゃそりゃ。これは侍というより特殊能力をもった侍の面白バトルだなね。」
呆れる女将さん。
「そうですね。楽しければ何でもいいじゃないですか。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「それでは次の試合を始めます! 本町侍さんと大山町侍さん! どうぞ!」
第二試合が始まる。
「女将さん。第二試合はどうなりますかね?」
おみっちゃんは女将さんに尋ねてみた。
「なんだろうね。これ侍でなくても騎士でもいいし能力者でもいいし、なんか一皮むけた感じだね。開き直らないとやってられないね。」
呆れるを通り越した女将さん。新しい能力を考えるだけで戦って酌を稼げるのであれば、ワンピース、僕のヒーローアカデミア、ハンターハンターとかと同じ。戦っていればいいだけだから文字数は困らない。良い方法が見つかった。ラッキー。
「本町侍は読む本だろ。町か、町もよく出てくる字だから何か統一した見解がある方がいいね。」
悩む女将さん。
「町さんには田んぼを贈呈とかどうですか? エヘッ!」
発言はいつも可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「却下。逆に能力なしっていうのも悪くないね。思いつかないから楽しよう。イヒッ!」
損得勘定のできる女将さん。
「後のお楽しみってやつですね。エヘッ!」
基本、合いの手のエヘ幽霊。
「お! おみっちゃんにしてはよく分かっているじゃないかい。」
珍しくおみっちゃんを褒める女将さん。
「じゃあ、私の給料はアップですか!? ベースアップを勝ち取りますよ! エヘッ!」
褒められただけでは満足できないで給料のアップを求めるエヘ幽霊。
「なぜそうなるんだい? 今まで引いた分が元に戻るだけだよ。」
さりげなく優しい女将さん。
「やったー! 給料が元通りだ! エヘッ!」
不当に減給されていたのに喜ぶエヘ幽霊。
「現状、町は能力なしっと。」
こうして特殊能力は決められていく。
「対戦相手は大山町さんですね。」
本町さんと大山町さんの戦い。
「まず町は能力なしだから問題なし。大山か・・・・・・山が大きくなるとかでいいんじゃないかい?」
そのまんま。
「そうですね。大中小はモノの大きさにしましょうか。でそれは他の漢字にかかる言葉ということで。」
能力は気軽に決まっていく。
「富士山でも落としますか?」
おみっちゃんの発想は幽霊なので人間の発想を遥かに凌駕している。
「渋谷区には大きな山はないし、これも山を召喚しようとして不発になるパターンだね。」
動かざること山の如し。
「山盛りパスタとかでも私は大丈夫ですよ! エヘッ!」
食欲旺盛なエヘ幽霊。
「あんたはね。」
呆れる女将さん。
「やったー! 褒められちゃった! エヘッ!」
大喜びのエヘ幽霊。
「褒めてない!」
女将さんも大変である。
「ギャアアアアアアー!」
その時、第二試合の決着が着いた。
「勝者は本町侍さんです!」
勝ったのは本町侍だった。
「本の角で叩いたんだ!? 湯気が出てる!?」
決まり手は本の角は意外と痛いであった。
「あの人、私と同じような思考回路をしていますね。エヘッ!」
同じ攻撃方法を考えていたエヘ幽霊。
「私はあんたのことが恐ろしいよ。」
女将さんはなりふり構わない考え方に恐怖した。
「それでは第三試合を始めます! 西原侍さんと初台侍さん! どうぞ!」
第三試合が始まる。
「解説の女将さん。第三試合はどうなりますかね?」
実況のおみっちゃん。
「そうだね・・・・・・って、いつから私たちは実況解説になったんだい?」
疑問を感じる女将さん。
「まあまあ、固いことは言わないで下さいよ。私が可愛いから許してくださいよ。エヘ幽霊。」
笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「まあ、いいや。おみっちゃん相手じゃ、いつものことだからね。」
諦めた女将さん。
「褒めらちゃった。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「褒めてない・・・・・・というのも疲れてきた。」
体力が衰えた女将さん。
「話を元に戻して、西原だろ? 西は方向的なものだね。原は巨人で4番・・・・・・まさか!? 西原侍はホームランバッターかい!? 西の風が吹けばホームランを打てる特殊能力かい!?」
女将さんも頭のネジが緩んできた。
「女将さんどうしたんですか? 大丈夫ですか?」
女将さんを心配するおみっちゃん。
「あんたが原因だろ! あんたの性で私は疲れるんだよ!」
女将さんはキレた。
「私のお手柄なんですか! やったー! これで給料アップですね! エヘッ!」
パターンは完璧。
「ダメだ。特殊能力を考え始めてからおみっちゃんの相手をすると頭が痛くなる。無視しよう。」
こうして無視が始まるのだった。
「対戦相手が初台侍と。初めて、初体験と台は地形と。何にも閃かないねえ。疲れたよ。もう無理だね。」
女将さんは特殊能力を考えることに疲れ果てた。
ピキーン!
その時、おみっちゃんは閃いた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 歌が歌いたい!」
おみっちゃんは大好きな歌が歌いたくなった。
「それはダメ。闘技場が破壊されるから。」
女将さんはしっかりと止める。
「何もなければ何もないでいいじゃないですか! 何も無いからってダメな子じゃありません! 普通の侍です!」
斬新なアイデアではなく、無理に全員に特殊能力をつけるのをやめるということだけ。
「それいいね。続けていくためにはスケール・ダウンも大切だ。」
女将さんも楽することに同意する。
「これに当てはめると西原侍さんは能力なし。大山町侍さんは山なので地の属性ですかね。」
シンプル・イズ・ベスト。
「深く考えるのはやめよう。」
女将さんも納得。
「ギャアアアアアアー!」
第三試合の決着が着いた。
「第三試合! 勝者は大山町侍さんです!」
大山町侍が勝った。
「そりゃあそうだろう。普通の侍と土魔法が使える侍。どちらが勝つか言うまでもない。」
普通でもレベルが高ければ何でも切れるだろう。
「ああ!? 初台侍さんの所を大山町侍さんと間違えている!?」
朝起きて目が覚めるとこんなものである。
「これは対戦表を書いていかないとダメだね。」
第一試合 〇笹塚侍 VS 幡ヶ谷侍
第二試合 〇本町侍 VS 大山町侍
第三試合 〇西原侍 VS 初台侍
「どうして初台侍は負けなんだい?」
作者の錯覚である。
「試合に出なかったので不戦敗です。エヘッ!」
笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「こういう時はおみっちゃんは便利な子だね。」
女将さんは皮肉る。
「やったー! 褒められた! エヘッ!」
大喜びのエヘ幽霊。
「ガンガン行きましょう!」
トーナメントだろうが、リーグ戦だろうが、黄金十二宮だろうが、オリンピックだろうが、先を決めておけば戦いを進めていくだけなのでストーリーを進めるのは非常に楽。
「でも、こうなると私が毎話、歌を歌うことができませんね。悪役の侍が出る訳ではないですからね。」
残念がるおみっちゃん。
「いいじゃないかい。あんたが歌を歌わない方が世界が平和なんだからね。イヒッ!」
世界平和を祈る優しい女将さんであった。
つづく。
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