少年の旅立ち

上山ナナイ

第1話 アレンの旅立ち

あの星々は過去の光。ここは地上の人々の無意識の理想を体現した、天空に浮かぶ星の都。地上の人々は、その都のさらなる繁栄を願い。送り火をおくる。


「おはようございます!イグニスさん。」

アレンは走っていった。電子図書館の1000年以上前の、過去の『アニメ』と呼ばれるものを、昨夜見ており、直属の上司であり、この星のハイクラスの人工天使である、イグニスの朝の呼び出しに遅れてしまった。


「遅いぞ、アレン。また親に女装でもさせられていたのか。」


アレンはまだ性別の決まってない少年だが、アレンの義理の親は、アレンが少女になって、自分との結婚を望んでいる。


アレンの親は戦闘を行い、ディバインドラゴンに乗って駆け、地上を見回り、戦士としての役割をもこなす、人工天使になることに反対している。そばにいればいい、何もしなくてもいいのだと。


アレンはイグニスと義理の親に挟まれ、どの性別を選択すべきなのか迷ってる。


「第一位の預言者ユーグリットが、あらたな預言を持って、鎖の塔から逃げ出した。あとを追うぞ。」


「わかりました!」


「お前は新人だが、私にはない、テレパスの能力を持っている。ある意味、鎖の塔に繋がれてる、預言者達に近い。ユーグリットがどこにいるか、まずは鎖の塔の最上階にある、ユーグリットの部屋を調べるぞ。」


この天空にある星の都は、かつての人間の文明の繁栄のモデルケースとして、狩猟、農業、工業、情報のエリアに分かれている。


アレンが普段住んでるのは情報エリアであり、預言者の住まう鎖の塔は、情報エリアではあるが、その存在はハイクラスの人工天使達しか知らない。


イグニスとアレンはディバインドラゴンを駆り、星の都、情報エリアの離れ小島にある、鎖の塔に向かった。


「ようこそ鎖の塔へ!」


鎖の塔の案内人のヴィジョンが現れ、こちらです、こちらです、とアレン達を案内した。


塔の最上階のユーグリットの部屋は、世界の記憶が収まっている本で溢れかえっていた。


「ようこそ、人工天使イグニス。そしてアレン。この鎖の塔へ。ユーグリットを追ってきたのね。」


部屋の入り口に第二位の預言者であるソニアが立っていた。天使の羽が鎖で繋がれている。


「何の用だ。私たちの捜査の妨害にでも来たのか?」イグニスはソニアを訝しげに見る。


「ユーグリットの元恋人のくせに、殺すのね?彼を。笑えるわ。」


「それはユーグリット次第だが、我々は預言の内容を知らねばならない。なぜ逃げたのか。」


滅びの予言だからよ、とソニアは答えた。


「人工天使、あなた方は過去に復讐されねばならない。預言者の犠牲によって、星の都に住まう天使達の幸福は約束されてきた。地上の人々の夢まで刈り取り。」


黙れ、とイグニス。


「我々が地上を、文明の理想形に導いているのだ。人間どもの文明が、いったい何度滅びたのか知っているのか?彼らには我々への信仰が必要なのだ。」






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