第四章_探偵がビームで彼女誘拐犯○○を破壊するまで、@900秒

第38話 在処

 「≪追想≫:≪翼を灼くもの≫」


 突発的に始まったミノとリカの決闘は、ミノのビームによって決着を迎えた。

 

「二連敗してしまいました……やはり強いで……!? どうしました!?」

「ああ、これは大丈夫ですよ。いつものことですから」

「以前は、このようなことはございませんでしたよ」

「少し眠っているだけです。長くても15分ほどで目を覚ましますよ。気にしないでください。今日はありがとうございました」


 カンイチはミノを膝の上に横たえた。


「まさか、君はこのために……? 何か事情があるのですね」

「俺の口からは……。後日ミノさんに直接聞いてください。きっとリカさんになら話してくれると思います」

「そうでございますか。では、言伝をお願いいたします。“次は勝って話を聞かせてもらいます”とお伝えください」

「必ず伝えます。俺も今度は全力のリカさんに挑戦させてください」

「今日の私も手を抜いてはおりませんでしたよ」

「それでもです」

「承知いたしました。楽しみにお待ちしております」


 リカは自然な足取りで会場から去っていった。

 まだまだリカの真似はできそうにない。

 ミノが目を覚ましたのはおよそ十分後のこと。カンイチはミノの目覚めを待ってログアウトした。


 翌日、カンイチは箕のマンションを訪れた。


「珍しいですね」


 今日の箕はヘッドセットではなくPCを操作していた。

 箕は重度のVRゲーマーだが、いわゆるネットゲーマーと違い、PCで操作するタイプのゲームはほとんどプレイしていない。つまり、ゲーム以外の目的でPCに向かっているということになる。


「ああ、リカリカの記憶にあったwebサイトのURLを辿っていたんだよ。忘れないうちにね」

「重大そうな手がかりなんですか!?」

「もし、今も残っていれば、だね。これだよ」


 PCのモニターにはアルバイト募集サイトのwebページが表示されていた。


「既に募集は終了しています……。基本情報も消えちゃってますね」

「ほら、そこら辺は、本職の伝手を使ってね。さっき連絡が来たばかりなんだ。こっちが当時の掲載情報さ」

「それはわかりましたけど、彼女のアルバイト先なんてたくさんありますよね。そのうち一つが分かっただけじゃ、手がかりには……」

「ここは、何を隠そう彼女が最後に応募したと思われるアルバイト先なのだよ。募集が終了したのは彼女が行方不明になった後さ」

「小学生の家庭教師。電車で二駅くらいの距離で、住み込みの代わりに時給も高い、期間は二週間。もうとっくに過ぎている……」

「いかにも、だろう?」

「そうですね。行ってきます。……止めないでくださいね」

「助手クンが聞かないのはよくわかっているよ」


 カンイチはミノからアルバイト先の情報をもらって、すぐにマンションを後にした。


「今度こそ、見つかるといいね。助手クン」



 箕のスマホが震えたのは、すっかり陽が落ちて夜も深まった頃のことだった。


「誰だい、一体……?」


 表示されていた番号は、知り合いの刑事蒲田のもの。


「電話には出ないと言っておいただろう……」


 ベッドで横になっていた箕は、スマホを手放して寝返りを打った。

 実際のところ、PCにはテキストチャットで何度もメッセージが届いていたのだが、通知を切っていた箕には知る由もない。

 しばらくそのまま放置していたが、いっこうにスマホは鳴り止む気配がない。


「まったく! 寝られないじゃないか」


 仕方なく、箕は再びスマホを取った。


「長月だ。電話をかけてくるな。緊急時以外使うなと言っていたはずだが」

「蒲田っス、今がその緊急時なんスよ!」

「私に令状が出たくらいのことじゃないと、緊急時とは言わないのだよ」

「ソレ、結構近い例えっスよ、長月さん」

「は?」

「長月さんとこの助手さん、ウチで預かってます。取りに来ていただきたいッス」

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