20 イメージチェンジの協力者
「それで?今度お前はあの人とショッピングモールに行くことになったと」
「ああ」
「俺が帰った後でそんなことになってるとはなぁ」
学校に来て早々、俺は柾に絡まれている。
話題は勿論白宮の事だ。さっき取り付けた約束について話している。
「んで?それの何が問題なんだよ?お前、学校一の美少女と言っても過言じゃないあの人とデート出来て何が不満なんだよ?流石に学校中の男が泣くぞ?」
「デートじゃねーよ。それに、問題はそこだよ」
「は?」
問題。そう、問題なのだ。俺が白宮と一緒に出掛けることが大問題なのだ。
なぜか?白宮は今まで数多の男たちの誘いを断ってきた。そんな白宮が、街中で男と、しかも俺とで歩いていた。そんなところを誰かに見られようものなら、お互いに嫌な気持ちになる。
あいつは男のセンスを疑われ、俺は学校から追放される。
(追放とか、ラノベだけで間に合ってるっつーの)
「俺が白宮と歩いてて」
「ああ」
「お前は休日にそれを発見した学校の生徒A」
「おう」
「自分は振られたのに、なぜに自分よりも明らかに見た目の劣っている奴と白宮がいるのか理解が出来ない。悔しい、そして嫉妬が芽生える」
「まあ、そうだわな」
「そして俺は、そいつが学校中にその情報を拡散したために学校から追い出され、社会的に抹殺される」
「……そ、れは。考えすぎだろ?」
「本当にそうか?万に一つも可能性が無いと断言できるか?」
「……」
白宮と買い物に行く。それは良いんだ。
いつも世話になってるのも含めて、一応はしっかりと礼もしなければいけないとも思っていた。
だが、こういう場合学校の生徒に見つかったら流石にそこまで大事にはならないだろうが、面倒なのは確かだ。
「まあ、相手が相手だしな」
「そう言う事だ。というか、なんで一緒に行くことになったんだか」
「は?」
「なんだよ?」
「いやいやいやいやいや……奏汰、お前それ本気で言ってるのか?」
こいつマジか!?みたいな顔をされているがなぜだろう?
それともこいつはなんであの流れで一緒に行くなんて発想になるのか分かるのだろうか?
「本気というか、俺はただショッピングモールの話をしただけで」
そうだ。あの時は会話が続かなかったからその話をしただけだ。
そこから一緒に行くって発想になるのは良く分からない。
「それになぜか拒否権も認められなかったんだけど」
「俺は奏汰が最近頭いいのか悪いのか分からなくなってきたよ」
「どういう意味だおい!」
「あ、秋葉ー!!ちょっと来てー!!」
「なんで秋葉まで呼んでんだよ!?」
「え?だってこれは伝えとかないとでしょ?」
その顔には面白そうだし、とも書いてあった。
(こいつー!?俺を売りやがった!?よりにもよって秋葉に、こういったことに関しては特にうるさい秋葉に。なんてことしやがるんだ!?)
「えーなにー?」
「それがさ、奏汰がさあー」
「おい、やめろ!」
そう柾を捕まえようとしたものの流石運動と顔だけは良い柾、流石に俺では捕まえられず、結果全ては秋葉の耳に入っていく。
(ああ、終わった。こいつに相談したのが間違いだったのか?まあ、そうだろうな)
「なるほどなるほど。取り敢えず奏汰がとんでも無い馬鹿だってのは分かったよ!」
「だろおー?」
「おいそこうるせー!」
「だって、流石にこれはねえ。奏汰ってば鈍いとかじゃなくて感覚麻痺してるでしょ」
「くっそ、俺がいつも何も言わないからって調子に乗りやがって!」
「まあ、そんな奏汰に朗報です!今なら、私が奏汰をどこに出しても恥ずかしくないようにしてあげることも出来るけど?」
ナニヲイッテルノカヨクワカラナイデス。
というか、それはいつもの俺への批判とみなしても良いのだろうか?
「おいコラ、誰がいつもは見るに堪えない陰キャボッチだと?」
「そこまでは言ってないけど、自覚あったんだね奏汰」
「なんかさっきから妙に胸が痛いからもうやめろよ」
「それで?秋葉あれをやるのか?」
「そうだよまさ君!!あれでこの野暮ったい奏汰をかっこよくしよう!」
「おいおい。俺がそんなかっこ良くなるはずないだろ?」
俺は生まれてこのかた16年間、ずっとこのままだ。
「自慢じゃないが、俺は多分何をしてもこのままだぞ?って何すんだ!?」
「うんうん。やっぱりだよまさ君!髪あげれば万事解決だよ!少し前髪うざったいけど、でもあげれば結構いいよ!」
「だろだろ!なんせ奏汰は馬鹿だからな。今まで自分じゃ気づけなかったんだよ」
「さっきから何なんだ!というかお前は手を放せい!」
「あ、いつものに戻った!なんかこっちの方が安心するね」
「まあ、いっつも見慣れてるしな。奏汰がさっきの髪型で登校したら……ふっ、面白そうだ」
「おい笑ってんじゃねーか!そうだよ、どうせ俺の顔は面白いですよ」
「まあまあ、そんなことを言ってられるのも今のうちでっせ!あたいがやるからにゃ、妥協はゆるしまへんで!」
「口調変わってるぞ?」
「へっへっへー、奏汰が自分を鏡で見た時、その時が奏汰の最後だよ!」
「ほう?最後とな?であらば貴様を此処で葬るまでよ!」
「奏汰って意外とノリ良いよな?なんで友達出来ないんだろうな?」
それがまるで凄い不思議と言わんばかりに首をかしげる。
俺がそこまで友達を欲していないのもあるが、まずここまでの会話ができるまでに時間が掛かる。
柾と秋葉の場合は他人の領域にズカズカと入る遠慮のなさがあったため意外と打ち解けるのは早かったが、こいつらみたいなのはそうそういない。なんだかんだで結構いい友達なのだ。人の家に無遠慮に泊まることとか除けば。
「と言う訳で、明日修了式が終わったら奏汰の家に行くから!まさ君も一緒にね!」
「あったりめーだろ!奏汰が変わったところを見たいしな、と言う訳で、俺も一緒に行くから」
「ま、どうすんのかは知らないけど、変装道具とか貸してくれんならありがたいし、まあいいか」
二人と明日の放課後の打ち合わせを終えて、スマホで白宮に明日の予定を伝える。
『明日は柾と秋葉が来ることになった。すぐ来るらしいから昼と夜は二人の分も頼む。何か買ってくものとかあるか?今日の内に買っていくけど?』
それを打ち込んで送信する。最近ではこのやり取りも慣れてきた。
と、スマホをまたしまおうとしたら案の定白宮もスマホを見ていたところなのかすぐに返事が来る。
『いいえ、食材はお家にあるので足りてるので大丈夫です。ありがとうございます!』
『(クマのスタンプ)』
そう言えば最近クマのスタンプにはまってるらしくちょくちょく送られてくるのだが……
(これを笑顔で送って来る姿とか……あ、やばい、想像しただけで可愛い)
ハッ!と我に返り、自席に戻っている柾からの視線を感じ、そっちを見れば、案の定気持ち悪いニヤニヤ笑いを浮かべる柾がこっちを向いてる。
これからは学校で感情を表に出さないように、何事にも動じない強靭な精神を身に着けようとこの時決意するのだった。
まあ、すぐにそんなことは忘れたんだが……。
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