第76話 2度目の生はレオと幸せになります

私の連れ去り事件から3ヶ月が経った。あの日以来、すっかり過保護になったレオの監視のもと、それなりに楽しく生活している。


気になる第二王子だが、さすがにこんな事件を起こしてしまったという事で、マレー王国との婚約は破棄。さらに、王国の北にある収容施設に幽閉される事が決まったはずだったが…


ベレッサ王女が

「それでも私はユーグラテス様と結婚したいです。誰にでも過ちはあるもの!今後は私がしっかりとユーグラテス様を再教育いたします。ですから、どうかこのまま結婚させてください」


そう頭を下げたそうだ。そのため、第二王子は急遽そのままマレー王国に婿養子に行く事になった。


ただ第二王子は最後まで

「嫌だ!僕が愛しているのはミシェルだけだ!ミシェル!」

そう叫んでいたそうだが、ベレッサ王女に首根っこをがっちり掴まれ、マレー王国に連行されていったらしい。


レベッカ様の話では、逃げ出そうとする第二王子を、頑丈な鎖で繋いでしっかり監視しているとの事。


「さすがにあんな事件を起こしたのだから、ベレッサも諦めると思ったのに。まさかそのままマレー王国に連れて帰るなんて思わなかったわ。それにしてもいい気味ね。まさか自分が鎖で繋がれることになるなんて、夢にも思っていなかったでしょうね」


そう言って笑っていた。きっとあの様子じゃあ、もう二度と第二王子がグラデス王国の地を踏む事はないだろうと、レベッカ様は言っていた。


そして、第二王子が雇っていた男達だが、やはりかなり大きな組織だったようだ。組織の中には、アドレンラス王国の技士もいた様で、高性能な通信機を使ってやり取りをしていたとの事。


その組織も、今回ボスが逮捕されたという事で、芋づる式に次々と幹部たちも捕まったと話は聞いている。


「まさか、こんな大きな組織を捕まえられるとは思っていなかったよ」


と、王太子様が喜んでいた。ちなみに今回の事件をきっかけに、いかに陛下が無能だったか思い知らされたことから、近々王位を王太子様に譲る事が決まったらしい。


ただ、すぐには王位を譲る事が出来ないので、早くても半年後らしい。それでも今、王宮内は大忙しだ。


「正直まだ王妃になんてなりたくないのだけれど…決まってしまった事は仕方ないわね。1度目の生では、国王になる寸前でユリー様は殺されてしまったけれど、今回は国王になるのをしっかり見届けられそうだわ!」


そう言って嬉しそうに笑うレベッカ様。きっとレベッカ様なら、王太子様をしっかり支えてくれるだろうと、私は思っている。


そうそう、改装工事に入っていた私の部屋も、やっと先日完成した。


嬉しくて喜んで部屋に入ったのだが…

なんと窓が一切なく、さらに外側と内側から鍵が掛けられる使用にしなっていた。もちろんこの部屋もレオの部屋と繋がっている。


さすがに窓が無いのはおかしい!と抗議したが


「窓なんかあったら、また誰かに侵入されるかもしれないだろう!別に窓が無くても生活は出来るだろう!」


そう一喝されてしまった。ちなみに改装された私の部屋には、チャチャが遊べるスペースが完備されている為、チャチャには好評だ。


そんなチャチャだが、今回公爵令嬢を救い、組織のアジトを突き止めたとして、国から表彰された。さらに、チャチャの大好きなおやつ1年分が贈られた。ただ、本人はあまりよく分かっていない。


やっと私にも、本当の意味で平和な暮らしが戻った。もう私の脅かす第二王子はこの国にはいない。思い返してみれば、8歳で2度目の人生を送り始めてから約8年。本当に第二王子には苦しめられて来た。それも今回でもう終わりだ。なんと言っても、もう第二王子はこの国に居ないのだから!


もう家族やレオの命が狙われる事も無い、今度こそ本当に幸せになれるんだ。そう思ったら、何とも言えない感情が沸き上がり、目頭が熱くなる。


「ミシェル、どうしたの?こんなところでボーっとして。あら?あなた泣いているの?」


「何だって?ミシェル!どうしたんだ?」


シュミナの一言で、レオが飛んできた。


「何でもないのよ!ただ、こうやって平和な日々が戻った事が嬉しくて。思い返せば、ずっと第二王子には苦しめられてきたから…」


「そうね、でも私はあの時の日々も大切な思い出よ。だって、ミシェルと沢山の思い出が出来たのですもの」


「確かにシュミナ嬢のいう事は一理あるな!あいつのおかげで、さっさとお前と婚約も出来たし、悪い事ばっかりじゃなかったぞ。それとも何か?あいつが居なくなったから、俺との結婚を止めたいとでも言うつもりか?」


物凄く怖い顔で詰め寄って来るレオ。なぜそんな話になるのよ!


「そんな訳ないでしょう!私が好きなのはレオだけなのよ!これから先、一生レオと一緒に居るわよ!」


「ミシェル!」


私の言葉を聞き、ギューッと抱きしめて来るレオ。シュミナも苦笑いしている。周りからも、生温かい視線が送られた。


「ちょっと、学院内で抱き着くのは止めてよ!恥ずかしいじゃない!」


とっさに抗議の声を上げるが、全く聞く耳を持たないレオ。さらに頬に口付けまでして来る始末。なぜか周りは盛り上がっている。


ふとレオを見ると、物凄く幸せそうな顔をしていた。そんなレオを見ていたら、私まで幸せな気持ちになった。これから先も、ずっとレオ一緒だ。これからもよろしくね、レオ。



~数年後~

「ミシェル、中庭に居たのか!聞いてくれ、ついに騎士団の団長になる事が決まったんだ」


チャチャと中庭を散歩していると、嬉しそうにレオがこっちに向かって走って来た。


「まあ、おめでとう。さすがレオね!凄いわ」


学院を卒業と同時に、副騎士団長になったレオ。副騎士団長になって以来、今まで以上に稽古に励んでいたものね。


そうそう、私たちも学院卒業と同時に結婚し、今はレオが我がミューティング家の公爵だ。シュミナとジル様も同時期に結婚し、先日子供が産まれた。レベッカ様も王妃となり、今は1男1女に恵まれている。


「ミシェル、中庭は冷えるぞ!チャチャももう歳なんだし、そろそろ屋敷に入ろう」


「キャンキャン」


「レオ、チャチャをおじいちゃん扱いしたから怒っているわ!チャチャはまだまだ元気よ。ね、チャチャ」


「それは悪かったな。それよりミシェル、早く中へ!」


レオに差し出された手を握った。


「大体お前、そんな大きなお腹をして、あまりウロウロするな!転んだらどうするんだよ」


「あら、お医者様からは定期的に歩くようにって言われているのよ。それに、護衛騎士とメイドもちゃんと付いているし、チョーカーとブレスレットも付けているもの。外にも勝手に出ていないし、ちゃんとレオの言いつけは守っているわ」


そう、実は私も今妊娠中で、来月出産予定だ。子供が出来たと分かってから、さらにレオの過保護っぷりに拍車がかかった。


「なあ、今グニュ~ってお腹が動いたぞ!聞こえるか?父上だぞ!お前が出てい来るの楽しみにしているからな」


嬉しそうにお腹に話しかけるレオ。そんなレオの姿に、私も自然と笑みがこぼれる。


「さあ、早く中に入ろう!」


「うん!」


差し出された手をしっかり握り、幸せそうに歩く2人であった。



おしまい



~あとがき~

これにて完結です。

今後、番外編を少し書きたいとは思っているのですが…期待せずにいて頂けると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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