第75話 レオが我が家で生活するそうです
「さあ、もう遅いしそろそろ休みましょう。スタンディーフォン公爵、ガーディアン侯爵、本当に色々とありがとうございました。何とお礼を言っていいやら。こうして無事ミシェルが戻って来られたのは、お2人の協力があったからですわ」
お母様が深々と頭を下げた。隣でお父様も下げているので私も一緒に下げておいた。
「いいや、私たちは何もしていませんよ。お礼なら、この犬に言ってあげてください。それじゃあ私はこれで。シュミナ、帰るぞ」
シュミナのお父様がシュミナを連れて帰ろうとした時だった。
「嫌よ!今日はミシェルと一緒に寝るわ!万が一また襲われたらどうするの?もう遅いし、いいでしょう、お父様」
「おじ様、私もシュミナと一緒に寝たいわ!ずっと1人だったのですもの」
私もすかさずシュミナの味方をした。
「う~ん…分かったよ。ミューティング公爵夫人、娘がこう言っているのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんですわ!シュミナちゃんなら大歓迎ですわよ!」
やった!許可が下りたわ!
「シュミナ嬢がミシェルの側にいてくれるなら、俺は一旦家に帰るよ。シュミナ嬢、ミシェルの事頼んだよ!」
「任せておいて!」
珍しくレオが家に帰ると言い出した。一体どうしたのかしら?絶対に泊って行くって言うと思ったのだけれど…
まあいいか!その日はシュミナと一緒に客間で寝た。もちろん、チャチャも一緒だ。初めてシュミナが家に泊るとあって、結局興奮して中々眠れず、明け方近くまで2人でおしゃべりをした。
翌朝
「キャンキャン」
チャチャの鳴き声で目を覚ました。
「チャチャ、おはよう。早起きね」
さっき寝たばかりなのに…物凄く眠い目をこすり、何とか起きた。シュミナも物凄く眠そうだ。
「キャンキャン」
鳴きながら飛びまわるチャチャ。そうか、お腹が空いたのね。ルシアナにチャチャのご飯を持ってきてもらう様にお願いした。
「チャチャ様、ご飯ですよ」
ルシアナがご飯を置いたのだが、なぜか食べない。あら?違ったかしら?
「チャチャ、どうしたの?ご飯よ」
チャチャをご飯の所まで連れて行くと、チラッとこっちを見たと思ったら、ものすごい勢いで食べ始めた。この光景、レオが襲われた時と同じだわ!
「良かった、食べているわ。実はミシェルが居なくなってから、ずっとご飯を食べなかったのよ。それに、あなたの帰りをずっと玄関で待っていたし」
やっぱり…以前もそうだったわ!でも、3日もご飯を食べなかっただなんて…
一生懸命ご飯を食べているチャチャの背中を何度も撫でた。ごめんねチャチャ、助けてくれてありがとう、そう何度も呟きながら。
「シュミナ、色々と迷惑を掛けてごめんね。チャチャにも可哀そうな事をしてしまったわね」
「何を言っているの!私こそ、あなたを守れなくてごめんね!でも、本当に無事でよかったわ。これもすべてチャチャのおかげね」
そう言って嬉しそうに笑ったシュミナ。チャチャのご飯を見届けた後、私たちも朝食を食べた。食後、ジル様がシュミナを迎えに来たので、2人で一緒に帰って行った。
シュミナたちを見送った後は、なぜかお医者様がやって来た。3日も監禁されていたという事で、念のため健康状態をチェックするとの事。
「特に異常はございませんね」
お医者様の言葉に、ルシアナとお母様が安堵の表情を浮かべている。お昼前、大荷物を抱えたレオがやって来た。
どんどん私の部屋の隣に荷物を運んでいくレオ。さらに、私の部屋の荷物もレオの反対側の部屋に運ばれていく。
確かにガラスが割られてしまったから、窓の修理が必要だけれど、窓ガラスの修理だけでどうして荷物まで出す必要があるのかしら?
しばらくすると、レオが私の方にやって来た。
「ミシェル、とりあえずこれを付けていろ」
そう言うと、首にチョーカー、腕にはブレスレットを付けられた。レオの髪の色と同じ、赤色だ。
「レオ、ありがとう。可愛いチョーカーとブレスレットね」
「気に入ったか?実はそれ、お前の居場所が特定できる器具が付いているんだ!これで、ミシェルがどこにいるのかすぐわかるからな」
にっこり笑うレオ。
「そうそう、今日から俺もこの家で暮らす事になった。お前の部屋は改装するから、とりあえずこの部屋を使え」
レオに案内されたのは、さっき私の荷物が運ばれていた部屋だ。なぜか外側の扉には、物凄く丈夫な南京錠が付いているのだが…
中に入ると、以前使っていた部屋と同じ配列でベッドや棚が設置されていた。でも…
「レオ、どうして窓が板で打ち付けられているの?これじゃあ、窓の外が見られないわ」
窓という窓、全てが頑丈な板で打ち付けられていたのだ。
「お前なぁ、もう忘れたのかよ。窓から奴らに侵入されて連れ去られたんだろう!だから、窓を塞いだんだよ!また連れ去られると大変だからな」
満足そうな表情を浮かべるレオ。
「窓の事は分かったわ!でも、何でこの部屋の扉の外側に南京錠の鍵が付いているの?あんなもの必要ないわ!」
「あのな、もしも屋敷内にお前を狙う誰かが押し入ったらどうするんだよ!今回は窓からだったが、扉から侵入するかもしれないだろう!とにかく、お前は一度連れ去られているんだ!俺のやる事に文句を言う権利はない!わかったな!そうそう、南京錠の鍵は俺が持っているから、夜はメイドたちも勝手に入れない。用事がある時は、あの扉を使って俺の部屋を訪ねて来い」
ふとレオが指さす方に目をやると、簡易の扉が付いていた。そう言えば、さっきガンガン大きな音を立てていたわ。まさかこの扉を取り付けていたのか…
「とにかく、俺のやる事に文句を言うな!もし俺の言う事を守らなかったら、罰として鎖で繋ぐからそのつもりで!」
「ちょっと、レオ。いくら何でもやりすぎじゃない!そんな事しなくても、私は大丈夫よ!」
抗議の声を上げたものの
「うるさい!連れ去られたくせに、グチグチ言うな!とにかく、ユーグラテスがこの国に居る限り油断できない。お前だって、あんな思いはもうしたくないだろう?」
う…確かにもう二度とあんな思いはしたくない。
「分かったわ…」
今回もレオに助けられたし、言う事を聞いておくか。でもお父様がこんな事、許すとは思えないのだけれど…
案の定、夜帰宅したお父様が、レオに文句を言った。
「レオ、これはどういうつもりだ!私が居ない間になんて事をしてくれたんだ!」
「うるさいな!肝心な時に役立たずだったくせに!とにかく、ミシェルを守る為だ!公爵だって、もう二度とあんな思いはしたくないだろう?」
レオの言葉に考え込むお父様。
「分かった…でも、くれぐれもミシェルに手を出すなよ!」
「分かっているよ!とにかく俺は、ミシェルを守りたいだけだから安心して欲しい」
レオの言葉に、少し不満げではあるが納得したお父様。
そして、この日からレオとの生活が始まったのであった。もちろん、厳しい監視付きで…
~あとがき~
次回、最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
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