第73話 ミシェルを救出に行こう~レオ視点~
ミシェルが居なくなって、3日が経とうとしていた。この日もミシェルの手掛かりは全く見つからない。
そしてミューティング公爵家には、父上・アレックス兄さん・キース兄さん・王太子・ガーディアン侯爵・シュミナ嬢・ジル・さらにディカルド副団長も集まっている。
「これだけ色々と探して見つからないとなると、もしかしてもう王都にはいないのかもしれない。明日から王都以外の街も捜索しよう」
「そうだな、それがいい」
俺の隣で父上たちが明日からの捜索方法について相談していた。ちなみにミシェルの父でもあるミューティング公爵は寝込んでしまい、全く使い物にならない。
「レオ、お前何でミシェルに居場所が分かる器具か何かを付けさせておかなかったんだよ。いつも無駄に嫉妬深いくせに、こう言うところが抜けているんだよ、お前は!」
「止めろ、キース。今レオが一番辛いんだ!大体、いくら婚約者だからって、そんなもの令嬢に付けられる訳ないだろう」
アレックス兄さんが俺を庇ってくれた。でも…
「いいや、キース兄さんの言う通りだ。今回ミシェルが連れ去られたのは、全て俺の不注意だ!そうだ、ミシェルが見つかったら、ミシェルの部屋の窓を全て取り壊そう。それで、ミシェルの居場所が分かる器具を付けさせて…そうだ、部屋には頑丈な鍵を付けよう。それから、ミシェルには鎖を付けておこう。それから…」
「レオ、落ち着け!いくら何でもやりすぎだ!」
アレックス兄さんに止められた。でも、これくらいしないとミシェルは守れない。それに、俺が心配でたまらないんだ。
ふと女性陣の方を見ると、シュミナ嬢が玄関から動かないチャチャを広間に連れて来ていた。
「チャチャ、あなたずっとご飯を食べていないでしょう。お願い、食べて!ミシェルが帰ってきた時、やせ細ったあなたを見たら、きっとショックを受けるわ」
そう言ってチャチャにご飯をやるが、全く食べない。
「そうだ、これならどう?」
シュミナ嬢がチャチャの大好きなおやつを見せるが、ニオイを嗅ぐだけで、全く食べようとしない。それどころか、尻尾を下げてトボトボと玄関に戻って行く。
チャチャ…
その時だった。
急にチャチャが耳をぴくっと立てると、ものすごい勢いで走り出した。
「キャンキャン」
ガリガリ
「キャンキャンキャン」
ガリガリガリ
「一体どうしたんだ?」
あまりの豹変ぶりに、皆チャチャのいる玄関へと向かった。
ドアに向かって吠えながらガリガリひっかくチャチャ。尋常ではない程必死にドアをひっかく。もしかして、こいつ!
そう思い、チャチャに話しかけた。
「お前、もしかしてミシェルの居場所が分かったのか?」
「キャンキャンキャン」
俺の問いかけに吠えるチャチャ。急いでドアを開けると、物凄いスピードで走り出した。
「待て、チャチャ!」
チャチャを追いかけようとした瞬間、アレックス兄さんに止められた。
「落ち着けレオ。相手は犬だぞ!大体今まで何の反応も示さなかったんだ!ただの気まぐれかもしれない」
「たとえそうだとしても、俺はチャチャに懸けたい!とにかくチャチャの後を追うから」
アレックス兄さんの腕を振り切り、チャチャを追いかける。少し走ると、チャチャが待っていた。俺の姿を見て、再び走り出すチャチャ。必死に追いかけるが、あいつ、いくら何でも早すぎるだろう。
あまりのスピードに付いて行けない。
「ハーハー、チャチャ。待て…」
その時だった。
「レオ、これに乗れ」
やって来たのは馬に乗っているジルだ。後ろには王太子とアレックス兄さん、キース兄さん、ディカルド副団長もいる。さらに、多くの護衛騎士たちも付いて来ている。
「ありがとう、ジル」
俺がジルの後ろに乗ったのを確認すると、再び走り出すチャチャ。途中立ち止まっては、何かを確認するチャチャ。一体何を確認しているんだ?しばらく走ると、沢山の倉庫が並んでいる場所についた。倉庫の近くには、いくつもの民家が立ち並んでいる。
確かここは、食べ物などを各街に運ぶために集められている大きな倉庫だ。そしてこの倉庫で働いている者達が、近くに住んでいる。そのうちの1軒の民家の前で止まったチャチャは、「キャンキャン」と吠えて、扉をひっかき始めた。
「ここにミシェルが居るのか?」
俺の問いかけを無視し、扉をひっかき続けるチャチャ。
扉に手をかけると、開いた!
「キャンキャン」
吠えながら部屋に入って行くチャチャ。
「何だこの犬は!それに君たちはいったい何者なんだ?」
そこには男性と女性が1人ずついた。どうやら市民の様だが…
「突然すみません、実は女性を探しているのですが?」
「女性?」
そう言った男は、一瞬目を泳がせた。なんだか怪しいぞ。
なぜか本棚の前で吠えるチャチャ。
「チャチャ、この本棚が気になるのか?」
俺が本棚に近づくと
「ここには何もありませんよ。あなた達、一体何なんですか?人の家に勝手に入って来て。ほら、出て行って下さい!」
そう言って俺たちを追いだそうとする男。
「夜分遅くにすみません。実は公爵令嬢が何者かに攫われたのです。この辺に居ると言う噂を耳にしまして。申し訳ないが、少し部屋の中を見せていただけますか?」
そう言ったのは、俺がお世話になっている団長だ!
「あの…でも…」
歯切れの悪い男を無視し、本棚の前に立った。この本棚に何かあるのか?そう思い、本棚を押すが特に変わった様子はない。次は横にずらすと、いとも簡単に動いた。そして、本棚の下には、地下に繋がる通路が現れた。
「キャンキャン」
チャチャが地下に向かって降りていく。俺たちも階段を急いで降りる。
「何なんだお前たちは!」
ここにも何人かの男が居た。
迷わず奥の部屋に向かうチャチャ。
「キャンキャン」
ガリガリ
急いでチャチャのところまで向かうと、部屋の奥から
「チャチャなの?助けに来てくれたのね」
この声は、ミシェルだ!
「ミシェル、大丈夫か?今助ける」
ふとドアを見ると、南京錠が付いている。クソ!
「チャチャ、少し下がっていろ!」
チャチャに下がらせ、ドアに向かって思いっきり体当たりをする。その瞬間、ドアが外れた。
「キャンキャン」
物凄い勢いで部屋に入ってくチャチャ。
俺も急いで部屋に入ると、一足先に入ったチャチャがミシェルに抱きしめられていた。チャチャも尻尾をブンブン振って、ミシェルの顔を舐めている。
「ミシェル、無事か?」
俺の顔を見ると
「レオ、怖かったよぅ」
そう言うと、泣き出してしまった。
そんなミシェルをギューッと抱きしめた。ミシェルも必死に抱き着いて来る。
「ミシェル、助けるのが遅くなってごめんな。でも、無事でよかった」
「レオ、助けに来てくれてありがとう。絶対レオなら来てくれるって思ったの。チャチャもありがとう。あなたのおかげよ!」
そう言って再びチャチャを抱きしめるミシェル。とにかくミシェルが無事でよかった。もう二度とミシェルを手放さない!ミシェルをギューッと抱きしめ、そう誓ったレオであった。
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