第37話 :第二王子が会いに来ました

王都に戻ってから3週間が経った。いよいよ来週は貴族学院の入学式だ。ちなみにこの貴族学院、13歳になった貴族や王族が、3年かけて今後貴族社会で生きていく上で必要な知識やマナーを身につける為の学院だ。




もちろん貴族学院を通して、王族や貴族通しの絆を深め合っていくと言うのも狙いの1つだ。




基本的に貴族と王族以外は入学できない。ただ、貴族なら必ず入学しなければいけない訳ではなく、経済的な理由で入学しない人や、途中で中退する人もいる。




ちなみにルシアナは貴族学院には行かず、ずっとメイドの仕事をしてくれている。




貴族学院に入学したら学業で忙しくなる為、こうやってのんびり屋敷で過ごせるのも後わずかだ。




今日もシュミナが遊びに来てくれているので、2人でお菓子を作った後、中庭でティータイムだ。




「ミシェル、いよいよ来週は貴族学院の入学式ね。なんだかドキドキするわ」




「そうね、私は毎日第二王子と顔を会わせないといけないと思うと、正直憂鬱だわ」




そう言ってため息を付いた。




「確かにね。でも、スタンディーフォン公爵令息様や私もいるし、もちろんジル様もミシェルの事を気に掛けているし、大丈夫よ。ただ、まだ第二王子様はあなたの事を諦めていない様なのよね。さすがに往生際が悪いわ」




「シュミナ、それ本当?どうしてそこまで私にこだわるのかしら?正直、迷惑以外何者でもないのに…」




「確かにね。でも1度目の生の時は、ミューティング公爵家を陥れてでも、ミシェルとの婚約破棄をしたのでしょう?きっと手段を択ばない性格なのよ。引き続き、警戒していった方が良さそうね」




確かにあの王子なら、何をしでかすかわからない。増々気が重くなってきたわ。




「そうそう、ミシェル。もう制服には袖を通した?」




「もちろんよ。やっぱりチェックのリボンにして正解だったわ。めちゃくちゃ可愛いものね」




貴族学院の制服のリボンは、無地の赤、水玉模様、チェック柄の3種類から選ぶことが出来る。シュミナと相談して、チェック柄を選んだのだ。




「確かに可愛いわよね。ねえ、ミシェル。クラス分けってどんな感じなの?1度目の生の時どうだった?」






「クラスか。貴族学院のクラスは全部で3クラスあったわ。確か身分が高い順にクラスが決まっていた気がする。だから私とレオ、第二王子は同じクラスだったのだけれど…」




正直1度目の生の時、シュミナがどのクラスだったか覚えていない。




「なるほどね。それなら私とジル様も同じクラスの可能性が高いわ。それにしても、第二王子様と同じクラスなのね…」




そう言って苦笑いをするシュミナ。その後は気を取り直して、シュミナと学院に入学後何をしたいかについて話した。




やっぱり、街に出て一緒にショッピングにも行きたいし、レオとジル様と4人でデートもしたい。そんな話で盛り上がった。




「それじゃあミシェル。そろそろ帰るわね」




「もうそんな時間なの?楽しい時間はあっという間ね」




シュミナを見送る為、チャチャと一緒に門の所までやって来た。




「それじゃあミシェル。また遊びに来るわ」




「ええ、待っているわね」




馬車から手を振ってくれるシュミナに手を振り返す。




その時だった。




「やあ、ミシェル嬢。久しぶりだね。しばらく見ない間に、また一段と美しく成長したんだね」




どこからともなく現れた第二王子。一気に体が凍り付く。




「第二王子様、どうしてここに居らっしゃるのですか?」




「どうしても君に会いたくてね。来ちゃった。ずっと会いたかったんだよ、ミシェル嬢」




そう言ってにっこり笑う第二王子。少しずつ私の方に近づいて来る。嫌、来ないで!そう叫びたいのに、言葉が出ない。




「ウ~キャンキャンキャンキャン」




私の腕から抜け出したチャチャが、第二王子を威嚇している。




「何だこの犬!あっちに行け!」




そう言ってチャチャを蹴り飛ばした第二王子。




「キャイン」




「チャチャ、大丈夫?第二王子様、この子は私の大切な家族です。乱暴な事はお止めください!」




チャチャを抱きかかえ、第二王子を睨みつけた。幸い怪我はしていない様だ。




「へ~、怒った顔も可愛いね!でも僕は、君が怯えた顔が一番好きだな。そう言えば、来週から貴族学院が始まるね。毎日君に会えると思うと、嬉しいよ」




何言っているの?この人。




「第二王子様、ご存じかとは存じますが、私はスタンディーフォン公爵家の3男、レオと正式に婚約いたしました。婚約者のいる令嬢の元に訪ねて来るのは、いかがなものかと思いますが」




この際なので、第二王子にはっきり伝えた。本当は、”迷惑なのよ”くらい言っても良かったが、一応王族なのでそこは我慢した。




「知っているよ。でも、レオとはまだ結婚をした訳ではないのだろう?もしかしたら、何らかの理由で婚約を解消するかもしれないしね」




そう言ってクスクス笑う第二王子。何なのよこいつ。




「ねえ、ミシェル嬢。僕はどうしても君が欲しいんだよ。たとえレオと婚約したとしても、絶対に君を諦めないからね」




そう言うと、私の頬に触れた第二王子。




「イヤ、触らないで」




そう言って第二王子の手を振り払った。




「ミシェル嬢の肌は本当に柔らかいね。レオも触れているのだろう?それなら、僕も触れても問題ないよ」




この人は何を言っているの?頭大丈夫?さすがに怖くなって、第二王子から距離を取る。




「そうだよ、その顔!やっぱりミシェル嬢は怯えた顔が一番美しいね」




そう言うと、また私の方へと近づいて来た。嫌、来ないで!その時だった!




「ユーグラテス、ミシェルに触るな!」




この声は、レオだ!そう思った瞬間、後ろからレオに抱きしめられた。




「ユーグラテス、どういうつもりだ。ミシェルは俺の婚約者だぞ!」




「うん、知っているよ。でも、どうしても会いたくて来ちゃった」




「ふざけるな!さっさと帰れ。今日のところは見逃してやるが、次は無いからな!二度とミシェルに触れるな!」




レオが第二王子を怒鳴りつけている。




「わかったよ。今日は帰るよ。それじゃあ、ミシェル嬢。また来週ね。僕がさっき言った事、忘れないでね」




そう言って去っていく第二王子。第二王子が見えなくなると、レオの方を振り向かされた。




「ミシェル、どういう事だよ!なんで第二王子とお前が会っているんだ!」




この顔は、かなり怒っている時の顔だ。




「シュミナを門まで見送りに来たら、なぜか第二王子が居たのよ。会いたくてあった訳じゃないわ」




そう、決して会いたくてあった訳ではない!




「だからって、メイドも連れずに1人で門の所まで来るなんて。そもそも、お前の家の門番は何をしているんだよ!」




そう言って門番を睨んでいるレオ。門番も第二王子に意見出来る訳がないのだが…物凄く申し訳なさそうに、頭を下げている。




「レオ、ごめんなさい。私が悪いのよ。私の行動が軽率だったって、反省している。次からはメイドを伴って歩くようにするわ。だからそんなに怒らないで。そうだわ、チャチャが私を守ろうとして、第二王子に蹴られたの。見たところ怪我はなさそうだけれど」




「何だって。チャチャがか?」




私に抱かれていたチャチャの体をチェックするレオ。




「確かに怪我はないようだが、念のため医者に見せよう。チャチャ、お前ミシェルと守ろうとしたのか。えらいぞ!」




そう言ってチャチャの頭を優しく撫でるレオ。




その後、チャチャを医者に見せたが、異常はなかった様だ。何だかんだで一番チャチャを心配していたルシアナ。しばらくチャチャの側から離れなかった。




ホッとしたのも束の間。まだ怒りが収まらないレオに




「ミシェル、お前は学院に入学するまでは外出禁止だからな!いいな!わかったな!」




と、外出禁止令を出されてしまった。




その後ルシアナにも叱られたし、踏んだり蹴ったりな1日だった。




それにしても第二王子、気持ち悪かったわ。“絶対君を諦めないから”あの言葉が、頭から離れない。




来週から学院生活が始まる。私、平和に学院生活を送ることが出来るのかしら…




第二王子に会って、一気に不安になるミシェルであった。



~あとがき~

さらに気持ち悪さがパワーアップした第二王子(;^_^A


チャチャを蹴るなんて、酷い奴ですヽ(`Д´)ノプンプン


次回、レオの1回目の生の話を挟んで、学院編に入ります。


どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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