番外編 1度目の生~レオ視点~

※ストーリー上にはあまり関係ないのですが、どうしても書きたくて書きました!興味が無い人はスルーしてもらっても大丈夫です!



♢♦♢

小さい時から大好きだったミシェル。そんなミシェルは、我が儘で傲慢で、見た目も豚の様に太っている。




それでも、俺はミシェルが大好きだ。この気持ちが色あせる事はないだろう。そもそも、ミシェルは他の貴族から嫌われている。だから、きっと将来は俺のお嫁さんになるはず。ずっとそう思っていた。




それなのに…




「何だって!ミシェルがユーグラテスと婚約しただって!」




あり得ない!あの我が儘で傲慢なミシェルと、見た目が異常なほど美しいユーグラテスが婚約するなんて…




詳しく話を聞いてみたら、どうやら先日王宮で開かれたパーティーで、ミシェルがユーグラテスに一目ぼれをした様だ。




それで、公爵に頼んで婚約者にしてもらったらしい。ユーグラテスは自分の意見をあまり言わない、だからきっと断れなかったのだろう。




何て事だ…


ミシェルは俺のものになるはずだったのに…




そもそも俺は何度もおじさんに“ミシェルと結婚したい、婚約者にして欲しい”と頼んだのに、おじさんがそれを聞き入れてくれなかったんだ!




クソ…




決まった事は仕方がない、分かっているが、どうしても諦めきれない。


そんな思いから、何度もミシェルに「ユーグラテスとの婚約を考え直せ」そう伝えたが、もちろん聞くわけがない。




そしてミシェルは、どんどん我が儘になって行った。学院に入学してからは、とにかくユーグラテスに近づく女共を片っ端から排除していく。




そんなミシェルに、ユーグラテスはほとほと愛想をつかしている様だった。それ…なら、俺にミシェルをくれよ!そう何度も思ったが、きっとユーグラテスの性格ではそんな事は出来ないだろう。




ミシェルを俺のものに出来ないなら、せめて騎士として彼女を守ろう。そう思い、とにかく俺は稽古に没頭した。ミシェルへの気持ちを断ち切るかのように…




そんな俺の頑張りが認められたのか、学院を卒業すると同時に、副騎士団長になる事が決まった。




そして卒業を間近に控えたある日。なんとミシェルの父親が、国家反逆罪の罪で投獄されてしまった。もちろん、家族でもあるミシェルもだ。




あり得ない!おじさんがそんな事をするなんて…




家でもその話題で持ちきりだ。




「ミューティング公爵は誰よりも陛下に忠誠を誓っていた男だ。そんな男が国家反逆罪なんてあり得ない!たぶん、誰かに嵌められたのだろう」




「父上、誰かって誰だよ!」




俺は我を忘れて父上に詰め寄った。




「それは分からない。でもこのまま行けば、ミューティング公爵家は一族皆殺しだろうな…」




「そんな…あなた、何とかならないの?」




母上も父上に詰め寄っている。




「無理だ…私にもどうする事も出来ない…」




頭を抱える父上。側で母上が泣き崩れている。




そうだ、ミシェルの婚約者でもあるこの国の第二王子、ユーグラテスならミシェル達を助けられるかもしれない!




急いで王宮へと向かった。




「ユーグラテス、お前に頼みがあるんだ!」




王宮に着くと、すぐに第二王子のユーグラテスを呼び出してもらった。




「どうしたんだい?レオ。そんなに慌てて」




にっこり微笑むユーグラテス。こいつ、婚約者が投獄されたって言うのに、何でそんなに穏やかな顔をしていられるんだよ。確かにミシェルの事は嫌っていた様だが、それでもお前の婚約者だろう!ユーグラテスの表情に、怒りを覚えた。




でも、今はそれどころじゃない。




「どうやらミューティング公爵が何者かに嵌められ、国家反逆罪で投獄された。もちろん、ミシェルもだ!頼む、ユーグラテス。何とかミシェルを助けてくれ」




必死にユーグラテスに頭を下げた。




「レオ、それは出来ないよ。そもそも、彼らを罠にかけたのは僕だからね」




何だって?こいつ、今何て言ったんだ?




「ユーグラテス。どういう事だ!」




「僕はね、ミシェルが大っ嫌いだったんだ。それなのに公爵の奴、僕をあの女の婚約者にしたんだよ。父上の右腕でもある公爵に逆らえなかった父上が、兄上の反対を押し切って無理やり婚約者にしたんだ。そのせいで、僕はずっと息苦しい生活を送る羽目になったんだよ。だから兄上に協力してもらって、ミューティング公爵家が謀反を起こしている様に見せかけたって訳」






クスクス笑うユーグラテス。




「そうそう、近々兄上が国王になる事が決まったよ。人事も一掃される。そうだ、君の兄上のアレックスも重役として入れてあげるよ」




「ふざけるな!ミシェルを何だと思っているんだ!」




怒りに身を任せ、ユーグラテスにつかみかかった。




「そんなに怒らないでよ、レオ。そう言えば君は副騎士団長になる事が決まったんだってね。僕はね、君の事を信用しているんだ。どうだい?僕の護衛にならないかい?君なら安心して任せられるよ。そうそう、言い忘れていた。ミシェルとその家族は、明日公開処刑されることが決まったよ。楽しみだね!」




今までにないほど清々しい顔で笑うユーグラテス。




ふざけるな!ミシェルが明日殺されるだと!


ユーグラテスの言葉を聞き、頭の中が真っ白になった。そのまま何も考えられずに、部屋から出た。




とにかく、ミシェルだけでも助け出さないと…


帰りの馬車の中で必死に考えた。とにかく、家族には迷惑を掛けられない。俺を勘当してもらおう。




そして、ミシェルを助けに行こう。隣国まで逃げて、そこで2人で暮らそう。




そうと決まれば早くしないと。






「父上、俺を勘当してください」




俺の言葉を聞き、目を丸くする父上。




「レオ、どういう事だ!」




「俺は今からミシェルを助けに行く。でも、犯罪者を連れ出すという事は、重罪だ!この家にも火の粉が掛かる。だから、俺を勘当して欲しい」




俺の言葉に俯いてしばらく考え込む父上。そして、ゆっくり顔を上げた。




「わかったよ。お前は昔からミシェルが大好きだったものな!レオ、ミシェルを助けだせ。そして、絶対に幸せになれよ!今から急いで書類を作って提出してくる。少し待っていてくれ」






そう言うと、父上は急いで書類を作り、提出しに行った。




「レオ、これでお前は家とは関係なくなった。思う存分暴れて来い」




「ありがとう、父上!」




すっかり日が暮れてしまった。でも、夜の方が逃げるには好都合だ。急いで王宮の地下牢へと向かった。何人かの看守を気絶させ、鍵を奪い取り何とかミシェルの元へと駆け付けた。




牢に入れられていたミシェルは、泣きはらしたのか目が真っ赤だ。それに少しやつれている。急いで鍵を開け、ミシェルを連れ出した。






「レオ、お願い。こんな事は止めて。あなたにまで迷惑が掛かるわ」




そう叫ぶミシェル。ミシェルは根は良い子なんだ。それなのに、ユーグラテスの野郎。怒りが込み上げてくる。




「俺の事は気にするな。とにかく、このまま逃げて隣国まで行くぞ!隣国で2人で暮らそう」




俺の言葉に嬉しそうに頷くミシェル。やっとミシェルを手に入れられる。そう思ったら、嬉しくてたまらない。




そんな俺たちに立ちはだかったのは、やはりユーグラテスだ。こいつだけは許せない!




ミシェルを下がらせ、騎士たちと戦う。でも、さすがに人数が多すぎる。




「ミシェル、今のうちにお前だけでも逃げろ!」




そう叫んだが、俺を置いて逃げられないと言うミシェル。




その時だった。


1人の騎士が俺の脇腹を貫いた。しまった!そう思った時には時すでに遅し。次々と俺に切りかかって来る騎士たち。




俺はもうダメだ。せめてミシェルだけでも!




倒れこむ俺に、泣きながらすがるミシェル。その涙は、今まで見たどのミシェルよりも美しかった。




「ミシェル、お前だけでも…逃げろ…」




俺の大切なミシェル。守ってやれなくて、ごめん!それでも、お前に看取られながら死ねるなんて、俺にとっては幸せな事だ。ミシェル、お前に会えてよかった。もし来世というものが存在するなら、次はきっとお前を幸せしたい…




そう願いながら、俺は息を引き取ったのであった。




~あとがき~

レオはずっと一途にミシェルだけを思い続けています。


今までいくつもの作品を書いてきましたが、彼が一番誰よりも一途だと思っています!


次回、本編に戻ります!


よろしくお願いいたしますm(__)m

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