第26話 領地へ向かいます
翌朝、領地に向かう為にルシアナとエレナに手伝ってもらい準備をした。ちなみにルシアナとエレナも今回、領地に一緒に付いて来てくれる事になった。
この2人が一緒なら心強い。貴族学院に入学する13歳までの約2年半、領地で過ごすのだ。しばらくここに戻って来る事も無い。そう考えると、ジュワっと涙が込み上げてきた。
いけないわ、こんな事で泣いたら!
「お嬢様、そろそろレオ様とシュミナ嬢に挨拶に行かれた方が宜しいのでは?」
「そうね、そろそろ行って来るわ」
まず最初に向かったのは、レオの家だ。レオは騎士団の稽古があるから、早く行かないと会えないまま領地に行く事になってしまう。
急いでスタンディーフォン公爵家に向かった。どうやら間に合った様で、まだ家にいたレオ。
「実は私、今から領地に行く事になったの。だから、挨拶を言いに来たのよ。レオ、しばらく会えなくなるけれど、私の事忘れないでね」
2年半も離れ離れになるのだ。もし私がいない間に、好きな人が出来たらどうしよう。そう思ったら、不安で仕方がないのだ。
「お前の事忘れる訳ないだろう!おじさんから話は聞いたよ。しばらく寂しいかもしれないが、俺もちょくちょく遊びに行くからさ」
そう言って微笑んでくれたレオ。
「ありがとう、レオ。シュミナにも挨拶に行かないといけないから、そろそろ行くわね」
そう言って馬車に乗り込もうとした時
「ミシェル!」
レオに名前を呼ばれ振り返ると、おもいっきり抱きしめられた。温かいレオの温もり。しばらくはこの温もりも感じられないのね。そう思ったら、無意識に自分からレオの背中に手を回していた。
「ミシェル、いいか!必ず迎えに行くから、待っていろよ!いいな」
そう言うと、私を解放したレオ。
迎えに行く?レオの行った事の意味がよくわからなかったけれど、とりあえずレオと別れて馬車へと乗り込んだ。
ずっと手を振ってくれているレオに、私も手を振り返す。次はシュミナの家だ。
急にやって来た私を、温かく迎えてくれたシュミナ。
「シュミナ、実は私、領地に行く事になったの。王妃様がかなりしつこい様で、お父様がしばらく領地に隠れているのがいいだろうって事になって」
「そんな…どれくらい領地に居るの?」
明らかに動揺するシュミナ。
「貴族学院に入学するまでの2年半よ。さすがに長期間領地に居れば、王妃様も諦めてくれるだろうって、お父様が。早速今から領地に行って来るわ。だから、挨拶に来たのよ」
「ちょっと、めちゃくちゃ急じゃない!出発が今日だなんて…それも、2年半も」
そう言うと、泣き出してしまったシュミナ。その姿を見て、私も泣いてしまった。2人でしばらく泣いた後、口を開いたのはシュミナだ。
「ごめんね、ちょっとびっくりして!でも1度目の生の話を聞いた限り、第二王子様はかなりヤバそうだものね。下手に王都に居るより、領地に居た方が確実に安全だもの。私、手紙を書くわ。それから、王都の様子やスタンディーフォン公爵令息様の事も伝えるわ。だからミシェル、安心して領地に行って来て」
泣きながらもそう言って微笑んでくれたシュミナ。
「ありがとう!シュミナ。ねえ、もしよかったら、領地に遊びに来て!シュミナが来てくれたら、きっと楽しく過ごせるわ」
「ええ、絶対行くわ!ミシェルの家の領地か。考えただけで、楽しそうね」
「お嬢様、そろそろお時間です」
ルシアナに声を掛けられた。本当はもっとシュミナと話したいけれど、仕方がないわね。
「それじゃあシュミナ。またね。おじ様やおば様、ディカルド様にもよろしく伝えておいてね」
「ええ、伝えておくわ。ミシェル、元気でね。絶対に手紙を書くし、遊びにも行くわ」
「待っているわよ、シュミナ。絶対に来てね」
最後に2人で抱き合ってから、馬車へと乗り込んだ。2年半我慢すれば、また会える。そう思っても、寂しいものは寂しいのだ。気が付くと、目から大量の涙が溢れていた。
家に着くと、お父様とお母様が待っていた。今回初めて領地に行く事もあり、最初はお母様も付いて来てくれる事なっている。
「それじゃあ、お父様。行って来るわね」
「ミシェル。ああ、私の可愛いミシェル!本当に行ってしまうんだね…」
そう言ってシクシク泣き出したお父様。隣でお母様が苦笑いをしている。
「お父様、一生会えない訳ではないわ。2年半すればこっちに戻って来るし。それに、お父様も時間を見つけて会いに来てくれるのでしょう?」
「もちろんだ!そうだ、やっぱりミシェルが心配だ。私も付いて行くよ」
そう言って馬車に乗り込んだお父様。
「あなた!バカな事を言うのはお止めください!ほら、今日も王宮から呼び出されているのでしょう?早く支度をしないと!」
お母様に一喝され、渋々馬車から降りるお父様。入れ替わりに私とお母様が馬車へと乗り込む。
「それじゃあお父様、元気でね。行って来ます」
「私の可愛いミシェル。本当に行ってしまうのかい?」
これはエンドレスに続くパターンかしら。面倒ね。お母様も同じ事を思ったのか、さっさと馬車を出す様指示を出している。
動き出した馬車に焦るお父様。
「待ってくれ、まだミシェルとの別れが済んでいない」
そう叫ぶお父様に
「お父様、行って来ます。しっかり仕事をして下さいね」
そう伝えておいた。何だかんだで一番面倒なのは、お父様の様だ。
「本当にあの人は、ミシェルの事になると目の色を変えるのだから」
そう言って呆れるお母様。
そんなお母様と馬車に揺られながら、領地を目指す。領地までは丸2日かかる。1日目も2日目も、大きなホテルのスウィートルームに泊まった。実はお泊りは初めてなのだ。それにいつもは1人で寝ているけれど、ホテルではお母様と一緒に寝た。
「こうやってお母様と寝るの、いつぶりかしら?」
「そうね、ミシェルが3歳くらいの時には1人で寝ていたからね。赤ちゃんの時以来かしら」
そう言って笑ったお母様。こうやってお母様と一緒に寝られるなら、領地に向かうのも悪くない。
翌日、やっと領地に着いた。
「奥様、お嬢様。よくお越しいただきました」
領地の使用人一同が迎えてくれた。
「皆元気そうね。しばらく娘がお世話になるけれど、よろしくね」
どうやらメイド長みたいな人と話しているお母様。このメイド長、お母様と同じ年くらいかしら。
「初めまして、ミシェルと申します。今日からどうぞよろしくお願いいたします」
メイド長に頭を下げた。
「まあまあ、私の様な者にまでご丁寧にご挨拶していただき、ありがとうございます。私はメイド長の、メラと申します。今日からお嬢様が快適に生活できるよう、目いっぱい務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
そう言ってにっこり笑ったメラ。
「メラは小さい頃から、私の専属メイドをしてくれていた人なのよ。とっても良い人だから、きっとミシェルも気に入るわ」
「さあ、立ち話も何ですから中へどうぞ」
メラに案内され、屋敷の中に入った。1度目の生の時から考えても、今回初めて来る領地。見るものすべてが新鮮だ。
さすが公爵家の屋敷。王都の屋敷よりも立派な造りをしている。メラに屋敷内を一通り案内してもらった。
「ここがお嬢様のお部屋ですよ。今日はお疲れでしょう。ゆっくりお休みになって下さいね」
そう言って、メラは出て行った。
今日から2年半お世話になる私の部屋か。有難い事に私の好みに合わせて、可愛らしい家具やぬいぐるみが準備されている。
ふと窓の外を見ると、美しい緑が広がっていた。王都と違い、ここは大自然に囲まれたのどかな場所だ。窓を開けた瞬間、それはそれは美味しい空気が流れ込んで来た。
嫌だ嫌だと思っていたけれど、来てみると良いところね。
これから始まる領地での生活が、楽しみになってきたミシェルであった。
~あとがき~
いつもお読みいただき、ありがとうございます(*'▽')
しばらく領地での生活が続きます。
よろしくお願いしますm(__)m
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