第23話 やっぱりそう来ましたか!

夕方、気を取り直して小説を読んでいると、ルシアナがやってきた。




「お嬢様、旦那様がお呼びです。居間までお越しください」




さっきまで王宮に行っていたお父様からの呼び出し。嫌な予感しかしないわ。




重い足取りで、お父様の待つ居間へと向かう。




「お父様、お呼びですか?」




居間に入ると、お父様とお母様が待っていた。増々嫌な予感しかしない。




「ミシェル、大事な話があるんだ。そこに座りなさい」




お父様とお母様の向かいの席に座った。




「実は今日、王妃に呼ばれてね。お前とユーグラテス第二王子を結婚させたいと言われたんだ」




さっきシュミナと話していた事が、こんなに早く現実になるなんて…




「ミシェル、王家からの申し込みではあるが、私はお前の意志を尊重したいと思っているんだ。どうする?嫌なら断ってもいいんだよ」




有難い事に、お父様は私の意志を尊重してくれると言ってくれた。




「お父様、私はいずれ婿を取り、この家を継ぎます。そのため、時間を掛けてゆっくり婚約者を選びたいと思っているの。今回の申し出は有り難いのですが、どうかお断りして頂けると嬉しいわ」




第二王子と婚約なんて、ぜっっっったいにイヤーーー!というのが本音だが、さすがにそんな事は言えない。もっともらしい理由をならべ、断る事にした。






「わかったよ、ミシェルがそんな風に思ってくれているなんて思わなかった。それにしても、いつの間にかミシェルも随分大人になったね。焦らなくていいから、ゆっくり婚約者を決めればいい!王妃にはしっかり断りを入れておくから」






「ありがとう、お父様!」




よかった、これでひとまず安心ね。




その後は家族3人で夕食を取る為、食堂へと向かおうとした時だった。




「旦那様、お嬢様、レオ様が客間でお待ちですが、どういたしましょう」




「レオが来ているのかい?せっかくだから、一緒に食事をする様に伝えてくれるかい?」




すかさずお父様がメイドに指示を出す。




「待って、レオは私が迎えに行くわ。お父様もお母様も先に食堂に行って」




急いでレオが待つ客間へと向かった。




「レオ、いらっしゃい。今日はどうしたの?」




「昨日のお前、随分顔色が悪かったからな。心配で様子を見に来たんだよ。でも、元気そうでよかった」




どうやら私を心配して来てくれた様だ。相変わらずレオは優しい。




「レオ、晩ご飯食べていくでしょう?お父様もお母様も待っているわ。一緒に食堂に行きましょう」




レオの手を掴み、食堂へと連れて行く。私とレオが食堂に入った瞬間、ニヤニヤ顔のお母様。




「ミシェルとレオは本当に仲良しなのね」




そう言って笑っていた。その後は4人で雑談しながらご飯を食べた。正直、断る方向で話が進んでいるとはいえ、第二王子との婚約話が出た事に動揺していた私も、レオの顔を見たら少し安心した。




やっぱり私はレオと結婚したいし、レオの側に居たい。改めてそう思った。






翌日、早速お父様が断りを入れてくれる事になったのだが…




「ミシェル、王妃には断りを入れておいたよ。ただ…」




「ただ、どうしたの?お父様!」




物凄く難しい顔をしている。




「どうやら王妃はお前と第二王子との結婚を、諦めていないようでね。王妃がミシェルと2人きりでお茶をしたいと言っているんだよ」




ため息交じりに話すお父様。




「王妃様と2人きりだなんて、きっと嘘ね!第二王子様も絶対来るわよ。まあ、ミシェルは可愛いから第二王子様も気に入っちゃったのね」




お父様の隣でクスクス笑うお母様。何が“第二王子様も気に入っちゃったのね”よ。そんな恐ろしい事、さらっと言わないでよ!




「お父様、私絶対行きたくありません!どうしても行かなければいけないのですか?」




考えただけでも恐ろしい!私の目からは、恐怖で涙がポロポロと流れる。




「ミシェル!泣かないでおくれ!わかった、王妃にはミシェルは体調を崩していると言って、断ろう」




私の涙を見て、オロオロするお父様。お母様もびっくりして、私の背中をさすってくれた。




「とにかく、ミシェルは部屋で休みなさい!後はお父様が何とかするから大丈夫だ」




泣きじゃくる私を、お母様が部屋まで連れて行ってくれた。




「ミシェル、レオの話だと、あなたは第二王子様の事を随分怖がっている様ね。もしかして、第二王子様に何かされたの?」




お母様が真剣な顔で問いかけて来た。




「いいえ、特に何かされた訳ではないのよ。でも、どうしても第二王子様は無理なの」




第二王子のあの笑顔を思い出したら、また涙が込み上げてきた。






「ねえミシェル。あなたは婚約者の事をどう考えているの?お父様はゆっくり決めればいいと言っているけれど、家は由緒正しい公爵家よ!早い段階で婚約者を決めて、婚約者には少しずつ領地経営に関する勉強をしてもらわないといけないの。あなたも分かっているでしょう?」






確かに1度目の生の時、第二王子との婚約が内定してすぐ、第二王子は次期公爵になる為に、お父様から色々と学んでいた。その為、我が家にもよく出入りしていたわ。




そのせいで、お父様が謀反を起こしている様に、偽造工作されてしまったのだけれどね。






「ミシェル、あなたが思っている以上に、公爵家の当主の仕事は大変なのよ。第二王子様が嫌なら、他の人を早く見つけなさい。例えば、レオとかね」




にっこり笑うお母様。




「お母様は、私の気持ちを知っているの?」




ずっと気になっていた事を、お母様に投げかけた。




「当たり前でしょう。あなたの母親なのよ。どうしてお父様にその事を伝えないの?お父様にいえば、すぐにレオを婚約者にしてくれるわよ」




「そんな事をしたら、レオの気持ちはどうなるの?私は権力を使ってレオを手に入れたくはないの。お母様、お願い!お父様にはこの事を言わないで!」




私の言葉に、呆れ顔のお母様。




「ミシェル、あなたって子は、どうしてこんなに鈍い子になってしまったのかしら?まあいいわ、お父様には内緒にしておくわ。あの人も随分鈍いからね…ミシェル、お父様はあなた以上に恋愛に関しては鈍いのよ。だから、言いたいことははっきり言わないと伝わらないわ!」




鈍い?私が?


お母様の言っている事がよくわからないが、お父様はどうやら私の気持ちには気づいていないようで安心した。




確かにお母様の言う通り、婚約者の件はあまり先延ばしは出来ない様ね。悩み事が増えてしまい、頭を抱えるミシェルであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る