第22話 シュミナに全てを話しました
「送ってくれてありがとう、レオ」
レオに家まで送ってもらい、何とか無事パーティーから帰って来れた。
「ミシェル、大丈夫か?顔色が悪いぞ。ユーグラテスに何かされたのか?」
不安そうな顔のレオ。
「大丈夫よ。すぐにレオが来てくれたから」
「それならいいんだけどさ!とにかく、ユーグラテスにはあまり近づかない方がいい。それじゃあ、俺は帰るわ。また来るから」
そう言ってレオは帰って行った。正直頼まれても第二王子になんて近づきたくない。それにしても、どうして第二王子は、わざわざ私に話しかけてきたのかしら?全く理解できないわ。とにかく、今後は第二王子に近づかないようにしないと。
その日はかなり疲れていたせいか、晩ご飯を食べてすぐに眠ってしまった。
翌日
「お嬢様、シュミナ嬢がいらっしゃいましたよ」
「まあ、シュミナが!すぐに行くわ。今日はお天気がいいから、中庭にティーセットを準備してくれる?」
昨日の事をシュミナに話したいと思っていたのだ。来てくれてよかったわ。急いでシュミナの元へ向かった。
「シュミナ、おはよう。来てくれたのね」
「昨日の事が心配で来ちゃった。ごめんね、少し来るのが早かったかしら?」
「大丈夫よ、朝ごはんも食べ終わって1人で小説を読んでいた所だったから。今日は中庭でゆっくり話をしましょう。シュミナに色々と話したい事もあるし」
2人で手を繋いで、中庭へと向かった。
「それで、昨日はどうだったの?」
席に着くと、早速昨日の事を聞いて来るシュミナ。
「それがね、ずっとレオが側に居てくれたのだけれど、なぜか王妃様がやって来て、珍しいバラを見せてくれるって言うから、ついレオと離れて王妃様にくっ付いて行っちゃったの。しばらく王妃様とバラを見ていたのだけれど、なぜか途中で第二王子がやって来たのよ!」
思い出しただけでも鳥肌が立つ。
「ミシェル、どうしてスタンディーフォン公爵令息様から離れたのよ!」
シュミナにも怒られてしまった。
「レオも付いて来てくれようとしたのよ。でも王妃様が“女性だけで見に行きましょう”って言ったのよ。王妃様の誘いを、断れる訳ないじゃない」
いくら私が公爵家の令嬢だからって、さすがに王妃様の誘いを断るのは良くないと思ったのだ。
「確かにそうかもしれないけれど!それで、第二王子様とは何を話したの?」
「すぐにレオが助けに来てくれたから、ほとんど話はしていないの。あの男、なぜか私に触れようとしたのよ。本当に血の気が一気に引いたわよ!直前のところで、レオが来てくれたから良かったけれど。今思い出しただけでも、鳥肌が立つわ」
本当にあり得ない。私に触れようとするなんて。1度目の生の時は、私がすり寄って行っても、スッとかわしていたくせに!
「少し厄介なことになったわね。王妃様がわざわざスタンディーフォン公爵令息様から、あなたを引き離した事。そこに第二王子様が居たという事。その点を見ても、王妃様はあなたと第二王子様を婚約させたいのじゃないかしら?それに、第二王子様もミシェルに随分興味を持っている様だし」
「そんなの嫌よ!あの男と婚約だなんて、二度とごめんよ!」
しまった!つい興奮して叫んでしまった。私の言葉を聞き、明らかに顔をしかめるシュミナ。
「なんだか1度第二王子様と婚約していたみたいな言い草ね。ねえ、ミシェル。何か私に隠していない?正直、あなたがそこまで第二王子様を毛嫌いする理由が分からないの。先日私に言ったわよね。“第二王子様の笑顔を見たら、急に怖くなった”て。あの時は特に気にも留めなかったのだけれど、よくよく考えたら、なんだかおかしいなって思い始めたの」
さすがシュミナ。鋭いわね。どうしよう、シュミナになら、本当の事を言っても良いかしら?でも、頭のおかしい子と思われたらどうしよう。
て、私何考えているのだろう。シュミナはそんな子じゃないわ!きっと私の話を信じてくれるはず。
意を決して、シュミナに話しかけた。
「ねえシュミナ。逆行って信じる?一度命を落として、気が付いたら過去に戻っていたっていう事なんだけれど…」
「どういう事?」
目を丸くするシュミナ。
「実は私、貴族学院を卒業する寸前に第二王子に殺されて、一度命を落としているの。そして、次に意識が戻った時には、8歳の自分に戻っていた。私はね、今2度目の生を生きているのよ」
私の言葉にさらに目を丸くするシュミナ。
「ミシェル、一体何があったの?もっと詳しく話して!」
シュミナに言われ、私は1度目の生の事を話した。1度目の生の時は傲慢で我が儘だった事、10歳の時に無理やり第二王子と婚約した事。その第二王子に陥れられ、家族ともども牢に入れられた事。
そんな私を、レオが助けようとしてくれたが、第二王子に見つかり、2人共殺されたという事を、ゆっくりと説明した。
「だからミシェルは、こんなにも第二王子様の事を怖がっているのね。なんだか、物凄く納得が出来たわ」
「シュミナ、私の言う事を信じてくれるの?」
「当たり前でしょう!ミシェルが私に嘘なんて付かないわ。そうでしょう?」
私の手を握り、にっこり笑ったシュミナ。
「ありがとう。ずっと1人で抱えていたの!でも、今日シュミナに話せてよかったわ」
シュミナに聞いてもらえたことで、急に安心してしまい目から止めどなく涙が流れる。8歳で2度目の生が始まり、今まで1人で頑張って来た。でも、これからはシュミナに相談できるのだ。こんなに心強い事はない!
そんな私の背中をさすり続けてくれるシュミナ。本当にいい子だ!私が落ち着きを取り戻した時、シュミナが話しかけて来た。
「ミシェルの状況は分かったわ。でも、それなら尚更厄介ね。もしかしたら、王妃様は今回の事で、何らかの動きを見せるかもしれないわ」
「何らかの動きって?」
体中から血の気が引いて行くのが分かった。
「これはあくまでも私の推測だけれど、例えば公爵家に結婚の申し込みをしてくるとか…」
「そんなの嫌よ!第二王子の顔を見ると、1度目の生の時の記憶が蘇るの。血だらけで倒れるレオの姿や、嬉しそうに私に剣を刺した時の第二王子の姿。体中に走る激痛!もう二度と、あんな思いはしたくないの!だから、絶対に第二王子と婚約なんてしてはいけないのよ!」
泣きながらシュミナに向かって叫んだ。
「ミシェル、落ち着いて!これは私の推測よ。それに、たとえ結婚の申し込みがあったとしても、断ればいいじゃない!ミシェルを大切にしてくれている公爵様なら、きっと断ってくれるわ!とにかく落ち着いて」
ギューっと抱きしめながら、優しく語り掛けるシュミナ。その日はずっと私の側に居てくれた。
「ミシェル、大丈夫よ。だからとにかく落ち着くのよ」
「ありがとう、シュミナ。私は大丈夫よ!きっと何とかなるわ」
心配するシュミナを見送り、自分の部屋へと戻った。
もう二度とあんな恐ろしい思いはしたくない。どうか王妃様が結婚の申し込みをしてきませんように!そう切実に願うミシェルであった。
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