第4話    これから、望み

 彼女の、手術が決まって、長期の休みになる。俺は、もう会えなくなる不安でいっぱいになっている。毎晩悪夢にうなされ、飛び起きるのだ、彼女とこれ以上の関係になれない事は、頭の中では分かっていても、どうにもならない、よく年取ってからの入れ込みは、手がつけられないと聞いていたが、まさにその通りだ。

 いつも、なぜと思い出してしまう。なぜ、彼女が、本名まで明かしたのか?免許証まで出してまで、まぁ一時の迷いだ、との考えに行き着く。今は、堅気だが、元ヤクザ、エンコは詰めてるし(小指が無い、)モンモンは(刺青)入ってるし

今時の、タトッーではない。

 彼女にとっては、なにもかも初めての話しで物珍しいのだろう。

 昔のヤクザは、堅気には手を出さない。

不義理をしない限りは。ましてや今やこちとらも堅気になって、やっとサツの監視もゆるくなったばかりだ。堅気になって10年、かなりの監視が入っていた。

 組を再結成することを考えてだ、しかしそんな事は出来る訳がない、どこの世界も人材不足だ!昔の仲間は、もう老人ばかりで、役たたずばかりになった。

 若い連中は、半グレ集団で、秩序も何も無い連中だ。それに、シノギがない。

 警察も、もうこんな、ジジイに関わるほど暇ではないのだろう、しかしいざこうなると、少し寂しさを感じる。

 相手にされなくなったのだ、こいつには力が無いと決めつけられたのだ。

 まぁ実際もう何の力もないのは事実だった。 

 そんな昔話しを、彼女は目を輝かせて聞いている。俺も昔に戻った様な気になってしまう。

今その時のツケが回ってきていると思っている。結局は人の人生プラスマイナスゼロにできてると思っている。でも最後に彼女に出会えた。たとえ、金で買った時間だけでもだ。

 最後のラッキーだと思っている。

彼女は、金払いのいい客だと思ってLINEの相手までしてくれる。

 彼女は、手術のため、長期の休みに入った。

 当然、LINEのやり取りも、なくなってしまった。

しかし、10日後、またLINEが入った!アレと思いながらLINEを眺めた、かなり手術後、苦しんだらしい、メールどころかスマホさえ触らなかったらしい。見舞いのLINEを入れた。

 またしばらく返事は無かった。10日分のLINEなど、スマホが大変な事になっていたらしく、

俺に返事をするのが遅くなってしまうとの事だった。そんなやり取りをしながら仕事をしていた。次に会える事を考えながら。

 彼女の復帰の日が決まったとのLINEの後、意識を失っていた。

 気が付いたら病院のベッドにいた。

看護師が医師を連れて来た。病状についてだ

心臓が詰まったらしい。緊急手術になったとの事だった。死なせて欲しかった。

 良くなっても、治療費の請求が怖かった。

貯蓄などあるはず無く、だいたい予想はついた、予想通り300万以上の請求額だ。

 もう、風俗など行ってられない。すぐに退院して死ぬまで返済だ。

 いろいろ考えたが、やはり方法はなかった。

もう彼女に会えないのだ。俺は彼女に、LINE出来なかった事ともう会えなくなる事をメールした。これを見れば、もう返事は無いだろう。

 何しろ金がなくなって、店に行けなくなったのだから。金がなくては、若いギャルなんか相手にされるはずなんかないのだから。

 しかし、彼女から返事があった。俺は、ますます、彼女の事が好きになってしまった。

彼女は、金だけではないと言いながら、優しいLINEを、してくれる。今でも、なぜなのかは、今もわからない。しかしLINEのやり取りは今も続いている。またなんとか、金を作り彼女に会える事を夢見ながら生きている。

 まぁ彼女は、きっとすぐに忘れてしまうだろう。LINEはまだ続いている、日に一度が三日に一度になり、週に一度になって自然消滅になるのだ。

 しかし、そうはならなかった。

かなり驚いている、逆に回数は増えている。

 昔から追えば逃げる、逃げれば追われると良く言われているが、そんな感じだ。

不思議だ、あんなに若くてかわいいのにと思う。こんな、ジジイを追いかけることはないのだ。3ヶ月が過ぎても、LINEは、続いていた。

 そんなある日、突然電話がなった。

えっ、彼女からだった。

始めてである、何事かあった!

恐る恐る出た、「元気!私だよ!」大きな元気なな声だった。急に涙が出て来た。会いたいと

心の中で叫んでいた。

 声が出ない、彼女が何かしゃべっているが、

内容が入って来ない。突然「ねぇ聞いてる?」

彼女は、言ってる。

 「ごめん、あまりに急で良く聞いてなかった。」と言って書き直した。

 頭の中がパニックになった。

気がおかしくなった?訳がわかない。

 話の内容は、こうだ、俺が、店に行けなくなってから、彼女は、仕事に身が入らず、サービスも手抜きになり、評判がた落ち、店にも苦情が入ってネットでの評価も下がり。客がいなくなってしまったらしい。

 店に来てくれとの内容だった。俺は、手術の

費用が借金になって店で遊ぶ金などないと、

LINEで送っているのに。

 彼女は、会えるなら自分で店に払っておくし、借金も代わりに払ってくれると言うのだ。

俺は、「やめておけそんな事は」断った。

 それでも彼女は、もう俺の休みのサイクルが分かっており、その日に、貸し切りの予約と代金を払ってある。と言い放つた。

だから必ず来てくれの一点張りだ。

 俺は、店ならと思って次の休みの日、彼女の出勤時間に合わせて行った。

 店のスタッフも、驚いている。

当然だろう、女の子が自分の枠を1日分買ったのだから。

 受付を済ませて、待っていると、時間通り案内された。彼女は、俺の顔を見て涙を流していた。言葉はお互いに出ない。

 俺はにっこり笑って近寄って抱きしめた、

「会いたかったよ!」一言声をかけた。

 彼女は、抱きついたまま30分ほど泣きじゃくっていた。少し落ち着いた頃、お互い、話し始めた。当たりさわりのない話し、会っていなかった時の事などいろいろ話した。

 彼女の、復帰後の話しがこうだった。

俺の事は、好きだったが客としてであった、

当然だろう、どんなにロングコースで入っても、セックスは、一回だけで差し入れを食べたり、話しをして時間が終わるからだった。

 しかし、俺が彼女の復帰後、一回も顔を出さずいると、俺の事が思い出され、仕事に身が入いらないし、客の話しも耳に入って来ないと言った。そして、評判は、ガタ落ち今までの常連客の指名も少なくなり、店からも注意される様になってしまったらしい。

 そして、俺の事が大好きで、子供が欲しいと言い出した。もう店も辞めて、別の仕事をすると言い放つ。晴天の霹靂だ、俺が話しが入らなかなってしまった。

 彼女の考えている事が、理解できない。

慌てて彼女に、考え直す様に説得を始めた。

無理な事は、分かっていても考え直させなければならなかった。

 必死に話し、説得したがやはりダメか!

彼女は、固い決意をしている様だ。俺はそれでも、引き下がれない。再会してから2時間話したが、やはりダメか!

 俺も彼女が嫌いな訳ではないので、力が入らないのだ。

根負けして諦めた。彼女は、若いやり直す時間がある。これだけ決意が固いなら、俺の最後の時間を、彼女と過ごせれば幸せだ、捨てられたとしても。彼女はそのまま、店を辞める手続きをして店を辞めた。二人で一緒に店を出て彼女のマンションに向かった。





 


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