第5話それぞれの幸せ

 彼女は店を辞めた。Twitterもやめてしまった。二人の生活が始まり、俺は、完全にヒモ生活だった。生活の全て彼女任せだ、彼女は、家族にも全て話していた、母親は、勘当すると言って連絡もししなくなってしまった。

 兄弟とも絶縁された、こうなるのは、分かっていたので、彼女には話したが、いくら話しても納得せずに俺との生活を選んだのだ。

子供が欲しいと言って俺の子供が欲しいらしい。なぜなんだ、いつも同じ事の繰り返しになった。もっといい男ならいくらでもいただろう。俺は、いつも同じセリフだった。

 彼女、「居なかったよ、だからまーくんなんだよ」俺は不思議だった、冴えない還暦男だ。

 でも、彼女は、「まーくん冴えないなんて事ないし、性格とてもいいし、最高なんだ。」

 かいかぶりだ、年で、なにするのも面倒くさいし、怒ると疲れるからだった。彼女は、ソープ嬢として、トップだったが、堅実な生活をしていた。そのため、妊娠するまで、仕事しないといった。俺は、昔の舎弟がやってる、夜の店の、いわゆる用心棒をやり始めた。

 彼女は、かなりの貯蓄があり、俺の借金も全て支払ってしまった。俺に仕事も辞めさせ子作りに専念しろと言った。そちらは、時期もあるし無闇やたらとやっても、無駄なので、ちゃんと時期を見ながらになっている。

 少しでも、彼女の負担を減らしたかったから

夜の店に出た。和服にサングラス、昔のヤクザそのままだ。しかし、店でのトラブルは、激減したと昔の舎弟は、喜んでいる。

貫禄の差が出るな。あまり余計に払うなと舎弟に言っていた。光熱費と俺の食い扶持だけでいいと言ってそれ以上は返した。

 もらった分は、全て彼女に渡した。

一方で店は俺がいる事がいるとわかると、昔の仲間たちが、客になり始め、かなり繁盛した。

 今は、誰一人として反社組織の人間はいない。まるで同窓会だ。しかし街の半グレ集団は来なくなり、もの珍しさから、一方で一般客が物見がてら来店して、興味深そうに我々の昔話しに聞き耳を立てている。

 彼女が店に来て、俺の隣に座ると、一斉に立ち上がって挨拶した。彼女は驚き「まーくん凄いヨ」と言った。みんなを座らせ談笑が続いている。みんなは。昔の癖で彼女を姉さんと呼び彼女の人なつこさに、感心した。

 彼女も一緒に、店に出る事になってしまった。希望の妊娠はまだしてない。

 彼女の愛嬌の良さが、受けてたちまちナンバーワンになった。俺がいるから、ほかの子から嫌がらせも受けずにいる。客も、あからさまにアフターに誘って来ない。深夜までの営業だか二人は、0時には上がる。

 俺の、残り時間が少なくなって来ているからだ。そんな時彼女の妊娠が分かった。

 俺は、もう一度生きる勇気が出た。

完全にタバコをやめ、医師の指示に従って、食事療法など、生活習慣の改善に取り組んでいる。やはり自分の子供の顔が見たいと思った。

 店も、回数を減らして、出る事にした。

彼女は、もちろん店を辞める事になった。

毎日、二人で出産準備を進めている。

彼女は、本当に嬉しさだ。俺は何百回もいいのか俺の子供でと、話しあったが彼女の意思は固く、俺の話しなど聞かない。

 始めから分かっていたが、現状を受け入れてるしかない。時間だけが過ぎていく。

 彼女のお腹が目立って来た、近所の住人からよく聞かれるが彼女は、正直に俺の子供だと話している。きっと影では、いろいろ言われているだろう。二人は、全く気にしない、そうゆう世界で生きて来た。

 俺の健康状態も、改善されて来てもう少し、

生きていられる様だ。

 数ヶ月後無事に、女の子が生まれた、

人間欲深い、俺はこの子がせめて小学生になるまで生きたくなった。たぶん次は、中学生そして二十歳、孫となるだろう。それが生きがいなのだ。名前は、七海と名付けた。母親のような、海の様に深く人を愛せるように。

 彼女は、俺のことをとても大事にしてくれる、今でもだ、子供と老人の世話だ、大変さはわかる。彼女は、いつも楽しそうに、愛情を注ぎ込む。俺は店出ている。年金ももらえるようになった。それで、なんとか親子三人なら大丈夫だ、彼女は、経済観念もしっかりしていた。

 わずかだが、貯金もしていた。

俺は思いきって彼女に、籍を入れようと言った。そうすれば、俺が死んだ後も遺族年金がもらえるからだ。彼女は、アッサリ「いいよ、まーくんがそうしたければ」と言った。

 俺は、嫌がると思ったが、彼女は了承した。

俺は、また「なぜと?」聞いてしまう。

彼女がそうしたいだけなのだ、いつもそうだ、理由はない。彼女の気が変わらないうちに、翌日すぐに、婚姻届を出した。

 役所の担当者は、「お二人ですか?」と

けげんな顔をして聞いた。当然だろう、まるで孫と祖父ぐらいの年の差婚になるからだ。

 担当者は、二人に、「おめでとうございます。」と言った。こうして、家族になった。

 彼女は、「もうとっくに、家族になってだけどね」と言った。実際そうなのだが、何しろ日本の社会は形式が大事なのだ。

 まだ、それがないと認められないのだ全てにおいて。俺が、死んでからでは、何も出来ない、急いで準備を進めている。七海はまだ子供だ、同じ母子家庭でも、遺族年金があるのとでは、違う。娘は、小学校で人気者だ、両親のいいパーツだけの顔だち、心配していた鼻は、俺に似て高くスッと通っていて、目は二重で、パッチリしている。かなりの美人だ。性格も人懐っこく、愛嬌がありおしゃべりも得意だ。

 母親に似て周りの人に優しく、気を使える。

赤ん坊の時から、クラシック音楽も良く聞かせていたので、かなり詳しい。また、何にでも、興味を持っていたので、特別に英才教育をした訳ではないのだが、知能指数は、150を超えて、

天才の領域との事で、小学校では先生を圧倒しているらしい。まぁ、俺も140を超えているから、俺のいい遺伝したのだろう。

メンサから、入会の案内がきてテストを受けてた。そして、入会することになってしまった。

 母親は、喜んでいる自分は頭が悪いからと言っている。俺は、頭が悪くても、優しい彼女が大好きなのだ、人は、頭の良さではないのだ。

 この年になるとそれが分かってくる。

だから、彼女の事が好きになったのだ、彼女に話した。

 彼女は、「頭はいい方がいいに決まってる。」と言っている。

 俺は、本音は、人間性が、伴ってとの条件付きだ。と思っている。彼女のような。

この年になって、最高の時だ今まで、ろくな人生ではなかった。

 人生の終盤になって、幸せだと思っている。

少しでも、この時間が続いて欲しかった。

 そして、彼女も幸せだと言ってくれる。

もうあの疑問を口にすることは、やめた。

 そう、「なんで、俺なんだ?」と言う事を

彼女は、俺の想像出来ないぐらい人間を、見て来ている。その彼女が、俺がいいと言って、

あんなに大切にしていた、家族と絶縁状態になってまで一緒になったのだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最後の片思い 夢想家 @musouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ