第16話 ナンパ

「ねえねえ、1人?」

「俺たちと遊ばない? せっかく遊園地にいるのに1人は寂しいよね」


そんな柚愛に2人組の男が話しかけてきた。


1人は茶髪で無造作にセットされ、かわいい系の顔だ。


もう1人は黒髪短髪に黒縁眼鏡をかけており知的なイケメンだった。


「……(ここで1人で待つわけないじゃん。見てわかんないのかな?早くどっか行かないかな)」

「ねえ、無視?」

「人が話しかけてるんだから無視は良くないよ」


無造作ヘアーに続き短髪眼鏡が再度柚愛に声をかけた。


「えっと……ひとりじゃないです。連れを待っているので……すいません」


柚愛は2人組の男に視線を向け、丁寧にお断りをしたのだった。


「でもなかなか来ないよね? 君捨てられちゃったんじゃない?」

「俺たちと遊園地楽しもうよ」


無造作ヘアーの"捨てられた"という言葉に怒りを覚えた柚愛。


「今、お昼買いに行ってくれてるんです。捨てられてはないのでご心配なく」


だが、歯向かったところで何があるかわからないため本当に言いたいことは言えずにいた。


「てめぇ、俺達が誘ってやってんのになんだその言い方は」

「おい、よせよ。行くぞ」


柚愛の一言に怒った男は今にも飛びかかりそうな勢いでいた。


それを一緒にいた男が止めに入るとそのまま去って行った。


去り際にお決まりの一言を残して。


"覚えてろよ"と。柚愛は何故そんなことを言われたのか理解できずにいた。


「お待たせ」


それから数分後、神林が注文を終え料理を持ってきた。


神林はテーブルに料理を置き、席に着いた。

神林が注文したのはロコモコ丼、そして柚愛は、ドリアだ。


「あ、ありがとう……」

「柚愛、どうかした?」


神林は柚愛の様子に気づき声をかけた。


「あ、えっと……」

「黙っないで言ってごらん?」


なかなか、話すことの出来ない柚愛に神林は優しい声でそう言うと、柚愛が話すまでそのままでいた。


「えっと……実は、さっきね……。男の人に絡まれて、怖くて……」

「そうだったのか。それは怖かったな。俺が傍にいなかったばかりに……ごめんな」


神林は腕を伸ばすと柚愛の頭を撫でた。


食事を終えた2人はゴーカートと射的をした。


「柚愛、これ入ろう」

「え……。これ、入るの?」

「うん。柚愛は怖いの苦手?」

「怖いのだけは、ほんと無理……」


そう、神林が入ろうと言ったところは『お化け屋敷』だ。


外観は古びた館となっており、黒い看板に赤い字で"おばけ屋敷"と称されていた。


怯える柚愛を見た神林はニヤリと笑みを浮かべた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る