第15話 お忍びデート

***


「柚愛、チケット」

「遥也さんありがとう」

「何から乗るか?」


神林は柚愛にチケットを渡すと手に持つマップを開いた。


月日は流れ8月、夏休みに入った柚愛と神林は遊園地に来ている。


学校の近くだと生徒にバレる恐れがある。


その危険を回避するため、神林の運転で訪れたのは学校から離れた遊園地だ。


「あ、これ乗りたい!」


神林が開くマップを覗き込んだ柚愛はバイキングを指差した。


すっかり、敬語も無くなった2人は以前よりも仲が良くなっていた。


「柚愛」


神林に名前を呼ばれ柚愛は振り向いた。


柚愛は手のひらを見せた神林の行動が何を示すのか理解したようだ。


その手のひらに自分の手のひらを重ね手を繋ぎ2人はバイキングへ向かった。


「結構並んでるね」

「日曜日だからな」


バイキングがある場所へ到着すると人気のようで列が出来ていた。


「遥也さんと外で手繋げるの……幸せ」


柚愛は繋がれた手を見つめた。


「俺もだよ。なかなか遠出しないと外は難しいからな」

「それでも……たまに手、繋げるからそれがとても大切に思えていいね」

「だな。あ、行くか」


バイキングの定員は45名。


一度に大勢の人が乗れるため、長い列が出来ていてもあっという間に乗ることが出来た。


「あ、後ろあいてるよ! 行こう」

「おう」


柚愛に連れられるように神林は後に続いた。


そして、一番後ろの席を確保したのだった。


「あー楽しかった! 遊園地久しぶりに来た」

「柚愛でも久しぶりなんだね。俺なんていつぶりだ? 1,2,3……8年ぶりだ」

「え! そんなに来てないだ。じゃあ楽しもうね!」

「ああ」


それから2人はジェットコースター、空中ブランコ、コーヒーカップ、メリーゴーランドに乗った。


「楽しかった。メリーゴーランド恥ずかしいけどいいね」

「あれは子供が乗るもんだって思ってたけどわりと面白いもんだね」

「ねえ、お腹空いたからお昼食べよう!」

「そうするか。えっと……ご飯は向こうにあるみたいだな」


再びマップを開いた神林は食事の場所を確認しその方角を指差した。


「もう、お腹ぺこぺこだ」

「結構いろんな種類あるよ」

「何にしようかな」

「あ、ここだな」


着いたのはファストフード店。


外でも食べられるようにテラス席も用意されていた。


「メニューはこれだな。どれがいい?」


スマホでメニューを調べると柚愛に見せた神林。


「えっと……ドリアがいい」

「オッケー。のみものはいる?」

「アイスティーで」

「りょうかい。そしたら柚愛はここで待ってて。俺注文してくるから」

「ありがとう」


テラス席の日陰を確保すると柚愛を座らせ神林はお店の中へ入って行った。


「(ちゃんと日陰の席選んでくれるし、注文は1人で行っちゃうし……なんであんなに完璧なんだろ? 今までの人も同じだったのかな)」


完璧すぎる神林に嫉妬する柚愛は1人テラス席に座り神林の戻りを待っていた。


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