第13話 キスしていい?
「ここは──わかった?」
「え……は、い。だい……じょぶです」
「(どうしよう……緊張して集中出来ない。せんせ……遥也さんが真剣に教えてるのにこんなこと考えちゃダメだよね……。頑張ろ)」
その後、柚愛は集中することが出来た。
分からない問題も理解出来たようだ。
「あ……お腹空いた? お昼にしよっか」
柚愛のお腹の音を合図に神林は問いかける。
「あ、すいません……」
「大丈夫、大丈夫。もうお昼だし、俺もお腹空いたし」
「もう2時間も勉強してたんですね」
「そうだね。よく頑張ってるよ。お昼何がいい?」
「ありがとうございます。……オムライス食べたいです! 材料ありますか?」
「オムライスね……ちょうど材料あるから作れるよ。ちょっと待ってて」
「はーい」
神林に言われ柚愛はソファーへ腰を下ろした。
そして、料理をする神林を愛おしそうに見つめていた。
「お待たせ」
「うわぁ、美味しそう! 卵がトロトロだ」
「最近作れるようになったんだ。さ、食べよ」
「いただきます!」
「……どう? 美味しい?」
神林は柚愛の真正面に座り頬杖を付きながら問いかけた。
「ん、美味しいです」
「よかった……。柚愛動かないで、そのまま。はい、取れた」
神林は柚愛に向かって手を伸ばした。
その手は柚愛の口角辺りに触れた。
「え……?」
「トマトケチャップ付いてたよ」
神林はそう言うとケチャップの付いた手を自分の口へと運び舐めとった。
「……!」
神林の行動を見てしまい柚愛の頬は茹でダコ並に真っ赤に染まっていた。
恥ずかしさから神林の顔を見ることが出来ず俯きながらオムライスを口へと運んでいった。
「よし、残り2時間頑張ったら休憩しよっか」
「はい、頑張ります」
柚愛は教科書の問題を黙々と解き神林が採点をする。
そして、間違えた所を神林が教えた。
「2時間経ったから今日は終わり」
「休憩ですか?」
「そう、DVD見よ」
神林がセットしDVDの映像が流れ出した。
始めは2人とも夢中で見ていたが中盤に差し掛かった頃、柚愛の肩に何かが触れた。
「(ん? なんだろ? え、先生)」
肩に視線を向けるとそこには神林の頭が触れていた。
「(わわ、どうしよう。緊張する……。けど、疲れてるよね。そのままにしとこ)」
神林に配慮しなるべく動かないようにテレビに視線を向けた。
「あ……ごめん。寝てた」
「おはようございます」
神林が目を覚ますと柚愛は笑みを浮かべた。
「ほんとごめん。寝るつもりじゃなかったんだけど……。あ、DVDどうだった? 感動するらしいんだけど」
「大丈夫ですよ。DVDですか……えっと、緊張して内容があまり覚えてないです。すいません」
「そうだったか。ごめんな。また見よ。緊張……ってそれにしても可愛いな」
神林は再び柚愛の頭を撫でた。
「せんせ……い」
その手は次第に頬へと降りていった。
何度も往復するように、親指を動かした神林。
神林の空いている左手は柚愛の肩に触れ、次第に近づく顔。
「(……え、ま、待って……えっと目瞑ればいいの?)」
戸惑いながらも目を閉じた柚愛。
神林と柚愛の鼻が触れ少しでも動くと唇が触れてしまいそうだ。
「キスしていい?」
神林にそう問いかけられ、目を閉じながら柚愛は答えた。
「……は、い」
その言葉を合図に柚愛の唇に神林のそれが触れた。
柚愛のファーストキスは触れるだけの優しいキスだった──
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