第12話 お家デート

「柚愛、明後日から期末試験だけど大丈夫?」


神林から告白を受けた放課後、柚愛は数学準備室に来ていた。


「苦手なのは数学だけなので大丈夫です!」

「まあ、他の教科は平均点超えてるもんな。個別でやってても心配?」

「よく知ってますね。教えてもらったのはどうにか出来たんですけど、問題変わるとわかんなくなっちゃって……」


柚愛は申し訳なさそうに俯いた。


「担任なんでその辺は把握してます。そうだよな。数学のテスト休み明けだし土日どっちか勉強するか?」

「へ? いいんですか?」


神林の言葉を聞くと柚愛はパッと顔を上げ目を輝かせながら問いかけた。


「ああ。どっちがいい?」

「えっと……土曜日でお願いします」

「りょーかい。場所は……俺ん家で大丈夫か? 家まで迎え行くから」

「わ、わかりました。よろしくお願いします」

「(わぁぁ……ど、どうしよう。先生の家で勉強とか集中できるかな? 何着てこう? 楽しみだな……ダメダメ。先生は勉強を教えてくれるんだからこんなこと考えないようにしないと)」

「ん。今日はその確認で呼んだだけだから。気をつけて帰るんだぞ。金曜日にまた連絡するな」

「はい、ありがとうございます」


お辞儀をした柚愛はその場を後にした。

柚愛のスマホには新しく神林の連絡先が登録されていた。


スマホを操作し神林とのトーク履歴を見つめる柚愛。


「(先生と連絡先交換しちゃった。……というか、あたし先生と付き合ってるんだよね? 幸せだ……)」


顔がにやけるのを抑えながら柚愛は教室へ戻って行った。


***


「あ、先生からLimeだ。あと10分で着くよ……。どうしよう、もう来ちゃうよ。緊張する」


胸に手を当て早くなった鼓動を鎮めようとするがなかなか収まることは無かった。


そして、柚愛は神林からのLimeに対し"わかりました"とだけ返信した。



──10分後。


ほぼ時間通りにインターフォンがなった。


「はーい」

「お待たせ」


玄関を開けるとそこには私服姿の神林が立っていた。


「(……私服の先生初めて見た。かっこいい……)」


神林の私服は淡いブルーのサマーニットに黒スキニーだ。


「あ、大丈夫です。迎え来てもらっちゃってすいません」


柚愛は荷物を持つと部屋を出た。


そして、神林と共に車へと乗り込んだ。


車を走らせること数十分。


「着いたよ」

「ありがとうございます」


神林の自宅へと到着した。


車から降りた2人はエレベーターへと乗り込んだ。


そのままエレベーターは最上階で止まり扉が開く。


「どうぞ」

「お邪魔します」


エレベーターから降り玄関を開け、中へ入る2人。


「そこ座ってていいよ」

「はい」


柚愛はリビングの真ん中にあるソファーへと腰掛けた。


「烏龍茶で大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「(部屋綺麗だな。なんか男の人の家って散らかってるのかと思ってた……)」


柚愛は落ち着かず辺りを見渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、やろっか」

「お願いします!」


柚愛の隣に神林が座り2人は並んで勉強を始めた。


「テスト範囲は言えないから……苦手なとこやっていこうか」


神林は柚愛が持ってきた教科書を開いた。


「あ、そうですよね」

「ごめんな。そこも教えられたら柚愛満点取れただろうに」

「気にしないでください! あたしは先生に教えてもらえるだけで十分です」

「あ、また先生になってるよ。2人の時は……名前で呼んで?」

「あ、すいません……。遥也さん」

「ん、いい子だ」


神林はそう言うと柚愛の頭を撫でた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る