第8話 集中しなきゃ

「……できました」


緊張した柚愛はどうにか問題を解き終えた。


「ありがとう」


テスト用紙を受け取った神林はその場で採点を始める。


「……15問中6問正解。苦手な所は確認出来たから……直近の復習と苦手な所を重点的にやるか」

「はい!」


まずは直近で習った所の復習を始めることになった。


「反対からだと見にくいから隣行っていい?」

「え? あ、はい」


横長の机の為、2人が横並びで座るには十分な広さだ。


「(え、近くないかな?)」


神林は椅子を持ち柚愛の隣に置くと自身も椅子に座った。


だが、広さは十分にあるのに神林は柚愛の近く──肩と肩が触れそうな距離に座った。


「よし! やるか」

「……はい、うわっすいません!」


神林の方へ顔を向けた柚愛はあまりの近さに顔を背けた。


肩と肩が触れそうな距離に座っている2人だ。


向き合えば相当な距離になるのは言うまでもない。


「大丈夫か? 顔……赤いけど」

「だ、大丈夫です。あ、暑いからだと……思います」


柚愛の火照った頬はなかなか治まらないでいた。


「(指綺麗だな……。まつ毛も長いし、かっこいいな……)」

「山科さん聞いてる?」

「あ、すいません! き、聞いてなかったです……」


神林に注意された柚愛は集中しようと神林の説明に耳を傾けるが心臓の音と緊張でなかなか集中できないでいた。


「(集中しなきゃ……せっかく先生が時間とってるんだから……)」


そうして無心になろうと努力した結果、神林の説明が耳に入るようになった。


「……という感じなんだけど、理解できた?」

「はい! 大丈夫です! 分かりやすかったです!」


直近の復習でわからない所は、理解ができるようになった柚愛であった。


「そろそろ下校時間だから終わりにしよっか」

「……わかりました。……ありがとうございます」


名残惜しそうにした柚愛は椅子から立ち上がるとぺこりとお辞儀をした。


「じゃあ、また来週ここでな」

「はい、ありがとうございました!」


もう一度お辞儀をした柚愛は数学準備室を後にした。





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