第7話 金曜日

あれから1週間後──


「よし、今日の授業はここまで。山科さん前来てくれる?」


数学の授業終了後、神林が教卓から声を上げる。


「はい」


窓側の一番後ろに座る柚愛は立ち上がると神林の元へ向かった。


「どうしました?」

「悪い、これ運ぶの手伝ってもらってもいい?」


神林の言う"これ"とは──宿題で集めた数学のノートだ。


神林は他にも運ぶ物があった為、クラス半分のノートを運ぶようになった柚愛。


持って行くのは数学準備室だ。


教室を出た2人は無言のまま数学準備室へ向かう。


「数学大丈夫か? 付いてこれてるか?」


数学準備室に入ると神林は柚愛に問いかけた。


「前に教わったとこは大丈夫ですけど今日のは難しいですね……」

「よし……毎週金曜、放課後ここ集合な」


神林は机に荷物を置くと、振り向きそう告げた。


「え?」

「数学教えてやる」

「え? いいんですか?」


毎週金曜日は2人だけの勉強会が始まることとなる。


それは、柚愛にとって特別な日になっていく──


「し、失礼します」

「はい、どうぞ」


毎週金曜日に勉強会をすると決めてから2日たった今日はその金曜日だ。


緊張した面持ちで柚愛は、数学準備室のドアを開けた。


ドアを開けるといつでもできるように数学準備室の真ん中にある机の椅子に神林は座っていた。


「よし、じゃあ始めるか」

「はい、よろしくお願いします」


椅子に座った柚愛はぺこりと頭を下げた。


「まずは……これやってみて」

「はい……」


神林に手渡されたものは15問の数学テストのようなものだ。


「山科さんがどこ理解出来てないか確認したいから解いてみて」


"分かりました"と柚愛は答え、シャープペンシルを手に問題に向き合った。


「(……なんだろ。 視線が……緊張して計算できないよ……)」


俯いた柚愛は神林の視線を感じなかなか集中出来ずにいた。




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