二 章
目の前に、口をあんぐり開けたおっさんがいた。よれよれの服を着てベンチに座っている。
「あんた……今、そこに現れなかった?」前歯が一本欠けている。
「え……ええ」
「ワシゃずっと見てたんだが。あんた、そこに、いきなり現れた」
「そうですか……?たいしたことじゃありません」人がいきなり出現したなんて全然たいしたことだろうよ。
ホームレスっぽいおっさんは俺をまじまじと見つめていた。やがて飽きたのか、目を閉じ、うとうとしはじめた。
ここはいったいどこだろうか。俺は目をこすって周りを見た。ほっぺたをパシパシと叩いてみた。これは夢じゃない。人が大勢歩いてる。
さて、これからどうするかだが。
「こんな
しかたないので公衆電話を探した。
── おかけになった電話番号は、現在使用されておりません。
なんてこった。そんなはずがあるか。
携帯は登録されていない状態だと
ところで今はいつだ。俺はおっさんに声をかけようとして、その向こうにキオスクを見つけた。新聞を買いに行った。ふつーによく知られている全国紙だ。日付は合っている。俺はてっきり七月七日にでも飛ばされたのかと思っていたが。まあ気温がそうじゃないことはすぐに肌で分かった。
時間は……と。
俺は切符売り場に向かった。ここがどこであれ、いったん地元に戻らないとな。自動券売機のコーナーでちょっと立ち止まった。JRの路線図に俺の地元が載ってない。そんなに
俺はみどりの窓口で行き先を告げた。
「お客様、ええと、そういう名前の駅はないようなんですが。何県になります?」
窓口の駅員が
「あの、その県にはおっしゃる駅はないんですが……。路線名は分かります?」
ちょっと待った。なにか妙な雰囲気だぞ。いくらなんでも駅員が知らないなんてことはあるまい。
「すいません、ちょっと調べてきます」俺はあたふたとその場を去った。
路線を地図で調べたいんだが、どこかに本屋でもないだろうか。駅を出て数分うろうろしているとネットカフェの看板が目に入った。ちょうどいい。眠気覚ましにコーヒーでも飲もう。
ネットカフェに入り、チケットを買ってパソコンの前に座った。困ったときのぐーぐる様である。GoogleMapで駅と地名を検索してみた。存在しない。ありえん……。県名までは出てくるが俺の地元がない。地図上では別の名前になっていた。もしかして最近流行の市町村
それから知っている地名、建物、百貨店なんかを手当たり次第に検索したがいっこうに出てこない。北高がない。いくらなんでも県立高校がなくなるなんてことはないだろう。だが存在しない。俺は思い当たるもので検索できそうな単語を必死に入力した。その影でなにかがささやく。この状況はもっと根本的なところでおかしい、と。
地元がないということは、つまりハルヒはじめSOS団のメンツ全員がいない。おそらく俺の家もなく家族もいないということだろう。
前みたいに、少なくとも別の人生を歩んでいるあいつらがいてくれたら、
日本の国土を書き換えるなんて、まさか
俺はその場で凍りついたまま動かなかった。
ハルヒといえば、そうだ。あの文庫本だ。ずっと手に持っていたはずなんだが、どこにやったんだろう。入れたつもりはないんだが、バックパックの中にあった。
「手がかりはこれだけか……」
俺はパラパラとめくってみた。さっきやったように読み返してみたが、今度は何も起らない。初版の日付が未来にずれているだけで、ほかはいたって普通のラノベだ。俺の知ってるやつらが出演している以外は。しばらく腕を組んで考え込んだが、どこから考えればいいのかまったく分からない。冷めたコーヒーを飲み干して、俺はバックパックをかついだ。
ウェブブラウザを閉じる前に、俺はやっと事件の
“
真っ暗闇のなか、はるか遠くにかすかに小さな光が見えた。
一時間後、俺は新大阪行きの新幹線に乗っていた。高速で走る車両の心地よい
日時はずれていない。俺のいた日付と一致する。だが俺の住んでいた町がない。つまり家も、北高も、SOS団のメンツもいない。ひょっとすると日本のどこかで、俺とは接点のないまったく別の人生を歩いているあいつらがいるのかもしれないが。
この世界に存在する谷川とかいう作家が唯一の手がかりだ。
眠気に誘われてうとうとしはじめた。考えてみればあまり寝ていない。夢うつつの中、俺は数時間前、部室であったことを思い返していた。
俺は
内容は
俺が言うのも変だが、話としてはなかなかに笑える。
というかSOS団みたいな超こっけいな集団だから、なにを書いてもネタになるだろう。確かに登場人物には、俺の知ってるメンツは出てくる。
ページをめくる手が、本の半ばにかかった頃、次のエピソードに移った。その
“「
部室に入るなり
同じセリフを数日前に聞いた。同じ場所で。さらに
「俺が読んでいる本を俺が読んでいる!」いやまて、その俺を読んでる俺が読んでいるわけで、ああっもう
そこで俺が次のページをめくると、
“そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、”
めくると、そこにはただ、
その言葉をなにげなく口に出した、次の瞬間。周りがぼうっと明るくなった。俺だけが光の球の中にいるようだ。
「
周囲は音もなく静かで、
部室の様子がホワイトアウトし、よくは見えないが別の風景が見えてきた。数十秒か数分間か、意外に長かったその白い光も徐々に消えた。
そこで目が覚めた。時計を見ると、最初の駅を出てまだ十分しか経っていない。新大阪に着くまで、もう一眠りすることにした。
新大阪で降りて
谷川氏のサイン会は明日だ。それまでどうやって時間を潰すか。とりあえず書店の下見でもしておくか。俺は地下街を通って梅田駅に向かった。
── 谷川流先生サイン会 午後二時~。あらかじめレジにて整理券をお求めください
店頭のイベントパネルにそう書かれてあった。
「すいません、明日のサイン会の整理券ってまだあります?」
「えっと、もう残ってなかったんじゃ……。
あ、お客様、一枚だけありますわ」
「ほんとですか、くださいください」
「最後の一枚です」
レジのお姉さんのスマイルのまわりに白く
「漫画か小説をお買い求めいただけますか」
「ハ、ハイッ」俺は
そこにあったものは……。
「な、なんじゃこりゃ!!」
店員と、その場にいた客の全員がこっちを見た。
「お客様、どうかなさいました?」
「え、いえいえなんでもないです。すいません」
俺は店員に尋ねた。
「あの……すいません、
「ご存知ありません?去年アニメで大ブレイクして、おかげさまで在庫が足りないくらいですよ。小説の発行部数が二百七十万部とか聞いてます」
「……」
これはどういう現象なんだ。ハルヒ、お前、いったいなにやらかしたんだ。考えろ俺、この世界には俺の住んでる地元がない。なのにハルヒは存在する。これはどういうこと?
俺の世界のハルヒとこっちの世界のハルヒとは根本的に存在が違う。アニメとか小説の類ってのは、つまり、こっちでは“
この謎を解くにはどうしても谷川氏に会わなくてはならない。それが鍵だ。俺は買い占めたハルヒ小説をバックパックに無理やり押し込んで書店を出た。レジのお姉さんに、ここから近いネットカフェを教えてもらった。
もう一度振り返ってラノベ、いやハルヒコーナーを見たが。どう見ても違和感を感じるくらいに派手だ。
このありさま、ハルヒのやつ、まさか他所様の世界にまでちょっかい出したんじゃないだろうな。
思えば、この世界は俺のいた世界とはなにか空気が違う。化学的に言うO2やCO2ではなくて、雰囲気というか。
そんなことをあれやこれや考えつつ歩道を歩いていると、百貨店の前を通り過ぎてからなにかがひっかかった。目の
そうだ、忘れもしない
今、俺の目に映っている風景、これにどんな意味があるのかしばらく考えていた。
俺はなにかに押されるように横断歩道を歩き出した。ここだ。ここで
── ここまでお連れして言うのも何ですが、今ならまだ引き返せますよ。
すぐ連れ戻してくれ、今の俺ならそう言いたい。
青の信号が点滅をはじめる。俺は目を閉じて数歩を進んだ。……なにも、起らない。クラクションを鳴らされて俺は歩道まで走った。
なにやってんだ俺は。ここがもし
だが俺の中にはなにかあきらめきれないものがあった。ここと向こうの世界に、なにかつながりのようなものが欲しかった。それから三度、同じ横断歩道をいったり来たりして、結局はあきらめた。あきらめた後も、しばらく歩道でたたずんでいた。
知っている風景に、やっとひとつめぐり会えた。それが異空間への入り口だなんて、あまりに皮肉すぎる。
やっと出合った知った風景。歩きながら何度も振り返りつつ、俺はネットカフェに向かった。
チケットを買ってパソコンの前に座った。客は少ない。俺はバックパックからハルヒの小説を取り出した。数えてみたが十巻もある。
だが昨日読んだ十三巻だけは別だった。これの内容はまったく記憶にない。
俺はウェブブラウザで、困ったときのぐーぐる様を呼び出して、十三巻のタイトルで検索してみた。検索結果は0件。やっぱりな。まだ存在するはずがない本のタイトルが出てくるわけはない。
俺はハルヒの名前を入力してみた。数十件くらいは出てくるだろう。
──
さ……さん……ありかよ!思わず声に出してそう叫びそうになった。ハルヒだけで三百七十二万件だと!?。あいつはこの情報社会を征服するつもりか。
──
──
──
俺はもう笑いが止まらなかった。お前ら、こんなところにいやがったのかよ。俺はそれで
俺は我に返った。
──
図書館か。外観の写真が載っていた。俺と
なにかが
俺は梅田から電車に飛び乗った。行き先は西宮。路線図を
「これ……あの北口駅か?」
俺の知ってる鉄道会社とは名前が若干違うが、車両も知っている、このアナウンスも
「北口だ!北口駅じゃないか!」
改札を出た俺はまるで、
目の前に広がるこの空間、ここでSOS団のメンツが集合し、喫茶店に入り、遅れて来た俺が毎回
「遅い!罰金!」
そこにハルヒがいて、相変わらず制服しか着てこない
駅前の小さな書店で市内の地図を買った。
俺はこの空間のどこまでが俺の現実と一致しているのかを確かめることにした。駅前から北へ数分歩く。果たしてそれは、あった。ドリーム!忘れることがあってたまろうか。厳しい小遣いのなかからこの店につぎ込んだ飲食費は相当なものだ。そういえばここで
いつものテーブルにつくと店員がやってきた。顔をまじまじと見てみるが、俺には見覚えがない。
「いらっしゃいませ。お客さん、もしかしてハルヒ見ていらしたんですか」
俺が手にしている文庫本を見ながら言った。
「え…ええまあ」いつも来慣れていて
俺がキョン本人だなんてとても言えない。それに俺はアニオタでもないから。
そう。この席だ。SOS団一同、市内不思議パトロールと称してただその辺を練り歩いただけの一日。結局ハルヒが何をしたかったのか、俺にも分からん。一度は
とりあえず
時計を見ると四時を回っていた。あまりゆっくりもしていられない。
西宮中央図書館、ウェブサイトにはそうあった。名前は似ているが果たして俺の知るままで存在するのか。
北口駅から南西に向かって歩く。このコース、第一回市内不思議パトロールのとき、
歩いていくと、ところどころで知っている建物は見かけた。ジロジロと見るのはまずいのでさりげなく通り過ぎた。
俺は気付いた。似ている、と、まったく同じ、とは違う。この、部分的に似ていてその他は違うという地理、街の
図書館に着いたのは五時過ぎていた。ここから北に十分くらいのところに駅があったのだが、途中になにかヒントでもないかと思い、延々ここまで歩いた。
俺の知る図書館と外観は同じだ。中に入ると暖房の効いた部屋が俺を迎えた。人は空いていた。さてこれからどうしたものかと、周りを見回した。
あのとき、
これから何をすればいいのか考えていなかった。考えるより先に足が進んでしまう俺の悪い癖だ。俺は出入りする人をじっと観察することにした。万が一、知っている顔が通るかもしれない。この時期、受験が近いからか学生が多いようだ。
腕組みをしてしばらく眺めていたのだが、ついうとうとし、気が付くとそろそろ閉館時間が来ていた。携帯には起こされなかった。
俺はバックパックを背負って、持っていた文庫を棚に返しに行こうとした。文庫小説の棚の前に、きゃしゃなセーラー服の後姿を見た。
「な、
肩に手を触れてしまい、そして振り返ったその子は、メガネをかけ、短髪で
「あ……すいません。人違いでした」
女子高生は顔に縦線を入れて俺を見ていた。ちゃうって、俺アニオタじゃないって。俺は顔から火が出そうになり、そそくさとその場を逃げ出した。
俺は寝ぼけていたんだと思う。
閉館のアナウンスが流れた。時計の針が七時を指した。俺は図書館を後にした。
これで
来た道を戻らず、まっすぐ北に向かって歩き、
俺は電車に乗り込んだ。下り線はもう帰りの通勤客でいっぱいだ。車窓の外はもう日が暮れていた。俺は見慣れた風景が見えないかとじっと外を見ていた。桜並木がある川沿いの公園は分かった。
駅を出て坂道を登る。そう、俺が目指しているのは
四年前の七夕の日、そのときの
正直、
「宅急便です、
スピーカーから聞こえてきた怒鳴り声は、
「ちょいとアンタ!またオタクの人!?いいかげんにしないと警察呼ぶわよ!」
「スイマセン!」
なんだなんだ、宅急便が嫌いなのか?俺はそそくさと退散した。
オタクとは人聞きの悪い。えーとつまり、
さっき怒鳴られた声で一気に疲れが出た気がする。腹も減った。とりあえず大阪駅に戻ろう。いつもの俺ならこの時間に登りの電車に乗ることはないんだが、下校する学生に混じって梅田駅を目指した。俺の北高はこっちではどうなってるのか確かめたいところだったが、今日は撤退することにした。時間も時間だ。それに今晩どこに泊まるか考えないといけない。
午前中に行った二十四時間営業のネットカフェで深夜パックを買おうかと思っていたのだが、甘かった。
「お客さん、学生さんよね。ごめんねー、十八才未満の人、十時以降はだめなんだよねぇ」
「あ、そうなんですか……。あの、実は今日行くところがなくて……。一晩だけお願いできませんか」
俺はすがるような目でレジのおばちゃんを見つめてみた。
「ごめんねぇ。最近、青少年
俺のために営業停止に追い込むわけにはいかない。これ以上は頼めなかった。となると、あとはまっとうな宿泊施設か。まっとうと言ってもそんな高い料金は払えない。
風呂に入るのもいいかと思い、カプセルホテルに入ってみた。
「あー、お客さん身分証とかある?十八才未満はだめなんだわ。ジョウレイよジョウレイ」
「はぁ。そうなんですか」ここもだめか。
残るは観光ホテルだが、この辺の高級ホテルは一泊二万くらいはするだろう。そんな金額とても払えない。こうなりゃ野宿するしかないか。この寒風吹きすさぶ
二十四時間のファミレスとかで時間を潰してもかまわないんだが、それこそ
駅ビルのハンバーガーショップで晩飯を食いながら、これからのことを考えた。もしこのまま
俺はMサイズのコーラをズルズルと飲み干して店を出た。
駅周辺をあてもなく歩いていると、ガード下に段ボールのかたまりを見つけた。ホームレスが住んでいるらしい。あれ、借りようかな。ちょっと
俺は一度、駅ビルに戻った。荷物を全部コインロッカーに預け、身軽にしておく。財布から札を抜き取り、二~三千円だけ持っておく。手土産にコンビニで酒とつまみを調達したいんだが、未成年の俺に売ってくれるだろうか。
客が多いコンビニを選んで入った。缶ビールを数本、袋のつまみ、弁当をカゴに入れてレジに並んだ。店員はチラと俺を見たが何も言わなかった。どう見ても十八才未満なのにな。汚れた
うす暗いガード下に行った。電車がひっきりなしにガタゴトと音を立てている。こんなとこでよく眠れるよな。
ホームレスは数人いるようだ。リヤカーに畳んだ段ボール箱が山積みしてあった。あれを一枚だけ分けてもらおう。
俺は多少はマシそうな格好をしているホームレスのおっさんに話し掛けた。
「あの、スイマセン」
ちょっと怖かったが、ここで寝るにはどうしてもホームレスの許可がいりそうな気がした。
「なんだぁ役人か!ワシはここから動かねーぞ!」
「いえ、違うんです。段ボールを一晩貸してもらえないかと」
「ワシの家を貸せだと?どこの馬の骨か知らんテメェに貸すような──」
「差し入れもあります」俺は缶ビールを差し出した。それをまじまじと見て、おっさんは考え直したようだ。
「ガハハハ。まあ座れ。あんちゃん、家出か」おっさんは歯の抜けた口を大きく開けながら笑った。
「いえ。家に帰りたいんですが、今日は泊まるところがなくて」
「そうかあ。ま、人生にはそういう日もあるわなぁ。とりあえず飲め」
「はい。いただきます」俺は正座して自分が買ってきたビールを飲んだ。
ほんとは飲めないんだが、付き合っていたほうがよさそうな雰囲気なのと、正直酔っ払いたい気分でもあった。
「あんちゃん、正座なんかしねーで足くずせよ。ミカーサ、スカーサって言うだろ」
このおっさん
おっさんとぼそぼそと話しているとまわりのホームレスが集まってきた。
「サンちゃん、珍しくお客さんかい。もしかして息子かい?」
「子供がいたなんて初耳たぜサンキチ、おめー
「女に縁のないワシに息子がおるわけなかろうがバカタレ」おっさんは
「で、あんちゃん、親父と
「いえ、そういうわけじゃないんですが」
「ワシなんかよ、十五歳で家を飛び出してそれっきりよ。あ、一度だけ帰ったかな。妹の結婚式に。
そんときゃ
オレは思ったね。これが血を分けたやつらの言うことかよ、とね。それっきりよ」
おっさん達が涙ぐんでいる。なんなんだ、この安いドラマみたいな展開は。
「んだんだ。遠くの親類より近くの隣人ってやつだぁ。
昔から言うべや、
「で、あんちゃん、親父と
「いえ、実は人を探してまして」
「コレか」おっさんが小指を立てた。まわりがドッとはやし立てた。
「憎いわね、この色男っ」シナを作ってみせるおっさんたちに鳥肌が立った。
「で、どんな女よ?」だから違うって。
俺はポケットから
「こっちの、髪の短いほうなんですが」
「どれどれ見せてみい。おおっ!えらくベッピンじゃねえかよ」
見せろ見せろと、おっさん達の間で写真の取り合いになった。
俺にはそれが女に餓えたケモノの群れのように見えた。頼むから破らないでくれよ。
サンちゃんと呼ばれたおっさんが俺の目をまっすぐに見つめて言う。
「あんちゃん。ワシは女を見る眼はないが、人を見る目はある。
この二人、どっちを選ぶかであんたの人生は大きく変わる」
このおっさんは神がかったことを言う。どっちを選ぶって、なにを選ぶんだ?。
もう歳も暮れ、寒風が吹き付ける大阪のガード下、電車が通るたびにガンガンと耳が鳴る
それからどうなったのか、記憶があやふやだ。ただ、まわりの風景がぐるぐる回りだしたところまでは覚えている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます