設定もりもり
「んー……」
「ねえ、さっきからなに悩んでるの?」
「え? うーん、いや、さ。えっと、処女懐胎とかさ、超高齢出産だの、脇から産まれた上にすぐ喋ったとかさ、宗教の開祖にはその誕生からそういう物語があるわけよ」
「ふーん?」
「どれも盛ってるというか、作り話だけど、まあ、それは置いといてさ、んー……」
「だからなに悩んでるの?」
「おれもそういうのが欲しい」
「へ?」
「欲しい」
「いや、そんな真っ直ぐな目で……。欲しいって、でもあなた、普通にお母さんから産まれたんでしょ?」
「背中から産まれたことにしよう」
「背中!?」
「で、母親のその傷は瞬く間に塞がり、うっすらと残った傷跡はやがて鬼の顔に変化し、満月の日だけ眼の部分が赤く光ると、うん。そうしよう」
「なんでお母さんにばっかり設定がもりもりなのよ!」
「まあまあ、これからだから。で、えーっと、おれは生まれた直後歩いてこう言った」
「なんて?」
「達観してるわぁ」
「自己申告!?」
「生きるのは、大変だよねぇ」
「浅い。ただのネガティブな赤ちゃんじゃない」
「だってそりゃ、調べればそれらしい言葉は出せるけどさ。やっぱオリジナリティを出さないとねぇ。で、それからそうだなぁ……産湯を酒に変え、嵐を目力だけで収め、パンと魚を増やし、えー発光して、手をかざすだけで人々の傷を癒して」
「怒涛の勢いだけど、何か調べながら言ってる?」
「いや、まあ似ちゃう部分はあるさ。創作物だもの」
「実話という体でしょうが。で、そもそもなんでそんなこと考えてるの」
「だってなあ、結婚式の紹介ムービーがあるだろ? 新郎のヒストリーがさ」
「ああ、でもだからってそんなに盛らなくていいのに」
「でも地球人初の異星間結婚だしさぁ。君の種族って頭もいいし、不思議な力もあるし、すごいじゃない。おれだって何かすごい話がないとさぁ釣り合わないって思われたり……」
「ふふっ、あなたはそのままでいいのよ」
「ふふふ、そうかなぁ」
「ええ、もちろんよ。あと、あなたが言ったその偉人たち? 多分、地球人と宇宙人のハーフよ。そういった特徴の種族がいるもの」
「え、マジ……? それって……」
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