発表

「えー、本日はお集まり頂き誠にありがとうございます!

僕のために、こんなにたくさん、うぅ……失礼、涙が……ふぅー。

えー、僕がなぜこのような大役を任せられたかと申し上げますと、え? 早く?

ええ、ですがこれだけは言わせてください!

僕は今! 誇りで胸が……いいから早く?

チッ。では発表します! ふぅ……ふぅー、ふぅぅぅぅー!

すみませんプレッシャーが、ちょっ、ちょっと! なにするんだ!

紙に触るんじゃない! 奪い取る気か! 僕に触るな!

野蛮! 僕の役目ですよ! しかもこんな場所で! 変態!

ええ、はいはい。わかりましたから! では……。

うぅ、くぅ、なはぁ! はぁぁぁん! ……く! はあはあはあ……。

いやー、中々厳しい戦いですね。 この手! まさに手強いなんつって……。

ああもう、はいはいはい! 怒鳴らないでくださいよ! 嫌だな!

じゃあいきます……う、くうううううう!

ぬはあああん! せいやあああああ! かっ!

うりいいいいいい! ぱああああああ! やっ!

はあはあ……ちょっと休憩入れます? 誰か、お茶買ってくれません?

あ、ティーね、ティー。日本茶じゃなくて、痛! な、誰ですか!

今、ペットボトル投げつけたの!

ちょっとこれは看過できないなぁ。犯罪ですよ?

誰も見てない? 犯人をかばう気ですか?

ほー、それはそれは、ふーん。

ちょっとこの問題についてよく話し合う必要がありそうですねぇ……ん?

お願いします? ……まあ、そうやって丁寧にお願いされちゃうとね。

僕としてもまあ応えないわけにはいかないというか、君連絡先教えてくれる?

え? 後で? まず発表? くぅー! 焦らすねぇ!

おい! 誰だ今野次ったの! 嫉妬するなよ! 見苦しいぞ!

え? な、こらっ! 放せ! 僕に触るな! 素人がよぉ!

まったく、なんて人たちだ……。

まー、そうですね。じゃあ、チラッとだけですよ?

ほら、どうです? 見えましたかって痛い痛い! 君まで何だ! 美人局か!

わかったよ! でも連絡先は本当にお願いね?

よーし、ふううううううぅぅぅぅぅ……。

いやー、なかなか心の準備が……。

あ! 逆に皆さんは大丈夫……ですね。

そんなに怒らなくても……。

あー、はいはい! もう本当に発表しますから! もう邪魔しないでくださいよ!

ったく……いきます! う……く……かああああああ!

つ……や、やっぱり、ぼ、僕には無理だあああぁぁぁ!」


 そう叫び、紙をその場でムシャムシャ食べ出した男。すぐに周囲の人間が取り押さえたものの、紙に書かれた文字は読み取れなかった。


 裁判所前の出来事である。

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