死に場所を探して
横断歩道。行き交う人たちをぼんやりと眺めていた。
車、車、車。
大きなタイヤ。
頭を潰してくれそうな。
白線、白線、白線。
並ぶ白線、その一つの横に影のようなシミがあった。誰かが飲み物をこぼしたのか、それとも車の燃料が漏れたのか理由は知らない。こうして俯瞰で見るとそのシミは奇妙なことに人が横たわっているような形に見えた。
もしかしたら……。
そう思った僕はそのシミの前に立ち、重なるように横になろうとした。
「おい!」
突然、後ろから声をかけられた。
男だ。
「どけ! 俺の場所だ! やっとだ! やっと……」
男は僕を押し退け、シミの上にピッタリ重なった。
安らかな顔。男はアイスのように溶けて、やがてシミと一緒に消えていった。
恐らく、あそこがあの男が死んだ場所なのだろう。
ああ、僕が死んだ場所はどこだった?
断片的になった記憶を頼りに今日も彷徨う。
死に場所を探して。
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