擬態
……ああ。たまに、道路に軍手が一つだけ落ちていることはある。
でも、これは限度を超えている。
道一杯に散らばる軍手。
業者が落としたのか? それとも工事関係者の不法投棄? なんにせよ迷惑な話だ。まあ、ただ趣味の夜の散歩しているだけでこの辺に住んでいるわけじゃない僕には関係ない……けどなんか……。
と、一つ拾い上げてみると、思っていたより少しだけど重みがあった。
中に何か入っているのか?
そう思うのもこれを目にした時、妙な膨らみがある気がしたのだ。
指の部分を持ちパタパタと振ってみる。
「うわっ」
すると軍手がバタバタと暴れだし、思わず手を離してしまった。
軍手はササササと蜘蛛のように走り去っていく。
そして、それを皮切りに散らばっていた軍手たちが逃げるように散っていった。
擬態……そんな言葉が頭によぎる。
季節は夏から秋に切り替わろうとしていた。恐らく、今が彼らの繁殖の時期なのだろう。これも風物詩と呼べるのだろうかと自問する……と。靴下が落ちているのを見つけたので、近づき指でそっとつついてみた。
ただの靴下だった。
馬鹿馬鹿しくて僕はただただ笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます