参観

 初めての授業参観。母親たちがそわそわした様子で教室の後ろに並ぶ。今日の授業は子供たちが事前に書いた作文の発表。テーマは自分の家族について。


「ぼくのママは怪獣です」

 

 教室にどっと笑いが起こった。読み上げた子の母親は照れくさそうに笑う。


「あくびは大きいし、ぼくをガミガミしかります」


 またも起こる笑い。読み上げる子は自信がついてたようで声に張りが出てきた。


「ドアを閉める音は大きいし、怒ったら物を壊すし

この前パパをぶったらパパは動かなくなりました。

そうしたら、ママはパパをゴロゴロに入れてどこかへ連れていきました。

ママは帰ってきたけどパパはまだゴロゴロの中かなぁ。

狭くて暗いから、パパも反省しているだろうし、早く出してあげて欲しいです」


 静まり返る教室。視線を向けられる母親。その顔は確かに見る見るうちに怪獣のように……。

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