胸がすく

 アウグスティーンはエーレントラウトと結婚し三人の子を授かった。上からシャルロッテ、クリストフ、ツェツィーリエである。隣人のマインラートと仲良しで、その妻であるエデルトルートはアウグスティーンの妻のエーレントラウトと仲が良いだけでなく、その妹であるディートリンデとも仲が良い。ちなみに飼い犬はロイントシャフトという名前である。

 彼女の叔父であるディートハルトが六匹の犬を飼っている愛犬家であり、特にアーフェン・ピンシャーをこよなく愛し、産まれたその一匹をエーレントラウトに譲り渡したわけである。

 アウグスティーンの職場の上司のヴァレンティーンはとても理解ある人物で関係は良好である。

 今日、そのヴァレンティーンと彼の妻であるクリームヒルデと隣人一家のマインラート、エデルトルート、その息子ジギスヴァルトを交え、アウグスティーンは自宅の庭で晩餐会を開いた。この晩餐会はパルチヴァールと彼らのうちで呼ばれている。これは聖杯伝説をテーマに書いたヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの作品にちなんでつけられたものである。

 途中、ヴァレンティーンの友人であるルイトポルトとその妻マルグリットも急遽参加し、会は大盛り上がりとなる。

 その賑やかさに引き寄せられたのが真向かいに住むエンゲルブレヒトと母親であるメルツェーデスで、彼らはキルシュヴァッサーを携えてやって来た。

 ロイントシャフトが吠えたが、近くの席に座るエデルトルートがそれを制した。アウグスティーンが電話をかけている。友人のフーベルトゥスを呼ぶようだ。さらにその友人も何人か来るかもしれない。

 これらの喧騒は大抵、夜遅くまで続く。そう、実はこの催しは毎週、多くて三回行われていた。

 これに対し、とうとうたまりかねたアウグスティーンの隣人である山田太郎之助は猟銃で全員を射殺した。

 その後、そばに寄って来たロイントシャフトの頭を軽く撫でて微笑んだ。

 静かな夜を取り戻した彼の胸中はとても穏やかである。


 だがホッとしたのはきっと彼だけではないであろう。

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