運命
「はぁ、はぁ、ふぐっ、ち、ちこひゅ、ちごく、遅刻しちゃう~!
あっ! ……いたた。誰、え、高校生? その制服……え、嘘。
うちの、え、まさか転校生? これ、あの王道展開!?
ついに、え、あ、そうだ! ちょっと、アンタどこ見て歩いてるのよ!
これでよしと、え、てか、嘘、マジ? あ、ち、遅刻遅刻~!」
「メグ、恵? どうしたの?」
「え、ああ、ううん、なんでもないの。ちょっとね」
「なにー? 朝ごはん食べて来るの忘れたの?
ふふふ、なんてね。わかってるわよ。メグも噂聞いたんでしょ?」
「え? 噂?」
「て・ん・こ・う・せ・い! うちのクラスに来るらしいよ! それも男子!」
「へ、へえぇぇー!」
「あれ? あ、緊張してるんだふふふふ。
そうだよね。メグ、ずっと運命的な出会いをしたいって言ってたもんねぇ。
席だって先生に言って常に二人分確保してるけど
実はそれ転校生に隣に来てもらうためでしょ? すごいなぁ」
「ま、まあね、あはははは」
「あ、先生、来たよ」
「あー、おはよう。みんな噂には聞いていると思うが
このクラスに転校生が来るわけなんだが、えー、まあ、どうぞお入りください」
「ついに来るよ、メグ! え……あれが転校生? あ、え? あの見た目……」
「ええと、まあ、とりあえず自己紹介を頼む」
「お、小川……しゅ、修斗ゴホッ! ゴホゴホ! です」
「おお、だ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です……」
「えー、とちなみに席はああ、大森、大森恵の隣しか空いてー……ないな。
うん。仕方ない。そこに――」
「……さっきの」
「ん? どうした?」
「あれがさっき、僕に……僕にぶつかってきた女です!」
「え、メグ?」
「あ、え、あ、あ! 今朝のわ、私のパンツを見た変態男!」
「それは冤罪です、刑事さん」
「ああ、だが認めたも同然だ。現場に落としたこのフランスパンは君のだね?
傷害罪、いや、保護責任者遺棄致傷罪だ。
さあ、君はもう病院に行きなさい。
気持ちはわかるが、いや、本当にひどい怪我だ……」
――運命からは……逃れられないのね。
そう思った大森恵はその巨体を震わせ、ただ涙したのだった。
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