第8話 仕事の上司

「亜樹やーん、どしたんやー?」

「どうしたってなんですか?」


会社についてすぐに本山部長に呼び止められたが、どうしたとはどういうことか?


「んー、なんやええ顔してるやん。いっつも活きのいいゾンビみたいな顔してんのに」

「活きのいいゾンビって…」

「ま、いきいきしてるんはいいことや。で、どないしたん?」


本山部長は関西からこっちにきた人で、よく人のことを見ている。

かくいう私も本山部長には嘘を通せない。

まあ彼女と交際する人は大変だろうなとは思うけど。


「いえ、昨日女の子を拾いまして」

「通報しよか?」

「最後まで話を、」

「うそうそ、で?」

「もう…。まあ、色々あって昨日から私の家に泊めてるんです」

「そか。でも大丈夫か?昨日今日の人間そない信用して。今も家でお留守番してんねやろ?家帰って何にもなくなってましたじゃ、笑い話の種にしかならんで」

「んー、そうですよね…。でもなんでですかね?彼女を見てたら大丈夫かなって思っちゃうんです。理由がある訳じゃないですけど、ただなんとなく…、勘っていうかですね…」

「ま、言いたいことはなんとなく分かるわ。ようは亜樹やんがその彼女さんに惚れたいうことやろ」

「はあ?、なんでそうなるんですか」

「恋は盲目いうやろ。ちなみにその子何歳や?年齢によったら犯罪やぞ」

「…」

「おい!」

「二十歳、です」

「なんで黙った!?」


だってほんとに有紀ちゃん見た目は未成年にしか見えないから。


「まあええわ。でも亜樹やん、仕事はまだまだ落ち着きそうにないから、はよ帰れんと思うけどええんか?」

「ですよね。今日くらいは定時「無理や」ですよね」


会社のこと考えたら無理なのは分かってた。

うち人少ないもんね。


「すまんな。今度飯おごったるからゆるしてくれ」

「ワーイ、ゴハンダー、ヤキニクダー」

「おい、いつ焼き肉言うた。まあええけどな」

「やたー!さあ仕事頑張るぞ!」


無から有を作り出す錬金術、空元気を発動させいざ仕事に向き合う。


「さあ、有紀ちゃんが待ってることだし、仕事出来るだけ早く終わらせるぞー」

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