第7話 玄関
「それじゃ、仕事行ってきます」
「あ、待ってください」
なんとか笑って許してくれた有紀ちゃんと朝食の片付けをしたあと、時間も6時に差し迫っていたので、着替えて荷物をもって玄関に立つ。
「私なにか忘れ物してた?」
持ち物を確認するけど、持っていくものなんて鞄一つの私に忘れ物なんてしようはずがない。
「いえ、あたしも出ます」
「なんか用事あった?」
「いえ…、まあそんなところです」
なんだか歯切れが悪い有紀ちゃんに疑問を持ちながらも、仕事もあるからととりあえず家を出る。
その前に、
「有紀ちゃん、これ」
「鍵…ですか?」
「そ、また今度ちゃんと有紀ちゃん用の合鍵作りに行くけど、とりあえずの鍵。私帰ってくるの遅いし、用事終わったら先家いていいから」
「いえ、でも…」
なんだか戸惑ってるけど、とにかく鍵を有紀ちゃんに渡す。
「あと、ご飯先食べてていいから。はいこれ」
「ご、五千円!?いいですいいです」
「いいから受け取ってて、で、ご飯も作ってくれてると嬉しいかな」
「それでも…」
「いいからいいから、あとお菓子とかも買ってていいからね」
「だから子供扱いは」
「昨日のご飯作ってくれたお礼だよ」
「…んもう」
仕事前から家に帰るのが楽しみなんて人生初だな。
この時の私は呑気にそんなことを考えながら、家の前で有紀ちゃんと別れた。
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