第5話 有紀ちゃんのお料理

「待っててください、ちゃちゃっと作りますから!」


台所に消えていった有紀ちゃんは、それからものの10分程でご飯と味噌汁とハンバーグ、それとサラダが置かれた。


「うわぁ、すごいね。これ今の時間で作ったの?」

「そんなわけないです。味噌汁は作りましたけど、ご飯とハンバーグはコンビニのチンするやつで、サラダも買ってきたのをそれっぽくお皿に盛っただけです」

「いやいや、それでもすごいすごい。私絶対こんな出来ないもん」

「えへへ、そんな誉められてもなにも出ませんよ」


照れてる有紀ちゃんカワヨ!

有紀ちゃんをおかずにご飯をパクリパクリしていて気付いた。


「あれ?、有紀ちゃんの分は?」

「あたしは、今日はお腹空いてないので」

「えー、でも有紀ちゃんも晩ご飯は食べてないでしょ。一緒に食べよー」

「で、でも家に泊めてもらってるお姉さんに、これ以上ご迷惑は…」

「迷惑じゃありませんー。ご飯、ついできて。一緒にたべよ」

「…はい、でも味噌汁しか余ってなくて」


そっか。

ご飯もハンバーグもサラダも私の分だけしか買ってなかったんだ。

そんじゃあ、


「おっ茶碗、おっ茶碗、あと有紀ちゃん味噌汁ついどいて」

「あ、はい」


空のお茶碗をテーブルに置くと、


「はい、半分コ」


ご飯の半分をそのお茶碗に移す。


「ありがとうございます」

「それじゃあ有紀ちゃん、手を合わせていたーだきます」

「あ、いただきます」


私に続くように手を合わせて食事の挨拶をする有紀ちゃん。


「はい、それじゃあ有紀ちゃんおかずないからハンバーグ、あーーん」

「え、あ、えっと…」

「あーーーん」

「…」

「有紀ちゃん早く、腕を上げっぱなしだと私の腕のライフポイントが!」

「あ、あ、あ、はむっ!」


あ、食べてくれた。


「おいし?」

「ん、…美味しい、です」


それは良かった。

なんだか有紀ちゃんちょっと赤くなってる?


「有紀ちゃん、サラダサラダ」

「あ、いえ、もう結構ですっ!」

「ダメでしょー、有紀ちゃん。野菜もちゃんととらないと体に悪いよー」

「あ、あうあう…」

「はい、あーん」

「あーん、はむ」


いやぁ、可愛い。

なんだか私が親鳥の気分になった感じ。


「有紀ちゃん有紀ちゃん、はい、あーん」

「はむ」


うきゃー!!!


「はいあーん」

「はむ」

「あーん」

「はむ」

「あーん」

「はむ」


…。

……。


「って、お姉さん全然食べてないじゃないですか!あの、あ…、あたしも、えっと、は、はい、あーん」


はわぁぁぁ♪

人生初のあーんだ。

ぱくり。


「お、美味しいですか?」

「ん、美味しい」


正直楽しい食事っていうのは久しぶり。


「あ、お姉さん洗い物は置いててください。お姉さんは明日も仕事でしょうから、もう休んででください」

「そんな、ご飯作ってくれたんだから洗い物くらい私が…」

「いえあたしが…」

「いやいや私が…」

「いえいえ」

「いやいや」


「あははっ」

「ふふふっ」


なんだかこういう会話も面白い。

それにしてもお互い譲りそうにないから折衷案、


「「一緒に…」」


おんなじ言葉がハモったあと、私たち二人は声を出して笑った。

そのあと二人で洗い物をして、寝ることになった。

もちろん、有紀ちゃんは嫌がってたけどおんなじベッドだ。

年下の子に床で寝ろなんて言えないよ。


寝る前には今度作るご飯は何がいいかで盛り上がって、そのうち私は疲れちゃってたのかすぐに眠りについてしまった。

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