第3話 とあるコンビニ店員のメシの種
「…しゃーせー」
うちはコンビニ店員。
まあ、中学卒業後、家が嫌で飛び出したものの学なしの私を雇ってくれるところなんてこんなところしかなかった。
あ、こんなところって言ったら店長激オコだから内緒な。
まあ、それにしたって深夜ってのはよくも悪くも濃い客がよく来る。
この前なんて深夜2時くらいにコンビニの自動ドアのところに客が来て、うちに向かって「こんばんは!、お仕事お疲れ様です!」って。
二十歳過ぎかな?、ぽちゃっとした男が。
そのまま店に入りもせず帰ってっちゃったけど。
すぐさま一緒に働いてる相方に言いに行ったよ。
深夜ってことで相方は必ず男の子が入ることにはなってるけど、頼りになるんだかならないんだかひょろっとした子だけど、それでもその時ばかりは頼りにしたね。
まあ、今考えたら笑い話なんだけどね。
そしてそんな話のネタを都度都度趣味で描いてる漫画のネタにさせてもらってます。
あざーっす。
「…しゃーせー」
なんて考え事してたら女性二人が店内に入ってきた。
一人はスラッとしたカッコいい女性…、っぽいけど目の隈から悲壮感漂ってて疲れが滲み出てる。
お洒落したら絶対モテると思うな、特に女性に。
うちのストライクゾーンど真ん中だもん。
もう一人の方は頭一つ分くらい小さい女の子。
ものすっごい可愛いけど妹ちゃんかな?
今の時間が日が変わって0時過ぎてるのを考えると夜更かしはあんまりよくないよって言ってあげたくなる。
まあ、そのための保護者がわりのお姉さんなんだろけど。
「お姉さん、どこ行ってるんですか!?」
「え、どこって…」
二人は手を繋いでいて、お姉さんの方はドリンクコーナーの方へ、妹さんははおにぎりコーナーの方に。
当然二人の手はピンとなって、まさかの引き勝ったのはちっちゃな妹ちゃんだった。
お姉さんお疲れモードっぽかったもんね。
「どうせお酒ですよね、向かった先。ダメですよ、ご飯買いに来たんですから」
「…はい」
しゅん…てなるお姉さん可愛い。
てか、お姉さん妹ちゃんに尻敷かれてるんだ。
妹ちゃんは手を繋いだままサラダが売ってあるところに向かった。
「えっ、有紀ちゃん、私このお弁当で…」
「ダメ!、お姉さんそうじゃなくても倒れそうな感じなんだから、お野菜もお肉もしっかりしたもの食べてもらいます」
「…はい」
いいね。
なんかほっこりするね。
ぽんな姉と世話焼きの妹。
ああ、うちの今度の新作、姉妹もの描いてみよかな。
「お会計お願いします」
妹ちゃんがレジカゴを置くと、あっ!?とした顔をしてお姉さんの方に振り向く。
「あ、気にしなくていいよ。支払いはカードで」
「はい、お預かりします」
「お姉さん、ごめんなさい、ありがとうございます」
なんか分かんないけど妹ちゃんが顔を赤くしてちっちゃくなっている。
…可愛い。
「いいよいいよ。あ、袋お願いね」
袋に商品を詰めながら姉妹を見ているとお姉さんにぺこぺこお辞儀して謝りだした妹ちゃん。
それに対して気にしてないよと言ってるお姉さん。
なんかさっきまでと立場が逆転してるけど、これはこれでありだね。
「あざーしたー」
二人が帰ったあとうちが考えることは一つだった。
(早く帰って漫画描きてー!)
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