第7話 これから
「ごれがらどぼじよ…(これからどうしよ…)」
泣いている優寿の前にちょんまげが立つ。
「あと夢枕に立つ人はいないでござるか?残り二人でござるよ!」
「ふぇ…?」
「あと大事な人はいないでござるか?夢枕に立てるのは全部で3人でござるよ!」
「ぐずっ…いりゅ…。けどだれにじよう。」
優寿は考えた。父さん?母さん?お義父さん?お義母さん?うーん。やっぱり父さんかなぁ。
そういえば小林もいたな。仕事の引き継ぎとか。
「どうざんとごばやじにするぅ…」
「とりあえず涙を拭いて鼻をかむでござるよ。」
サッとちょんまげが布を渡す。
「ゔぅ…ありがどぉ…」
ふきふき。ちーん。
「クサっ!なにこれ!?」
良く見るとちょんまげの股の間から布が伸びていた。
「テメェ!この野郎!ふんどしじゃねーか!」
「やっと元気になったでござるな!」
「うるせぇ!それとこれとは別だこの野郎!」
優寿はちょんまげにビンタをくらわせた。
「へぶしっ!」
ちょんまげは床に倒れ込んだ
「暴力反対でござる!生類憐れみの令を知らぬでござるかっ?」
「お前は犬なのか?あーん?」
ちょんまげは頬を擦りながら立ち上がった。
「まあそれはそれとして。なるべく早めに夢枕に立ったほうが良いでござるよ。」
「なして?」
「説明があったと思うでござるが、最初の夢枕に立てるのは火葬されるまで。これは肉体がまだこの世に残っているから、現世に繋がりが残ってるからなのでござるよ。」
「でもそんなすぐ火葬しないんじゃないの?爺さんの時、葬儀場混んでて葬式まで何日も経ったよ?」
「優寿殿。お主はどうやって死んだでござるか?」
「飲酒運転の車に轢かれたって聞いたけど。」
「そこから天界に行くまで意識はあったでござるか?」
「いや。秒。」
「なるほど。という事は事故で即死でござるな。」
「まあ結構ホルモン出てたり、腕もげてたりしたしね。それが?」
「寿命や病死だと肉体から魂がゆ〜っくりと抜け出て天界に登っていくでござる。これは死の意識が本人にあるからでござる。」
「ふむ。」
「殺されたり自殺だと怨みなどの念でその場で縛られるでござる。俗に言う自縛霊というものでござる。皆が縛られるわけではないでござるけど。」
「ふむふむ。」
「そして事故死。即死の場合は基本的に死んだ事を理解してないでござる。そしてそのまま浮遊霊になる事が多いでござる。」
「ん?俺はなんでそうなってないの?」
「あくまで大多数の者がそうなるのであって、一番大事なのは気持ちの面でござる。」
「なるへそ。」
「出産に立ち会いたい気持ちが、そう…愛がそうさせたでござるよ…。」
「なるほど。つまりよくわからんという事か。」
「そういうことでござるね。でもラッキーだったでござる。こうして守護霊になれて。タイミングが遅かったらそのまま天国行きでござるよ。」
「いや…タイミング悪いから死んでるけど。」
「………まあその話は置いといて。」
「てめぇ…」
「とりあえず事故で即死という事は高確率で遺体が凄いことになってるでござる。先程ホルモンがどうのこうの言ってたけど、ある程度天界であなたは死にましたよーって本人にわからせる為にそうしてるだけで、本当はもっと凄いことになってるでござる。」
「そういえば今普通だな。治ってら。」
「業務に差し支えがござるからな。それで遺体が凄いことになってるって事は、その凄いことになってるまま葬儀はなかなかしないでござる。」
「まあぐちゃぐちゃの身内なんか見せれないし置いとけないよね。」
「そう!つまりは高確率で先に火葬されるでござる。」
「…あ。」
「ここまで長くなったけど、だから急いだ方が良いでござるよ。」
「確かに!とりあえず父さんは…寝てない。そりゃ寝てられんわな。母さんも義両親もだめだ。えーっと、小林はと…行けんじゃん!小林のとこ行く!」
「急がないと夜が明けるでござるよ。」
「よっしゃ!小林の所いってくらぁ!」
そうして優寿は小林の夢の中へ向かった。
見えない父 見える娘 @myadera
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