第4話 守護霊になるという事
「いい加減にしろっ!」
ちょんまげが優寿をひっぱたく。
「いった…なにすんの…」
痛かった。霊体同士だと物理攻撃は効くのであった。
「確かに娘が産まれたことは喜ばしいことだ!でも…お前は死んでるんだ!愛子は…皆はそれをしらないんだ!…いやお義母さんはさっき電話で気づいただろう。」
優寿はハッとした。大きな喜びの後の大きな悲しみ。自分が死んだという事がこれからどのような影響を与えるだろうか。
後ちょんまげがござる言葉じゃない事…
優寿は地面を強く叩いた…
「そうか…俺は父親として何も出来ない。愛子を支える事も…近くに居ても何も伝える事は出来ない。ただどんな状況になっても声が届く事も抱きしめてあげること事も何も…出来ない…」
お地蔵様が言っていた、守護霊は関係が薄い人がなるという事。関係が強すぎると精神的にとても辛いという事はこういう事だったのだ。
優寿はグラブジャムンよりも甘く見ていた。娘の守護霊になるという事を。どれだけ近くに居ても夫として父親として何も出来ない。人として接する事が出来ない。
ほぼ赤の他人の守護霊だったなら、旦那さん亡くなったんだー。可哀想に大変な所の守護霊になっちゃったなー。これ葬式もあるじゃん、きついなー。とか思ってただろう。
しかしこれから待ち受けるのは自分の家族の地獄絵図。しかもこうなってしまった原因は優寿本人なのだ。いきなりの不運とはいえ。
「うわーん。」
優寿は子供みたいに泣いた。いつも泣くときは園児のような泣き方だった。
「いつまでそうしてるでござるか。」
ちょんまげがござる言葉に戻る。今までとは違いとても武士っぽく覇気を感じるものの言い方だった。
「娘の守護霊になる事…自分で決めたのであろう?こうなる事も受け入れてこっちに来たのであろう?」
「俺はただ愛子に…娘に会いたくて…辛くても二人が側にいるから大丈夫だろうって…でも違った!側にいることがこんなに辛いだなんて!」
「ばかたれ!!!」
ちょんまげは優寿を今度はグーパンした。優寿は吹っ飛んだ。
「お前は自分の事しか考えてないのか!?これから愛子は幸せの絶頂から叩き落されて…それでも親の力はあるだろうが、シングルマザーとして生きてかねばならんのだ!これから辛くて大変なのは愛子の方なんだ!死んだ我々よりもこんな形で置いていかれる方が辛いんだ!」
まさかシングルマザーなんて言葉が出ようとは。そんなことより。
「うるせぇ!」
優寿もちょんまげをぶん殴った。同じように吹っ飛んでいった。
「俺だって辛いんだよ!苦しいんだよ!そんな簡単にすべて受け入れる方がどうかしてると思わないか?今から幸せになるはずが轢き殺されてこんな事になるだなんて誰が想像できる!?二人を置いて逝けるか?無理だろ!?会える手段があったらそりゃ何だってしようと思うだろ!」
ちょんまげは驚いた顔をしていた。そりゃそうだ。愛子は遠い子孫でしかないのだから。今まで守護霊として一緒にいた事による情しかないのだから。
「す…すまぬ…愛子の事となると少しカッとなってしまった…」
「わかりゃいい!あーもう!俺は本当に見守るだけしか出来ないのか!?」
「じ…実はあるのでござるよ…。」
そう言うとちょんまげはスマートウォッチの様な物をいじり始めた。
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