見つかった探しもの

 その日の深夜二時に大学前でその友人と落ち合った。部外者が入るには研究室のメンバー確実にいない時間を狙う必要があった。


 研究室には机が六つ。個人ごとにスペースが区切られ、パソコンが置いてあった。論文や雑誌が散らかっているイメージがあったがそんなことはなかった。書籍は棚に収まっており、整理整頓がなされていた。


「ここが彼女の席です。皆、彼女が居なくなったのがショックでまだ片付けられません」

 友人は席に座ってパソコンを起動させた。そしで、見たことのないソフトを起動してIDとパスワードを打ち込んだ。

「二分ほどで起動します。話はこのスピーカー経由でできます。私、隣の部屋にいますので、終わったら声をかけてください」

 友人は気を効かせていなくなった。


 ザザッとスピーカーから小さな雑音がした。画面は真黒になり、白い文字で 『SOUND ONLY』 と表示された。



「久しぶり、ショウ君。元気してた?」

「!」

 言葉が出ない。

 まぎれもなく彼女の声。聞きたくて仕方がなかった声。

 どんなに望んでも手が届かないところにある声。

「お、おお。元気だぜ」

「嘘いっちゃって」

「うん。嘘いった。めちゃくちゃ落ち込んでた。まだ復活できてない」


「ごめんね。ちょっとあなたの検索履歴、覗かせてもらっちゃった」

「そんなこと、できるんだ」

「コンピュータプログラムだからね。それにしても、だめでしょ。死者と話す手段を探すなんて怪しいことをしたら」

「だって・・・・・・。でも、今、それがかなった」

かなってないよ。私、本物じゃないし・・・・・・」

 ちょっと寂しそうな声のトーン。

 ショウタもその現実は痛いほどわかっていた。


 それでもよかった。

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