いつも通りじゃない、日常

 いつも通りの生活に戻った瞬間に、全身に針が突き刺さるような寂しさと悲しさが襲ってきた。家にいるのがつらく感じた。

(仕事に行った方がましだ)

 その方が気がまぎれるように思えた。彼女を思い出すので、寝室のベットで寝られなかった。

(最後に話した内容ってなんだっけ?)

 居間のソファーでウトウトしながら考えた。


―すこし静かにしててくれないか

 最悪だ。ひどいことを言ってしまった。なぜ、 「ワンピース、似合っているよ」 と言ってあげられなかったのか。


 外出は暗くなってからコンビニだけ、そんな生活が続いた。上司からは、落ち着くまで休んでいいと言われていた。ソファーの上に横たわり、テレビは付けっぱなしの生活。


 葬儀の前後は友人や親類から頻繁に連絡が来た。しかし、しばらく経つと誰からも来なくなった。


 そんな時だった。あのメッセージが来たのは。


―気持ちを入れ替えて、前に進みなよ


「・・・・・・?!」


 送信者のアイコンはまぎれもなくアカネのそれだった。


 彼女の携帯電話はテーブルの上に置いてあった。

 アカネは「隠すことないし」 と言って解除キーをショウタに教えていた。


 ショウタは自分の携帯電話を見られるなんて絶対に嫌だったが彼女は違っていた。

 急いでアカネの携帯電話のロックを解除した。メッセージが送信された形跡はなかった。


 普通の人なら恐ろしさを感じるかもしれなかった。しかし、彼は違っていた。メッセージがアカネからだと信じた。


 ショウタは起き上がり、取りかれたように調べ始めた。 

(何かコンタクトする手段があるはずだ)


 手始めに死者と話しができるという水晶石を購入した。高額だったが気にしなかった。期待はしていなかったが案の定、効果はなかった。通信販売で買える怪しい品物をいくつも購入したが無駄だった。


 その間、何度もメッセージを見返した。返信してみたがアカネの携帯電話にそのまま届くだけだった。


 必死で探す間、何度も最後の会話を思い出していた。後悔しかなかった。

(十秒でいい。話がしたい)

 そして、本当に十秒しか時間がないなら何を伝えるだろうと考えた。

(最初はやはり、『ゴメン』 だな)

 気分を盛り上げようとしてくれたアカネに自分がとった態度を謝りたかった。


(そして、次は・・・・・・『アリガトウ』)

 怒りっぽく、すぐにイライラしてしまう自分に、彼女はいつもニコニコと接してくれた。どんなに彼女に甘えていたのだろう。


(最後は、『アイシテル』)

 最近、口にしなくなっていた心からの言葉。


 神様が十秒だけ時間をくれるなら、この十三文字だけ言おう。そう誓った。


 その後も色々な方法を試した。降霊術をするという怪しい術師も訪問した。しかし、彼女と交信する方法は見つからなかった。


 葬儀から一カ月が経過し、有給休暇が少なくなってきた。


 そんなある日、自宅の電話が突然鳴った。

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