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預かった荷物の中身には手を付けてはならない。
そういった教えは、アオジからは受けていない。わざわざ明文化するまでもなく、人として犯してはならない禁だからだ。
その禁を、俺は犯してしまった。
これは不可抗力だ、という弁明が〈かれら〉に通用するかはわからない。人間同士で送られる荷物以上に、〈かれら〉に対するものは神聖不可侵だ。理由はどうあれ、開けたことが知れたら恐らくは、アオジのように自分の布団で最期を迎えるのは不可能だろう。
俺がすべきことはただ一つ。封印を元通りに戻すこと。選択肢があるとすれば、中身をどうするか、だ。
コンテナの中には、彼女が入っていたものを合わせ、四つの棺が入っている。他の三人(いずれも中年の男女だ)はしっかりと眠り、起きる気配はない。このまま二度と起きないのかもしれないが。
俺はコンテナの蓋を閉め、地面に降りた。それから俺の貸したレインコートを羽織って近くの岩に腰掛け、相変わらず空を見上げている少女に訊ねる。
「もう一度、あの中に戻る気はないか?」
「ない」彼女は言った。「わたしは外で生きていく」
「まさか、〈楽園〉から出るために、わざと荷物に紛れたのか?」
彼女は答えない。限りなく肯定に近い無言である。
「どうして」俺は言った。「あの中なら、不自由なく暮らせただろうに」
「あそこには〈ほんとう〉がない」少女は言った。その視線の先では鳥が二羽、旋回している。「鳥が、自由に飛ぶことができない」
そんな理由で、と言い掛けて言葉を呑んだ。彼女の横顔を見たら否定する気持ちが消えたのだ。
彼女は空を、ただ眺めているのではない。そこにある何かを見据えている。それが何であるのか、わかる気がした。
俺は頭を掻きむしった。
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