第4話 異世界から召喚した聖女様(笑)

 



 この世界は、異世界から聖女を召喚し他国を牽制し合っています。

 我がアルカナ王国も。

 聖女には様々な能力があるのですが、主に癒やしの力を持っている事が多いと文献や神官達の口伝にあります。ただ、稀に無能者や攻撃魔法特化な聖女もいたようです。


 ――――稀に、だと聞いたのに!


「なぁ、俺って、特務神官だよな?」

「ええ、そうですよ。聖女様(笑)」

「……ハァ」


 国王の命により聖女召喚の儀式をしました。光り輝く召喚陣から……おっさんが現れました。黒髪のくたびれた三十五歳のおっさんが。

 王命なのに失敗してしまったのです。


 ――――この命、諦めるしか無い。


 儚い二十年の人生だったなぁ。と思っていましたら、このおっさん、まさかの聖女の癒やしの能力を持っていました。

 このおっさんのおかげで我が王国は他国の牽制に成功し、戦争は終結。怪我人や病人もおっさんが聖女の力で癒やしてくれました。

 国民は親愛の情を込めて『聖女様(笑)』と呼んでいます。

 あ、本人が不服そうなのは全国民が無視です。


「なー、何か別の名前無いわけ? そもそも女じゃねぇし。特務神官って役職名も定着しねぇしさぁ」

「そうは言われましても。聖女様(笑)は聖女様(笑)なので。称号ですよ」

「称号に(笑)を付けんなや」


 聖女様(笑)は口が悪いです。

 まぁ、そもそもおっさんなので、そこは求めたらいけないだろうと誰も注意しませんが。

 あと、私が召喚ミスしたみたいに陰で言われていますがっ! 聖女召喚の日時と座標を書いた預言者の婆さんの字がミミズがのたくったような字で解読不能に近かったんですっ。私、悪くないし!


「いや、ちゃんと確認しろや。お前のおっちょこちょいだっつーの。ばーか」

「……私はっ! 可愛くてボインな聖女様を願ったというのにっ! 何を勝手に召喚されてるんですか!」

「えぇぇっ。急に逆ギレ!? そして胸派!? 聖職者としてどうなの!?」

「胸派ですよ! ふわふわに癒やされたいんですよ! おっさんの硬い胸とか求めて無いんですよ! 何で聖女様(笑)と私がデキているとかの噂が立つんですか! 私は女性が好きなんです!」

「あー、うん。何かごめんなー。取り敢えず飲もう! なっ?」


 聖女様(笑)に肩を抱かれ、慰められながら飲み屋に入りました。


「聖女様(笑)、神官様、こんばんは! 今日も仲良しですねっ!」


 飲み屋の女性店員に席に案内されました。

 ええ、ええ、仲良しですよ。言いたい事言える仲ですよ。気は合うんです。はぁ。


「お姉さん、取り敢えずビールニ杯ね!」

「はい、聖女様(笑)」


 取り敢えず、聖女様(笑)のおかげで今日も平和です。



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