第3話 聖女の定義
ここはアルカナ王国、古き良きヨーロッパな感じの王政の国だ。
俺はそのアルカナ王国の若い神官に聖女召喚された。
日本のしがないサラリーマン、三十五歳。
何処に『聖女』というタグを付けれるっていうんだ。ネットでやったらBANされるぞ!?
呼び出した神官によると「座標を間違えた」らしい。
――――おっちょこちょいか! 神官辞めちまえ!
召喚当時はどうにか元の世界へ帰れないものかと奮闘したものだが、足掻いても帰る方法が見つからなかった。過去に召喚されたという聖女達も帰れずにこの地に骨を埋めたそうだ。俺も諦めるしか無いのだろう。
聖女召喚されて早三年。
おっちょこちょい神官に懇願されて、神殿で『特務神官』とかいう役職名を付けられて働かされている。が、実の所、聖女の役割をやっている。
座標間違って呼ばれたのに、何故か癒やしの力があった。患部に触れるだけで怪我や病が消え去るのだ。しかも、俺には何の負担も無いというラッキーさ。
おかげで神殿はいつでも患者で大行列だ。
「聖女様(笑)ありがとうございます」
「やっぱ聖女様(笑)の力は凄いや!」
「治らないと思っていたのに! 流石、聖女様(笑)だ!」
といった具合に『聖女様(笑)』と感謝されている。たぶん、崇められている……たぶん。
――――『特務神官』どこ行ったんだよ!
神殿で患者を待つというのは楽で有り難いが、引くほどの顔色でフラフラと歩き、息も絶え絶えに神殿まで来る怪我人や病人を見ていると心苦しいものがある。
俺は元気なんだから俺が動けば良いじゃねぇか! と思い立って、おっちょこちょい神官と話し合って各都市を回診する事にした。
今は平和なこの国、呼び出された当初は戦時中だったらしいが『聖女召喚』に成功した為、戦争が終結したそうだ。聖女のネームバリュー凄ぇな。
――――呼び出されたのおっさんな俺だけどな?
まぁ、何が言いたいのかというと、平和だから各都市を回って良し! とのお達しがお偉方から出たそうな。
おっちょこちょい神官と二人で各都市を一ヶ月毎に移動しているが、どこの都市でも『聖女様(笑)』と呼ばれる。
「なぁ、俺さぁ、特務神官だよな?」
「ええ、そうですよ? 聖女様(笑)」
「……ハァ」
特務神官で浸透しろよ。
この国の聖女の定義はどうなってんだよっ!
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