触るな ヘ ン タ イ
アオヤ
触るな! ヘ ン タ イ
「ただいま~ 翔くん帰ってたんだ。」
小6の娘、紗菜が学校から帰ってきた。
紗菜は帰ってくるなり、俺にムギュとハグして来た。
そして「いいこだね~ 私がお皿、撫でてあげる。」って俺の頭を撫でまわした。
お皿・・・少しだけ頭頂部が薄くなってきたのを気にしているのに・・・
そんな紗菜だか、俺からハグしようとすると、“キモイ”とか“エロッ〜”とか言ってくる。
そして跡が残らない程度にビンタしてくる。
コイツの将来はいったいどんな風になるのか少し心配だ。
「明日、奉仕作業あるから忘れないでね。」
「あぁ〜! 忘れないよ。」
明日は小学校の奉仕作業の日だ。
毎年、綺麗なママさんと会話したり、一緒に作業する事を夢みていたけれど・・・
現実は黙々と作業して終了というパターンだ。
明日こそは・・・・
いや、今年も何もなく終わる事だろう。
当日、淡い期待は泡の様に弾けた。
今年の奉仕作業は紗菜が飼育係だったのでウサギ小屋の掃除と整備だった。
やっぱり昨日の予想通り綺麗なママさんなんて周りには居な〜い。
俺は気を取り直してウサギ小屋に入り、ウサギを掃除しないエリアに追いやった。
ウサギの背後に周り、ウサギの背中を両手でガバッと摑む。
手には柔らかいフワフワした感触が・・・
暫くするとジタバタジタバタ抵抗しだす所がカワイイ。
まるでウサギの王に成った様な気分で至福の時間。
紗菜に「キモイんだけど・・・」と言われてふと我にかえる。
不意に小屋の裏の方から“ニィ~”と言う小さな声が聞こえた。
俺は小屋の裏手に周り隙間に仔猫が一匹居るのを見つけた。
・・・なんでこんなトコに?
と思ったが、とりあえず保護する事にした。
紗菜に暫く一人で作業してもらい、自宅に連れて行った。
ダンボールにタオルを敷き、そこに入れて牛乳を与えてみたら、ペロペロ舐めだした。
今日は小学校には沢山の保護者がいるから後で里親を募集してみよう。
俺は仔猫が牛乳を飲むのを暫く眺めていた。
決して、作業をサボってる訳ではない!
“綺麗なママさんと話すキッカケがこれで出来る。”なんて決して考えていない。
いや、考えてもいいじゃないか?
俺は仔猫が飲み終わるのを待って小学校にダンボールを抱えながら向かった。
職員室で校長先生に事情を話したら、最後の挨拶の時に里親になってくれそうな人を探してくれる事になった。
俺はちょと安心してのんびりしていたら・・・
何かを忘れている事に気がついた。
・・・あっ!ウサギ小屋に紗菜を一人残した
ままだった。
俺は慌ててウサギ小屋に向かった。
ウサギ小屋には作業しているはずの紗菜は居なかった。
小屋の入口には何か紙が貼ってあった。
[さわるな! ]と書いてあった。
貼り紙の右下には小さな文字で[ヘンタイ]と付け加えられてる。
ん?
これは紗菜のイタズラか?
きっと俺にウサギを触られるのを嫌ってのイタズラに違いない。
そう感じた俺はためらい無く扉を開けた。
その手にはニュルとた感触が伝わった。
なんとフェンスの扉は“ペンキ塗りたて”だった。
もしかして[触るな! ヘンタイ]は紗菜がこう成るのを見越してワザと書いたのか?
いろいろと悔やまれる事ばかりだった。
触るな ヘ ン タ イ アオヤ @aoyashou
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