16-ⅩⅤ ~ゼロとミチルの関係~
『へーえ、生徒会長さんが、あの橋本さんと同程度ですか』
「おう」
『それは、結構すごいですね』
「そうなのか?」
『蓮さんは知らないかもしれませんが、橋本さんは結構な強さですよ。徒歩市でも上位に入る強さだと思います。しかも、長いブランクがあってアレですからね』
「へえ……気にしたことなかったわ」
そして、わざわざビデオ通話をテレビにつないでいる理由と言えば。
「……あの、その橋本? って人が、どれだけすごいのかがわからないんですけど……」
『まあ、そうですねえ。橋本さんの強さは……その生徒会長さんくらい強い、って言えばわかります?』
「ま、まあ……」
『そういうことですよ。まあ、そこにいる蓮さんがいれば、何とかなるんじゃないですかね。こっちとしては、あまり心配はしてません』
安里は画面越しにコーヒーを啜りながら、ふう、と息を吐く。
『……こっちとしては、才我くんの方が気になります』
「あそこまでバッサリいないって言われたら……なあ」
生徒会長の
『まあ、彼女が嘘ついている可能性もありますけどね』
「……それは、ないと思う……ます?」
安里への距離感がいまいちつかめないゼロは、たどたどしい敬語で答えた。画面の向こうの安里は見る限り同世代な気もするが、どうにも社会人らしい。社会に馴染めない異能者にとって、「社会人」という肩書はとてもまぶしく、そして距離を縮め難い存在でもあった。
「……さっきから、ずっと気になってたんだけど……」
一緒に話を聞いていた中村が、ゼロの方をちらりと見やる。それは、宮本も、蓮も、安里も同じであった。
「……知り合いなんだよな? お前と、あの女」
「……わかるか? やっぱり」
「そりゃわかるよ。だって生徒会長と、名前で呼び合ってたし」
じっと自分を見る周囲の目に、ゼロは観念したように肩を竦めた。どうやら、できる限り隠しておきたい事柄だったらしい。
「……この際だから、言うけど。クラスの奴らには絶対には言わないでくれよ。……俺と、ミチル――――――生徒会長は、俺の幼馴染だ」
「え、そうなの!?」
「アイツとは生まれた家が近くてな。幼稚園から中学校まで、ずっと一緒だった」
生まれはともに関東の某都道府県。家族ぐるみの付き合いだったこともあり、一緒に旅行に行ったりしたこともあった。
幼稚園と小学校の低学年までは、お互い普通の子供として暮らしていくことができていた。できていたのだが。
「――――――きっかけは、小学校の高学年になった頃かな。ミチルの身体能力が、急激に伸びたんだ」
それは、おおよそ普通の小学生とは思えない伸び方だった。体力テストのほぼ全てが、上昇どころか数倍の値を叩きだす。クラスの女子どころか男子も抜き去り、下手をすれば周囲の中学生、高校生すらも凌駕する成績を残したのだ。
「……俺も、多少は記録が伸びたんだけどな。それでも、ミチルの伸び方は凄くて、みんなミチルの方を注目するようになったんだ」
『第二次性徴の影響ですかね。人間の大きな成長点だし、そこで異能が大きく伸びたのかも』
あくまで適当ですがね、と安里は付け加える中、ゼロは続けた。
「アイツがこの彩湖学園に編入することになるのは、当然だった。中学校の頃、アイツは孤独だったからな」
圧倒的すぎる頭脳、圧倒的すぎる身体能力。周りからは浮いてしまう。寄り添おうとしたゼロですら、彼女の凄まじさに近寄ることができなかったことがある。
そしてその出来事が、ミチルとゼロの距離が遠くなってしまった原因であった。
「互いに男と女、ってのもあるんだろうけどな。昔から知っていると言え、ミチルは遠い存在になっちまった」
「でも、ゼロくんだって異能学園に入ってるじゃないか」
「俺なんて必死こいて異能を磨いて、ようやく1―Gに食い込めるくらいだぞ。ミチルの奴は、「特別待遇推薦」で難なくトップだ」
ゼロが才我の事で「特別待遇推薦」を知っていたのは、それが理由だ。幼馴染も同様に、この学園に招かれてやってきたのだから。
「……この際だから、正直に言おう。俺の革命の、もう一つの目的。それは、アイツを――――――ミチルを、生徒会長の座から引きずり落とすことだ」
「生徒会長を?」
「もちろん、1―Gクラスの皆を救いたい、っていう気持ちはもちろんある! だが、同時に、救いたいのは……ミチルも、なんだ」
「ちょっと待て。救うって?」
首を傾げた蓮を、ゼロはゆっくりと見やる。
「……お前らにも教えてやる。この
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