16-Ⅶ ~最底辺のイカれた挑戦~

 革命の主要メンバーは、伽藍洞がらんどう是魯ぜろ紅羽あかばれん

 そして、眼鏡の男子生徒である中村と、おさげの女子生徒である宮本の2人。クラスでもあまり目立つ方ではなかったし、なんだったらゼロも存在を認識していたかと言われると、若干怪しいところがあった。


 そしてこの4人は1―Gクラスの代表として、いよいよ革命を始めようと動き出している。まずは、新しく入ってきた先生に、クラス単位での決闘の申請からだ。


「……決闘申請? しかも、クラス単位で?」

「ああ。そうだ」


 新しく来た先生は女性の教師で、鬼人よりも遥かに穏やか――――――というか、やる気のない先生だった。だからこそ、1―Gなんて最底辺の閑職に就かされたのだろう、というのが生徒側からも一目でわかった。


「え、いやまあ、いいけどさあ、別に……」


 申請用紙を受け取り、先生はちらりと4人を見やった。戦力となりそうなのは、金髪の伽藍洞と赤い髪の紅羽の2人くらい。一緒にいるほか2人は、どう見たって強そうではない。


「……じゃあその、決闘の申し込み相手は?」

「そ、それが……その……」


 宮本が、バツが悪そうにつぶやく。中村も、何か言いたそうなのを我慢しているようだった。だが、言葉を発したのは、代表であるゼロである。


「――――――現状、俺たちが決闘を申し込めるのは、クラス1のみ。だから、全部。1―Fから1―Aまで、まとめて決闘を申し込む」


 そう宣言したゼロがちらりと蓮を見やったのを、発言に呆気にとられた先生は見逃してしまった。


******


 決闘と言っても、いきなり最上級クラスの3―Aと、最底辺の1―Gが勝負できるわけではない。仮に決闘したとして、一方的な蹂躙となることは目に見えている。

 そのため、上位クラスとの決闘はAクラスに在籍、あるいはAクラスを決闘で倒した実績がなければ行えないのである。1―Gクラスなら、まずは1―Aを倒さなければならない。


 とはいえだ。まさか上位の、戦えうる限りの全クラスとの決闘など、前代未聞である。


「……まとめてって、あれよね? 順繰りに戦うってこと……?」

「違う、だ! 上位全6クラス、一気に相手どる!」

「……イカれてるの? 頭……」


 先生のその反応も無理は無い。確かに決闘のルール上、同盟を組んだりといった複数のクラス単位での決闘も、今まで過去の例があったりするので、問題はない。


 だが、対戦相手に上位6クラス全部を指名するというのは、前例などない。ましてや、最下層の底辺である、Gクラスがだ。


「……で、どうなんだよ? やっていいのか、悪いのか!」

「――――――別に、やる分には構わないわよ? でも……」


 先生は申請書を一瞥して、ため息をついた。


「やっぱり無理だと思うけどね。私は」


******


「やっぱり無理だよ、一気に6クラス相手どるなんて!」


 申請書を提出し終えたのち、中村は涙目で叫んだ。


 革命の足掛かりとして、まずは1つ上のFクラスを倒す。ゼロたちは、その方向で話を進めようとしていたのだが。


「……時間かかりすぎるな、それ」


 待ったをかけたのは、蓮だった。


「時間……?」

「1戦1戦ちまちまやってちゃ、らちがあかねえ。そもそもザコぐらいさっさと倒せねえんじゃ、大物との勝負にもなんねえだろ」


 だからこそ、蓮は提案したのだ。


「面倒臭え。クラス1の連中、全部まとめてぶっ飛ばそうぜ」


 それに、蓮はこう付け加えた。


「戦力になるかの自己紹介もかねて、俺がやってやる。全責任俺が持つから、最初は6クラス全部に決闘できるようにしてくれ」


 蓮の言葉からは、圧倒的な自信が満ち溢れていた。その言葉に宿る説得力を、ゼロは知っている。


(……確かにコイツは、あの鬼人を一撃で倒してる。しかも、あれが強さの底じゃない)


 鬼人を地面に叩きつけた後に、涼しい顔して舌打ちしていた蓮の姿を、ゼロは思い出した。そしてその時の蓮の顔と、今こうして話しているときの蓮の顔が重なる。


「……わかった。紅羽、お前に任せる」

「――――――伽藍洞くん!?」

「ただし、ダメだったらメンバーから外れてもらうし、俺たちの言うことに反論もしないでくれよ。いいな?」

「……わかった」


 蓮がゼロに相槌をうち、こうして初戦の相手は決まった。


 Gクラスの代表――――――というか、蓮一人。相対するは、40人×6クラスの異能力者集団。


 正直、かつて60万の軍勢をも相手取ったこともある蓮にとっては、全く大したことなかった。

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