14EX-エピローグ ~2人のこれからにご期待ください。~

 そうして悶々として、とうとうやってきてしまった1週間。

 意を決しきれずにドアの前でもじもじしていたら、安里に無理やり事務所の中に引きずり込まれてしまった。


 そして肝心の蓮については、当日のことを全く覚えていないのだという。


「ど、どこまで覚えてるの……?」

「え、えーと……お前がうちに来たところだろ。それから見舞いに来てポタージュもらったところだろ。……そこぐらいかな。その辺から意識があやふやでよ」

「そ、そうなんだ……」


 どうやら蓮が弱音を吐き始めたところから、すでに限界が来ていたらしい。というか、あの弱りっぷりも、朦朧とした意識だったからこそ見ることのできる側面だったのかもしれない。それはそれで、ちょっと残念と思わなくもない。


「起きたらすっかり夜でさ。『お客さん来てるのに何やってんだ』って亞里亞に怒られちまった」

「普通は風邪ひいてたら、寝てるのが正解だと思うんですがねえ、僕は」

「ってなわけで、色々悪かったな」

「い、いや……元気になってよかったよ」


 蓮の様子を見て、愛はほっと胸をなでおろす。とりあえずこれで、自分がばらさない以上はやらかしを見抜かれることはないだろう。


「……で、まあ、その、何だ」

「?」


 少し照れ臭そうに、蓮がつぶやくのを聞いて、愛は現実世界に戻る。


「……初詣は、風邪ひいてて行けなかったし……今度、ちゃんとやろうぜ。……デート」

「……でえと?」

「おう。映画でもなんでも、付き合ってやるから」


 まさか、蓮の方からデートのお誘いをするとは全く思っていなかった愛は、あまりの出来事にフリーズしてしまう。


 そして、フリーズしているのは愛だけではなく。


「……一体私たちは、何を見せられているのかしら」

「人前で堂々といちゃつけるとは、蓮さんも成長しましたねえ」


 同じ空間内にいる探偵事務所の面々も、そう言いながら苦笑いするしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る